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CIRCULATION 12月号
月刊循環器CIRCULATION 12月号

11年11月7日発売
A4変型判/144頁
価格:本体¥2500+税
ISBNコード:978-4-287-83004-8
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特集循環器専門医の腕の見せどころ-β遮断薬による心疾患治療

企画編集/島田和幸
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目次 特集
 交感神経系とレニン・アンジオテンシン系(RAS)が最もキーとなる循環器疾患にとって,循環調節系神経・体液性因子である.このことは,収縮機能低下による心不全の最も基礎となる治療薬剤が,RAS阻害薬とβ遮断薬であることからも頷ける.このβ遮断薬であるが,かつて心不全には“禁忌”であった.その薬剤を治療に用いるというのであるから,実に不思議な薬剤である.心不全のβ遮断薬療法は,本当に「腕の見せどころ」に違いない.
 β遮断薬は,循環調節系にブレーキをかける作動薬である.労作性狭心症の治療薬として初めて用いられたとき,β遮断薬は驚くべき効果をもたらした.しかし,日本人の狭心症には,冠攣縮という病態が高頻度にかかわることが明らかになるにつれ,狭心症治療における地位をカルシウム(Ca)拮抗薬に奪われるはめになったことも否めない.
 β遮断薬が特効薬であることを実感させる他の病態は,hyperkinetic heart である.ドキドキする頻脈がβ遮断薬でぴったり抑えられたとき,これも多くの医師が経験する
もうひとつの「腕の見せどころ」である.
 しかし,β遮断薬が循環器疾患の治療薬として重要な理由は,前述の派手な特効薬的効果というよりも,しっかりと心疾患の発症を抑止する「心保護作用」にある.心筋梗塞後の突然死予防,不全心のリモデリング抑制効果などは,β遮断薬が循環器疾患の長期生命予後を改善することを証明した代表的な病態である.このような病態の患者に,β遮断薬を処方箋に入れることが,専門医の「腕の見せどころ」である.
 降圧薬としてのβ遮断薬の変遷は,まさにロングストーリーである.利尿薬に続いて,β遮断薬は初めて本格的な降圧薬として登場した.膜安定化作用,β1選択性,内因性交感神経刺激作用(ISA)などさまざまな薬理学的特徴に基づいたβ遮断薬の分類が行われ,数多くのβ遮断薬が一世を風靡した.当時は,血圧のみならず心拍数を下げることこそがβ遮断薬の優れた効果として,ポジティブに捉えられていた.しかし今ではこの考えは見直されている.すなわち,中心血圧や血圧変動性という観点からはβ遮断薬はネガティブに評価されている.
 さらにCa拮抗薬やRAS 阻害薬が新しい降圧薬として登場すると,β遮断薬はその地位を奪われることとなった.その主な原因として,降圧療法の対象が高齢者やメタボリックシンドローム・糖尿病など,元来β遮断薬が薬理学的に適していない病態を合併した高血圧患者に降圧治療の重点が移ってきたことが考えられる.降圧薬としてβ遮断薬をいかに有効に用いるか,適した病態の把握や血管拡張性β遮断薬の使用も含めて,「腕の見せどころ」といってよい.
企画編集:島田和幸
自治医科大学 医学部 臨床医学部門 内科学 循環器内科学部門 教授
I. 基礎編
1.β遮断薬の発展の歴史/今井 潤
2.β遮断薬の分類と薬物動態/西山 成
II. 臨床編
1.狭心症・心筋梗塞に対するβ遮断薬の使い方/三浦哲嗣
2.心不全に対するβ遮断薬の使い方/野出孝一
3.頻脈性不整脈に対するβ遮断薬の使い方/池田隆徳
4.突然死予防に対するβ遮断薬の使い方/三田村秀雄
5.高血圧症に対するβ遮断薬の使い方/桑島 巌
6.合併症を伴った高血圧に対するβ遮断薬の使い方/石光俊彦
7.β遮断薬の使用上の注意点/大屋祐輔
III. 論争編
1.β遮断薬は降圧薬としての第1選択薬か/楽木宏実
2.β遮断薬の心拍数低下作用は是か非か/河野雄平
3.血管拡張性β遮断薬は他と異なるか/長谷部直幸
IV. 解説
1.β遮断薬の中心血圧に対する作用/山科 章
2.β遮断薬の血圧変動に対する作用/苅尾七臣
3.β遮断薬の糖・脂質代謝に対する作用/片山茂裕