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CIRCULATION 6月号
月刊循環器CIRCULATION 8月号

12年7月5日発売
A4変型判144頁
価格:本体¥2500+税
ISBNコード:978-4-287-83012-3
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特集循環器疾患と妊娠・出産

企画編集/丹羽公一郎
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目次 特集 特集 特集
 医療の発達の恩恵を受けて,心疾患全般の予後は著明に改善し,これに伴い,妊娠年齢を迎える心疾患女性は増えている.日本では,総妊娠数の0.5〜1%は心疾患女性の妊娠であり,不整脈などを含めると2〜3%程度と推測される.とくに,先天性心疾患の妊娠出産が増加している. 最近,妊娠出産の高年齢化がみられているが,心疾患の女性は一般よりも子どもを持ちたいという希望が強く,若い年齢で結婚することが少なくない.しかし,自分の持つ心臓病のために,結婚生活や妊娠出産が可能であるか,妊娠出産での注意点はなにか,普通分娩ができるか,子どもに遺伝しないか,育児は大丈夫か,など多くの不安を抱えている.
 妊娠中は,体液循環の負荷のみならず,血液学的,呼吸機能的,内分泌学的,自律神経学的な変化をきたし,心拍出量,心拍数,不整脈が増加,凝固能亢進,大動脈中膜弾性線維の断裂と大動脈拡張が生じる.そして出産時には,陣痛,出血,出産直後の静脈還流増加など,急激な血行動態変化が起こるうえに,出産に対する精神的ストレスも少なくない.また,母体治療薬は胎児異常を生じることもあり,さらに,育児による疲労や不眠も母体へ大きな影響を及ぼす.
 心疾患女性の多くは,一般と同様に妊娠出産が可能であるが,合併症を認め,治療を必要とする場合がある.また,流産や低出生体重児の頻度も高い.妊娠出産時の病態は,心疾患に共通したことも少なくない.心疾患女性の妊娠出産時に認められる主要母体合併症は,心不全,不整脈,血栓塞栓,出血,高血圧,大動脈解離,チアノーゼ増強,感染性心内膜炎などである.流産,低出生体重児,死産なども,胎児に及ぼす大きな合併症である.しかしながら,心疾患の病態は多彩であり,それぞれの心疾患に特有の病態変化を伴い,妊娠出産中の合併症や注意点が異なる場合も少なくない.一方,それら妊娠出産時の合併症,ハイリスク疾患,妊娠を避けることが推奨される心疾患が明らかになりつつある.一部の疾患では,妊娠前に修復術を行っておくか,避妊,あるいは妊娠を中断することが推奨される.またハイリスク心疾患では,母体だけではなく胎児もハイリスクとなる.したがって,中等度リスク以上の心疾患女性において,妊娠出産を安全に進めるには,産科医,循環器科医,小児循環器科医,麻酔科医,新生児科医,看護師などの緊密な協力と妊娠前カウンセリングも不可欠である.
 現在,日本における心疾患女性の妊娠出産に関する専門家は非常に少なく,この分野に関する成書も十分ではない.しかし,日本循環器学会から,『心疾患患者の妊娠・出産の適応,管理に関するガイドライン(2010年改訂版)』が報告され,心疾患女性の妊娠の際の適切なカウンセリングや治療を受けられるようになってきている.また,最近になって欧州心臓病学会,さらに日本成人先天性心疾患学会で,心疾患女性の妊娠出産に関する登録制度が開始され,この分野のデータが蓄積され始めているが,この分野のデータは少ない.
 この特集は,この分野で多くの経験をしている第一線の専門家に執筆をお願いした.心疾患女性の妊娠出産の実際,合併症の治療と予防の現状について,現在考えられる最も新しく,患者にとって適切な管理治療法を紹介できたと考えている.心疾患婦人の妊娠出産の特徴,治療,管理について理解していただき,実際の妊娠患者さんに対応する際の参考になれば幸いである.
企画編集:丹羽公一郎
聖路加国際病院 心血管センター 循環器内科 部長
1.カウンセリングの実際 -本人,家族にはどのようなことを話しておくか-/白石 公
2.妊娠中の心機能モニタリング-なにを見るか,行うべき検査とその所見/神谷千津子
3.胎児心エコー診断/川瀧元良 他
4.妊娠・出産時の血行動態を含む母体の変化/赤木禎治
5.妊娠と不整脈/立野 滋 他
6.妊娠に厳重な注意を要するあるいは手術後の妊娠が勧められる,妊娠を控えたほうがよい疾患/白井丈晶 他
7.妊娠高血圧症候群の特徴と管理/牧野康夫
8.心疾患患者における産科麻酔の考え方と実際,無痛分娩/照井克生 他
9.非チアノーゼ型先天性心疾患の妊娠・出産/犬塚 亮
10.チアノーゼ型先天性心疾患修復術後の妊娠・出産/清水美妃子
11.Marfan症候群の妊娠出産/桂木真司
12.心筋症の妊娠出産/八尾厚史
13.機械弁の妊娠出産/上塚芳郎
14.妊娠中,授乳時の薬剤の使い方/川副泰隆