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CIRCULATION 4月号
月刊循環器CIRCULATION 4月号

12年3月5日発売
A4変型判152頁
価格:本体¥2500+税
ISBNコード:978-4-287-83008-6
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特集不整脈治療の最前線

企画編集/三田村秀雄
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目次 特集 特集 特集
 不整脈は心臓の電気系統の故障である.心臓における電気系統の故障とは,作業心筋という,車であればエンジン系統の故障と同時に発生することもあれば,全く独立して生じることもある.とくに独立して生じている場合,この電気系統さえ修理すれば,たちまち元の健康な心臓に戻る.その様子は,切れ味の良さもあって大変魅力的である.とくに,心停止という生死を分ける場面を一発の電気ショックで切り抜けられれば,これほど劇的で感動的なものはない.しかもその最も重要な医療を,今では医学知識のない素人がAED を使ってやり遂げてしまう.これには,ただただ頭が下がるばかりである.
 しかし全ての不整脈治療がこれほど単純なわけではない.その証拠に,医師の多くが「不整脈治療は難しい」,「よくわからない」,「怖い」,「手を出すと危険」と,医学を6年間学んで医師免許を取得したにもかかわらず逃げ腰である.無理もない.抗不整脈薬を例にとれば,これは単に心筋の伝導・不応期・興奮性を変える薬に過ぎず,それが抗不整脈的に働くか,催不整脈的に働くかは実のところ誰も予測できない.不整脈が違えばそれに対する効果も当然変わるが,不整脈が同じであっても,患者が変わればやはり効果が変わる.さらには,同じ患者であっても今と1年後とでは,抗不整脈作用を示していたものが催不整脈作用を及ぼす薬に転じることもある.そもそも,薬剤は心臓の局所にピンポイントで効果を発揮するものではないので,同じ心臓のなかでも心房には抗不整脈的に働きながら,心室には催不整脈作用を及ぼしたりする.心臓の不整脈がやっと落ち着いたと思う頃に間質性肺炎や甲状腺異常が露呈することすらある.
 そんなわけのわからない,不安定な抗不整脈薬には任せていられない,とややこしい不整脈に見切りをつけて,もっと生命に関わるところに重点を置く治療選択肢もある.心房内の血栓形成阻止に力点を置いたり,セーフティネットとしての植込み型除細動器(ICD)を植え込む,といった治療がそれである.単純ながら意外と有効で,予後を改善できることもわかってきた.いや,そう安易な方にばかり逃げずにやはり元を絶たねば,という律儀な医者はアブレーションという強引かつ侵襲的な方法で根治を目指す.しかし,この一見荒っぽいアブレーション技術が進歩したおかげで,改めて不整脈の電気生理や異常部位の詳細を理解し,確認できるようになった.さらにはもっと上流のチャネルを,遺伝子を治療しよう,という意欲も湧いてくる.
 本特集では,ここまで進化した不整脈治療の最前線の様子を紹介しながら,比較的頻度の多い不整脈を現場の医師が目の前にしたときに,逃げたくなる気持を抑え,患者のために迅速・安全・的確に対処できるようになっていただくことを目指したつもりである.もちろん,専門医にどのあたりで手渡すか,といった実務的判断を下すうえでも役に立つはずである.しかし,そこから不整脈の起源を知り,機序を理解し,治療の標的を意識できるような医師に育っていただきたいと願っている.不整脈はほとんどが応用編であって,同じものは2つとしてない.その応用編に太刀打ちできる実力が求められるが,現実にはその応用編に揉まれるうちに,やがて不整脈の面白さを感じられるようになるものである.好きになることこそが,不整脈に対して慌てずに自信を持って対応できるようになるための近道といえよう.
企画編集:三田村秀雄
東京都済生会中央病院 心臓病臨床研究センター長,本誌編集委員
1.発作性心房細動にI群薬をどう使いこなすか/新 博次
2.持続性心房細動にベプリジルをどう使いこなすか/中里祐二 他
3.心不全に合併する心房細動にアミオダロンをどう使いこなすか/志賀 剛
4.心房細動に対するアブレーション治療の進歩と適応の拡大/高月誠司 他
5.新しい抗血栓薬はワルファリンと何が違うのか/後藤信哉
6.心房細動における抗凝固療法の対象選択と長期管理/山下武志 他
7.心房細動の1次予防は可能か/熊谷浩一郎
8.チャネル異常によるVFとその長期管理/清水 渉
9.器質的心疾患に伴うVTに対するアブレーション治療の進歩と適応の拡大/副島京子
10.特発性PVC・VT・VFに対するアブレーション治療の進歩と適応の拡大/野上昭彦
11.慢性心不全例におけるICD,CRT-Dの1次予防効果/栗田隆志
12.蘇生時にアミオダロンとニフェカラントの静注薬をどう使いこなすか/吉岡公一郎 他
13.AEDをどこに設置し,どうやって市民に使わせるか/石見 拓
14.Ca2+ハンドリング調節による不整脈治療の可能性/本荘晴朗
15.不整脈の分子生物学的治療への期待/三好俊一郎