HOME雑誌月刊循環器 > 月刊循環器11年11月号
CIRCULATION 11月号
月刊循環器 CIRCULATION 11月号

11年10月5日発売
A4変型判/136頁
価格:本体¥2500+税
ISBNコード:978-4-287-83003-1
全ページカラー印刷

特集虚血性心疾患の治療薬

企画編集/小川久雄
画像をクリックするとサンプル(PDF)をご覧いただけます
目次 特集
 日本において虚血性心疾患は,人口の超高齢化,食生活の欧米化,社会におけるストレスの増大により増加の一途にある.その治療としては近年,冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention;PCI)の進歩が著しく,循環器内科医の多くが一番興味を示している分野である.しかし,2008 年のCOURAGE(Clinical Outcomes Utilizing Revascularization and Aggressive Drug Evaluation)試験が示したように,至適薬物療法(optical medical therapy)が重要であることは論を待たない.
 本特集では,虚血性心疾患の薬物療法について,その重要性を再認識していただきたく企画した.結論からいえば,至適薬物療法に加えたPCI が最も効果的であると考える.
 また,日本人の特徴として冠攣縮があることも最近では軽んじられている.完璧なPCI を行っても,冠動脈に攣縮の要素がある場合,薬物療法を加えなければ発作は治まらない.また,冠攣縮性狭心症の大部分は,冠動脈に有意狭窄を有しない.冠動脈CT 検査のみで狭窄が認められなくても,狭心症状があれば冠攣縮性狭心症は否定できない.これについては冠攣縮のガイドラインも発表されたため,若い循環器専門医には熟読してほしい.
 PCI は局所治療であり,症状の改善をもたらす.ただし,予後改善にはなかなか結びつかない.その理由は,PCI を行った部位以外の部位から急性冠症候群(ACS)が発症するためである.ACS の8 割以上は冠動脈の狭窄が強くない部位から発症するのである.つまり,虚血性心疾患の予後改善に有効なのはACS 発症の防止であり,そのためには薬物療法,とくにスタチンによる冠動脈プラークの安定化が重要であることも明らかになってきた.また,PCI 後の抗血小板療法の重要性も広く認識されるところとなった.とくに薬剤溶出性ステント(drug-eluting stent;DES)の普及により,重篤な遅発性ステント内血栓性閉塞(late thrombosis),超遅発性ステント内血栓性閉塞(very late thrombosis)の問題がクローズアップされるようになり,抗血小板薬をいつまで続けるべきかが新しい問題として生じてきた.また,抗血小板薬とプロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitor;PPI)との相互作用も注目されるところとなってきた.また今後の問題として,虚血性心疾患の急性期予後が著しく改善した結果,長期予後に関して,虚血性心疾患後の心不全の治療が重要になってくる.レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系抑制薬やβ遮断薬のエビデンスも揃ってきたが,著者としては,なにかbreakthrough がほしいと常々思っている.
 薬物療法の重要性は広く認識されるところとなったが,現実問題としてCOURAGE 試験後も,欧米での至適薬物療法の増加はあまりみられていない.本特集では,虚血性心疾患の治療薬について,古くからの基本的な薬剤である硝酸薬,Ca 拮抗薬,β遮断薬,また古くから存在するが最近進歩が著しい抗血小板薬,抗凝固薬,最近は使用頻度が少なくなってきたが重要な血栓溶解薬,日本発の薬剤であるニコランジル,近年有効性が注目されている脂質代謝異常改善薬,さらには前述の薬に比べると歴史は浅いが,確固たるエビデンスがあるレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系抑制薬,新しいエビデンスも発表されて日本でも使用できるようになった薬も含めた抗不整脈薬,救急治療薬,そして最後に,虚血性心疾患は予防が重要であることがわかってきたが,その予防薬のエビデンスについても,日本を代表する各分野の専門医の方に解説いただく.本特集が循環器専門医,とくに若い循環器専門医が薬物療法を再認識する一助になれば幸いである.
企画編集:小川久雄
熊本大学大学院 生命科学研究部 総合医薬科学部門 生体機能病態学講座 循環器病態学 教授,
独立行政法人 国立循環器病研究センター 副院長 兼務
1.硝酸薬/小島 淳
2.カルシウム拮抗薬/高野仁司
3.β遮断薬/石原正治
4.抗血小板薬,抗凝血薬/掃本誠治
5.血栓溶解薬/木村一雄
6.ニコランジル/石井秀樹
7.脂質代謝異常改善薬/朔 啓二郎
8.ACE 阻害薬/伊藤正明
9.アンジオテンシンII受容体阻害薬/坂本知浩
10.アルドステロン阻害薬/山室 惠
11.直接的レニン阻害薬/斎藤能彦
12.抗不整脈薬/池田隆徳
13.救急治療薬/源河朝広
14.虚血性心疾患1次予防薬/副島弘文