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CIRCULATION 11月号
月刊循環器CIRCULATION 4月号

13年3月25日発売
A4変型判136頁
価格:本体¥2500+税
ISBNコード:978-4-287-83020-8
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特集パーフェクト24時間血圧コントロールを目指す
   睡眠・サーカディアン高血圧治療

企画編集/苅尾七臣
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 近年,睡眠やサーカディアンリズムの障害が,生活習慣病を引き起こし,その後の循環器疾患のリスクを増加させることを示すエビデンスが集積してきている.また,体内時計やサーカディアンリズムに関連する遺伝子を改変した動物を用いた実験研究も大きく進んでいる.
 時計遺伝子はフィードバック機構により,生体のサーカディアンリズムをつくり出す.末梢のあらゆる細胞にこの時計遺伝子が発現しており,個々の細胞にサーカディアンリズムが存在する.視床下部視交叉上核にある主時計が,神経・体液因子を介して末梢時計の周期を調節している.血圧やその調節因子も明確なサーカディアンリズムを示すことが知られている.健康成人における正常の血圧サーカディアンリズムは,昼間と比較して夜間睡眠中には10〜20%低下する.この夜間血圧低下は睡眠ステージと密接に関連しており,睡眠前半に生じる徐波睡眠で最も低下する.
 血圧のサーカディアンリズムの障害は,24時間血圧レベルとは独立して,臓器障害の進展,ならびに循環器疾患の発症と関連する.夜間睡眠時に血圧低下が十分にみられないnon-dipperや,逆に睡眠中血圧が上昇するriserでは,正常のdipperと比較して,脳卒中や冠動脈疾患,心不全,さらに心血管死亡などのリスクになることが知られている.血圧レベルが24時間血圧でもまったく正常である健康成人においても,サーカディアンリズムの障害は臓器障害と関連しており,non-dipperではdipperに比較して左室肥大が進行しており,血中B型ナトリウム利尿ペプチドが増加している.これらは,血圧サーカディアンリズムが高血圧臓器障害において,血圧レベルとは独立して重要であることを示唆している.さらに,夜間血圧は睡眠後半にかけて徐々に上昇し,起床とともにさらに上昇するモーニングサージを生じる.適度なモーニングサージは生理現象であるが,ある閾値を超えた増強したモーニングサージはリスクになる.
 降圧療法の最終目標である心血管・腎保護には,24時間血圧レベルを130/80 mmHg未満に保ち,サーカディアンリズムをdipper型に,さらに過度の血圧変動,とくにモーニングサージを適度な範囲内に抑制しておくことの3つの構成成分で定義した「パーフェクト24時間血圧コントロール」の達成が重要である.その達成のためには,24時間持続する降圧効果に加え,夜間から早朝にかけて増加する昇圧神経液性因子である交感神経系やレニン・アンジオテンシン系などの活性を,早朝に特異的に抑制しておくことが望ましい.さらに,食事や運動療法に加え,睡眠習慣の是正やメラトニンやそのアゴニストであるラメルテオン,さらに睡眠薬などによる睡眠へのアプローチにも降圧効果が期待される.
 本特集では,サーカディアンリズムを考慮したパーフェクト24時間血圧コントロールの意義と,その達成のために知っておくべき病態生理と薬剤特性を第一線の専門家にまとめていただいた.明日からの臨床にお役立ていただければ幸いである.
企画編集:苅尾七臣
自治医科大学 臨床医学部門 内科学講座 循環器内科学部門 主任教授
I.生体のサーカディアンリズム
 1.生体のサーカディアンリズムとその意義/大塚邦明 他
 2.体内時計と循環器疾患/前村浩二
 3.時計遺伝子と高血圧の発生機序/岡村 均 他
 4.レニン・アンジオテンシン系のサーカディアンリズム/辻野 健 他
 5.交感神経系のサーカディアンリズム/廣岡良隆 他
II.睡眠と病態
 1.不眠と肥満・メタボリックシンドローム/内村直尚 他
 2.不眠と高血圧・non-dipper/永井道明 他
 3.睡眠時無呼吸症候群と高血圧・non-dipper/長田尚彦 他
III.サーカディアンリズム障害・non-dipper/riserと病態
 1.non-dipperと循環器イベント/柴崎誠一 他
 2.non-dipperと高血圧性心疾患・心不全/岡崎 修
 3.non-dipperと血管老化/南野 徹
 4.non-dipperとCKD/福田道雄
IV.サーカディアンリズムを考慮した高血圧治療
 1.カルシウム拮抗薬の24時間降圧特性/江口和男
 2.レニン・アンジオテンシン系阻害薬の24時間降圧特性/水野裕之 他
 3.利尿薬の24時間降圧特性/福冨基城 他
 4.アルドステロン拮抗薬の24時間降圧特性/矢野裕一朗
 5.α遮断薬とβ遮断薬の24時間降圧特性/石川譲治 他
 6.サーカディアン降圧療法/星出 聡
 7.メラトニン・メラトニンアゴニストによる降圧作用/井上雄一
 8.非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の使い方と高血圧治療における不眠治療の重要性/内山 真 他