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CIRCULATION 11月号
月刊循環器CIRCULATION 12月号

12年11月5日発売
A4変型判112頁
価格:本体¥2500+税
ISBNコード:978-4-287-83016-1
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特集変わりゆく抗血栓療法
   〜血栓溶解療法・抗血小板薬・抗凝固薬〜

企画編集/棚橋紀夫
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 脳卒中治療・予防対策は,近年急速に変遷しつつある.脳梗塞に対する組織プラスミノゲンアクチベーター(t-PA)静注療法は,認可されてから数年以上経過し,有効性,出血性合併症の頻度も明らかとなり,市民教育,啓発運動の展開により使用症例数は年々増加し,年間8500例以上に使用されるようになった.しかし,主幹動脈閉塞,とくに内頸動脈,中大脳動脈起始部,脳底動脈閉塞では,再開通率は低いことも明らかとなった.現在新しい世代のt-PA(desmoteplaseなど)の開発治験が進行している.さらにtime window が平成24年9月1日より発症後3時間以内から4.5時間に延長された.しかし,発症後4.5時間までtime windowが延長されても,t-PA施行患者の増加は軽度との予測がなされている.また,機械的血栓回収デバイス(Merci, Penumbra)の登場により,血管内治療成績が報告されるようになった.しかし,これらのデバイスでの治療成績は,デバイスの種類,施設,術者の技術などにより異なることが明らかになっている.今後,血管内治療を脳梗塞急性期治療のなかでどのように位置づけるのか,適応症例の選択基準の統一化などが重大な課題となる.
 また,抗血小板療法については,CSPS2などの大規模臨床試験の結果も発表され,抗血小板薬のそれぞれのエビデンスが明らかになってきた.個々の症例における抗血小板薬の使い分け,併用の是非が議論されている.とくに併用に関しては,出血性合併症が増加する可能性があるため,対象となる症例を厳選し使用する必要がある.また,アスピリン抵抗性やクロピドグレル抵抗性の存在も明らかになったが,脳梗塞患者における抗血小板薬の抵抗性に対してどのように対応するのかが今後明らかにされると思われる.
 一方,心房細動による脳塞栓症予防に経口凝固薬ワルファリンが数十年間使用されてきたが,その使用時のさまざまな問題により十分に使用されていなかった.新規抗凝固薬である直接的トロンビン阻害薬ダビガトランと抗Xa因子阻害薬イグザレルトがすでに使用可能となっている.これらの薬剤はワルファリンと異なり,血液モニタリングが不要,食物・薬剤との相互作用が少ない,効果発現・消失が早い,頭蓋内出血が少ない,血液モニタリングの必要がない,投与量が一定などの利点を有し,臨床の場で多く使用されるようになった.しかし,使用上の注意点も多く,使用法に熟知する必要性がある.今後,経口抗凝固薬の使い分けが重要な課題となっている.
 また,脳卒中の予防には抗血栓薬のみでなく,リスク因子の管理を厳重に行なうことが必要となる.とくに抗血栓薬服用患者においては,脳出血が増加するため,厳格な血圧管理が求められる.
 このように,脳梗塞治療・予防は新しい時代を迎えている.現在脳卒中診療医が直面するホットな話題を取り上げ,opinion leaderの先生方に解説していただいた.ご一読いただければ幸いである.
企画編集:棚橋紀夫
埼玉医科大学国際医療センター 神経内科 教授
1.脳梗塞超急性期患者へのrt-PA 静注療法および脳血管内治療の現状と問題点/出口一郎 他
2.次世代t-PA静注療法への期待/豊田一則 他
3.心筋梗塞の1次予防と2次予防, 抗血小板薬の役割/百村伸一 他
4.非心原性脳梗塞・TIAに対する抗血小板療法/伊藤義彰
5.頸動脈ステント留置患者の抗血小板療法/吉村紳一 他
6.抗血小板療法患者の薬効モニタリング/尾崎由基男 他
7.新規抗血小板薬の動向/山崎昌子
8.非弁膜症性心房細動による塞栓症予防
(1)ワルファリンの現状と問題点/野川 茂
(2)ダビガトラン/内山真一郎 他
(3)リバーロキサバン/矢坂正弘 他
(4)アピキサバン/後藤信哉
9.抗血栓療法中の頭蓋内出血のリスクと血圧管理/星野晴彦