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BEAUTY 第00号
BEAUTY 第65号
美容皮膚医学BEAUTY 第65号(Vol.8 No.7, 2025)

A4変型判/80頁
定価4,400円(本体4,000円+税10%)
ISBNコード:978-4-287-91065-8
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特集●肝斑―エキスパートの治療戦略を知る―

企画編集/木村有太子
 肝斑は,美容皮膚科診療において最も頻繁に遭遇する色素性疾患の一つであり,その治療は今なお多くの臨床家を悩ませています.紫外線や女性ホルモンの関与は古くから知られていますが,近年の研究では,慢性的な紫外線曝露による光老化が表皮・真皮構造に影響を及ぼし,メラニン生成を促進すること,さらにバリア機能の破綻,基底膜損傷,真皮の慢性炎症や血管増生が病態形成に深く関与していることが明らかとなってきました.
このように,肝斑は単なる表皮の色素沈着ではなく,真皮を含めた多層的な異常を背景とする複合的疾患として理解する必要があります.したがって,治療も単一の方法では不十分であり,スキンケア・内服・外用・機器による治療・再生医療的アプローチを組み合わせた,総合的かつ段階的な治療戦略が求められます.
本特集「肝斑―エキスパートの治療戦略を知る―」では,日々の臨床現場で数多くの肝斑患者を診療しているエキスパートの先生方にご執筆をお願いしました.肝斑の病態から,スキンケア指導や内服療法,美白剤やレチノイド外用療法,ケミカルピーリング,エレクトロポレーション,レーザー,IPL,マイクロニードルRF,さらにはPLA製剤を用いた再生的アプローチまで,肝斑治療のあらゆる角度から最新の知見と実践的手法を紹介しています.
いずれの論稿も,単なる技術解説にとどまらず,病態の理解に基づいた治療選択の考え方や安全かつ効果的な併用の工夫など,日常診療に直結する内容が充実しています.とくに,近年注目される真皮の炎症制御や基底膜修復を意識した治療方針,さらには再生医療的観点からのアプローチについては,今後の肝斑治療の方向性を示す貴重な示唆に富んでいます.
本特集は,これまでの「メラニンを抑える治療」から一歩進んだ,皮膚構造そのものを整える新しい肝斑治療の時代を象徴する一冊となりました.各執筆者の先生方が積み重ねてこられた臨床経験と知見が結集した内容であり,肝斑治療をより深く理解し,実践の質を高めたいすべての先生方にとって必ずお役に立てるものと確信しています.
肝斑という一見ありふれた疾患のなかに,皮膚科学・美容医療の本質が凝縮されています.ぜひ本特集を通じて,肝斑治療の今とこれからを感じ取っていただければ幸いです.
最後に,本特集の執筆にあたり,貴重な知見と臨床経験を惜しみなくご提供くださった先生方に,心より感謝申し上げます.お忙しい日々のなかで原稿をご執筆いただいたご尽力に深く御礼申し上げます.


木村有太子
(順天堂大学 医学部 皮膚科学講座)



1.肝斑の基本的な知識と病態/船坂陽子
2.肝斑に対するスキンケア指導/奥村千香
3.肝斑に対する内服療法:トラネキサム酸を中心に/木村有太子
4.肝斑に対する美白剤による治療/下田貴子
5.肝斑に対するトレチノイン,レチノール治療/大仁田亜紀
6.ケミカルピーリングによる肝斑治療/小林美和
7.エレクトロポレーションを肝斑治療に使う/佐々木 豪
8.肝斑に対するレーザー治療/日景聡子
9.IPLを肝斑治療に使う/山本晴代
10.Micro needle RFを肝斑治療に使う/伊東秀記
11.PLA製剤を肝斑治療に使う/吉澤秀和