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月刊循環器CIRCULATION 8月号 SOLD OUT |
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13年7月25日発売
A4変型判112頁
価格:本体¥2500+税 ISBNコード:978-4-287-83024-6
全ページカラー印刷
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特集●β遮断薬を使いこなす−生命予後の改善を目指して−
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企画編集/堀 正二 |
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交感神経は,場合によっては悪者に仕立て上げられることもあるが,生体にとって必須の生命維持メカニズムである.基本的には,動物が餌(獲物)をとるために全力疾走するメカニズムであり,四肢(活動骨格筋)に最大血流を供給する制御機構である.心拍出量を増やし,活動骨格筋への血管を拡張し,それ以外の臓器への血管を収縮させ,血流分布を制御する.また,心収縮力を上昇させ心拍数を増やす.当然,冠血流を増やすが,脳血流量は減らさないように調節する.餌をとるためだけではなく,みずからが餌にならぬよう追撃から逃れるメカニズムでもある.一方,疾走が終わると,もとの静穏な状態に速やかに戻るが,これが副交感神経の働きであり,ブレーキ機構である.副交感神経によってブレーキをかけるのは,少しでも早く平静状態に戻るためであり,交感神経が興奮したままであると心血管系は疲弊する.また,心筋酸素消費量が増え,血管にも負荷がかかるため,もし心血管系の予備力が低下していると心筋虚血や血管破綻が生じることになる.したがって,交感神経系の亢進は必要最小限の時間にとどめるのが望ましく,副交感神経の興奮(活性亢進)は速やかなほうがよい.
しかし,動脈硬化疾患や心不全などの慢性疾患で,交感神経の持続的な活性亢進がみられることがある.これは,心臓や動脈の圧受容体の感受性が低下し,求心性副交感神経活性による交感神経への抑制が低下することによって,交感神経活性が亢進するためである.したがって,このような慢性的な交感神経活性亢進を抑制するためには,副交感神経の活性を促進する薬剤の投与が理想的であると考えられる.薬物としてはジギタリスとACE阻害薬にその作用が認められるが,いずれもあまり強力な作用ではない.反面,薬剤ではないが,運動や腹式呼吸トレーニングは副交感神経の活性亢進に有効である.
一方,交感神経抑制薬として登場したのが,β遮断薬である.β遮断薬は,G蛋白共役型受容体の拮抗薬として最も古くに開発された薬剤であり,長く降圧薬として用いられてきた.しかし,交感神経の活性亢進が最もネガティブに働くのが心不全と突然死であるため,これらの病態の治療薬として注目されている.一方,α遮断薬の開発はβ遮断薬より遅いが,交感神経の血管収縮作用を緩和することから,本薬剤も降圧薬として開発された.しかし,慢性心不全に対する臨床試験で予後改善効果がみられなかったことから,α遮断薬を単独で用いることは限定的とされている.すなわち,交感神経で重要な役割を果たしているのはβ受容体であるということである.α受容体の心臓に対する作用はβ受容体に比べればはるかに小さい.
心不全に対するβ遮断薬は,短期的には心機能の抑制効果のため禁忌であったが,長期的には心筋保護作用が認められ,β遮断薬はいまや慢性心不全の第1選択薬にまでその地位を上げたのは注目に値する.心不全におけるβ遮断薬については,心筋酸素消費の抑制やカルシウム過負荷の抑制が主要な作用のメカニズムと考えられるが,突然死の抑制には,局所の非同期性や活動電位の均一性の是正も大きな効果がある.β遮断薬は高血圧,心不全,不整脈の領域で独自の特徴的な作用を持つことから,臨床に貢献してきた.しかし,薬剤の特性をみながら,投与量の調節や患者選択が重要な薬剤であり,いわば,プロの技量が発揮される薬剤である.本特集ではβ遮断薬の各領域における最近の知見を踏まえながら,専門の立場から解説いただいた.
堀 正二
大阪府立成人病センター 総長
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I.基礎
1.高血圧治療薬としてのβ遮断薬の作用と特性/苅尾七臣 他
2.β遮断薬はなぜ心不全に効くのか/矢野雅文 他
II.臨床
1.収縮不全におけるβ遮断薬療法の有用性と課題/筒井裕之 他
2.拡張不全にβ遮断薬は有効か/山本一博 他
3.β遮断薬の至適用量と心拍数低下の意義/岡本 洋
4.心拍数は心不全のリスクマーカーか,リスクファクターか/百村伸一 他
5.急性心不全にはβ遮断薬をいつから導入すべきか/清野精彦
III.その他の疾患の治療
1.高血圧治療では,なぜβ遮断薬は第1選択薬ではないのか/大屋祐輔 他
2.虚血性心疾患におけるβ遮断薬の位置付け〜最近の考え方〜/田邉健吾
3.不整脈治療薬および突然死予防薬としてのβ遮断薬/池田隆徳
4.頻脈性不整脈にβ遮断薬は第1選択薬となりうるか/山下武志 他
5.周術期管理におけるβ遮断薬の予防的投与は,是か非か/伊藤 浩 他
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