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CIRCULATION 10月号
月刊循環器CIRCULATION 10月号

12年9月7日発売
A4変型判144頁
価格:本体¥2500+税
ISBNコード:978-4-287-83014-7
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特集高齢者における循環器疾患の管理と問題

企画編集/大内尉義
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目次 特集 特集 特集
 現在の日本の高齢化率は23.2%であるが,2030年には高齢化率32%,とくに75歳以上の後期高齢者の人口が倍増するという,かつてどの国も経験したことのない「超高齢社会」の到来が予測されている.老化することは誰しも避けられない.そうであるならば,健康に老い充実した人生をおくって天寿を全うするという,健康寿命の延伸とsuccessful agingの実現を誰しも期待するところであろう.
 このような状況のもと,すべての臨床医が高齢者の特性を理解し,適切な医療を実践することが要求される時代となっている.とくに循環器疾患は高齢者において発症頻度も高く,また通暁しておくべき疾患の数も多い.加齢に伴い,身体各臓器に種々の形態的,機能的変化が生ずるが,一般的には,それだけで何らかの疾病が起こるというわけではなく,生体にさらに病的要因が加わったときに初めてある疾病が発症する.すなわち,各臓器の加齢変化は加齢に伴う疾病の易発症性を高める働きを有しており,この意味で,各臓器の加齢変化は疾病の基盤を作るといえる.したがって,高齢者における循環器疾患を理解するためには,心臓?血管系の加齢変化がどのような機序で疾病に結びついてくるのかを理解しておくことが必須であり,さらに循環系と密接に関連する内分泌系や神経系の加齢変化などにも精通しておく必要がある.
 高齢者における循環器疾患を正しく管理するために強調しておきたいのは,循環器という臓器だけに着目した診療は,高齢者において往々にして失敗することである.すなわち,高齢者では複数の疾病を抱える人が著しく増加すること,また認知機能など,日常生活に関連した機能が低下するため,個々の循環器疾患に対する診断・治療とともに,全身の臓器機能,日常生活動作(activities of daily living;ADL)に代表される身体機能,心のケア,さらに社会環境の整備にまで及ぶ広い視点が必要である.この視点がなければ,循環器医療にとどまらず,高齢者医療そのものが成り立たないといっても過言ではない.
 本特集号では,このような観点から,高齢者の循環器疾患の管理をめぐる問題点を明らかにし,より優れた対応をするにはどうしたらよいか,ということに焦点を当てて企画した.まず,加齢とともに循環器系にどのような変化が生じ,それらが高齢者における循環器疾患の発症にどのように関連しているか,ということを理解していただいた後,高齢者循環器疾患の特徴と,それをベースにした高齢者への接し方,診察の仕方,治療方針の決定のプロセス,総合機能評価の意義など,循環器疾患を有する高齢者への臨床的アプローチ法を述べ,高齢者の循環器疾患の特徴と一般的な対処法を理解していただく.とくに,高齢者の総合機能評価(comprehensive geriatric assessment;CGA)と,近年,有病率が著しく増加している認知症に関しては,その後別の章を設けて,高齢者の循環器疾患を管理するうえでの意義や注意点などについて詳しく述べられる.
 高齢者における個々の循環器疾患の病態・臨床的特徴がどのようであり,診断・治療をすすめるにあたり,どのような点に注意すべきかに関して理解しておくことは,高齢者の循環器疾患を管理していくうえで基本的な事柄である.メジャーな心疾患として,心不全・虚血性心疾患・不整脈・弁膜症・心筋症が,さらに血管疾患として,大動脈瘤・大動脈解離などの大動脈疾患・閉塞性動脈硬化症に代表される末梢血管疾患・静脈瘤・静脈血栓症・肺血栓塞栓症,さらに高血圧が取り上げられている.また,虚血性心疾患発症の基盤となる動脈硬化の病態について,成因・高齢者における特徴,また,脂質異常症・糖尿病などのリスク因子が,高齢者においてどのように病態に関与するか,それらのコントロールの1次予防,2次予防における意義についても述べていただく.最後に,高齢者における循環器薬の実践的な使い方・インターベンション・手術適応の決め方・そして医療連携の実際と高齢者循環器疾患の在宅における管理についても,最近の動向が述べられている.
 本特集号の主な構成と企画の意図は以上述べたとおりであるが,ともすれば広くて浅い,疾患の各論的記述でおわりがちな「高齢者循環器疾患」特集において,若年者との相違点,全身管理などの横断的な視点をできるだけ取り入れて企画したつもりである.本特集号が,まもなく日本に訪れようとしている超高齢社会において,高齢者循環器疾患管理のレベルアップと,それによるsuccessful agingの実現に貢献できることを期待している.
企画編集:大内尉義
東京大学大学院 医学系研究科 加齢医学講座
1.循環器系の加齢変化と疾患- 高齢者の循環器疾患を理解するために/大内尉義
2.高齢者の循環器疾患へのアプローチ/秋下雅弘
3.高齢者循環器疾患における総合機能評価法とその臨床的意義/新村 健
4.認知症のある高齢者循環器疾患患者への接し方と診療上の注意/神崎恒一 他
5.高齢者の心不全の病態,臨床的特徴と診断・治療上の注意点/三浦哲嗣 他
6.高齢者の虚血性心疾患の病態,臨床的特徴と診断・治療上の注意点/原田和昌 他
7.高齢者の不整脈の病態,臨床的特徴と診断・治療上の注意点/犀川哲典 他
8.高齢者の弁膜症,心筋症の病態,臨床的特徴と診断・治療上の注意点/土居義典 他
9.高齢者の大動脈疾患の病態,臨床的特徴と診断・治療上の注意点/宮田哲郎
10.高齢者の末梢血管疾患の病態,臨床的特徴と診断・治療上の注意点/佐藤 徹
11.高齢者高血圧の診療指針/楽木宏実 他
12.高齢者における循環器薬の使い方/倉林正彦 他
13.高齢者循環器疾患における冠動脈インターベンション,手術の適応の決め方/阿古潤哉 他
14.高齢者循環器疾患管理における地域医療連携,在宅医療の展開/飯島勝矢