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CIRCULATION 7月号
月刊循環器CIRCULATION 7月号 14年第3号 SOLD OUT

13年6月25日発売
A4変型判112頁
価格:本体¥2500+税
ISBNコード:978-4-287-83023-9
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特集心腎連関の病態を知る−治療に活かす−

企画編集/伊藤 浩
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 人口の高齢化と疾病構造の変化により,心血管疾患(cardiovascular disease;CVD)と慢性腎臓病(chronic kidney disease;CKD)を合併する患者が増加している.その理由として,CVDとCKDの危険因子が共通していることが挙げられ,近年,心臓と腎臓との間の臓器連関(心腎連関)の関与が重要であることがわかってきた.ここでの心腎連関とは,心臓と腎臓との間に生じる病的な関係をいう.心不全が増悪すれば腎機能が低下する,あるいは腎不全が進行するほど心血管イベントが増加するといった形で両者の間に悪循環が生じることは比較的新しい知見である.従来,クレアチニン(Cr)値が上昇し,推算糸球体濾過量(estimated glomerular filtration rate;eGFR)が低下すれば末期腎不全(end-stage renal disease ; ESRD)が発症し,透析に至ることが懸念されていたが,そのリスクよりもCVDを発症し,死亡に至るリスクのほうがはるかに高いことがわかってきた.その結果,最近ではCr値とeGFRがCVDのリスク因子とみなされるようになってきた.
 一方,心不全患者の予後は左室機能よりむしろ腎不全の影響を強く受けることも認識されるようになってきた.急性心不全を治療する際にも,できるだけ腎機能を悪化させない治療を選択することが,遠隔期の生命予後の改善につながることもわかってきた.すなわち,臓器別診療の枠に捉われることなく,心腎連関のベースに存在する病態生理を理解し,的確に診断するとともに,腎機能を保持することを念頭に置いた循環器診療,そして,CVDの予防を念頭においた腎臓病の治療が今,求められている.循環器医にとって最も大切なのはCKDを早期に診断することであるが,現実には難しい.Cr値が異常値となってはじめて気づくことも多いのではないだろうか.定期的に,微量アルブミン尿をチェックしているであろうか.診断が遅れれば治療が後手に回ることになる.そして,心腎連関の機序の理解なくしては,適切な治療薬の選択も難しいものとなる.
 本特集を企画するにあたり,心腎連関の機序と病態,そして治療戦略を決定する理論的根拠と具体的対策を理解してもらうことを念頭に置いてトピックスを考えた.そして,循環器医が苦手とする腎臓の解剖生理と病的変化,心腎連関に関連する臨床病態をとりあげた.さらに,心腎連関の病態を理解するうえで重要な,神経体液性因子の亢進,血管内皮機能障害,尿毒素,酸化ストレスや炎症の亢進,貧血や鉄代謝異常,カルシウムやリンの代謝異常などに関して,エキスパートの先生方にわかりやすく述べていただくこととした.治療に関しても,利尿薬,神経体液性因子の調節,そしてESRD症例への対応など多岐にわたっており,裾野のひろい心腎連関において,日常診療で重要な項目をとりあげている.本特集が循環器医,腎臓専門医のみならず,一般内科医にとって心腎連関の理解を深める一助となれば幸いである。
伊藤 浩
岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 循環器内科学 教授
I.病態と機序を理解する
1.腎臓の生理と病的変化/柏原直樹 他
2.心臓からみた心腎連関〜心血管リスクとしての慢性腎臓病〜/筒井裕之
3.急性心不全における腎機能障害/佐藤直樹
II.心腎連関にかかわる因子を理解する
1.インスリン抵抗性と心腎連関/和田 淳
2.心腎連関とRAA系,交感神経系/斎藤能彦 他
3.心腎連関の陰の立役者〜尿毒素〜/丹羽利充
4.心腎連関と酸化ストレス・炎症/伊藤貞嘉 他
5.心腎連関と貧血〜その機序と対策〜/増山 理 他
6.腎保護を考慮した利尿薬の選択と使い方/今井圓裕
7.RAA系阻害薬,β遮断薬の使い方と注意点/坂田泰史 他
8.末期腎不全,透析症例で心血管イベントを予防するには/倉林正彦 他
9.造影剤腎症の病態と対策/笠原正登 他