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臨床循環器CIRCULATION 14年第2号 |
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14年3月25日発売
A4変型判96頁 価格:本体¥2,500+税 ISBNコード:978-4-287-83028-4
全ページカラー印刷
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企画編集/南都伸介 |
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近年生活習慣の欧米化と高齢化により動脈硬化性疾患が増加の一途をたどっている.下肢においても,閉塞性血栓血管炎(バージャー病)と比較し下肢閉塞性動脈硬化症(末梢動脈疾患[peripheral artery disease;PAD])罹患患者が急増している.PADは四肢主幹動脈における慢性的な動脈硬化性変化(狭窄もしくは閉塞)に伴い発症する疾患であり,下肢の虚血により冷感・しびれ・間歇性跛行・安静時痛・足趾潰瘍や壊疽などの症状を呈する.とくに安静時痛や足趾潰瘍を合併する重症下肢虚血(critical limb ischemia;CLI)症例では,血行再建術を施行せず経過観察すると,下肢および全身の予後はきわめて悪い(保存的加療のみでの1年経過は,死亡30%・大切断25%・CLI持続20%・CLI回復25%).また,下肢切断後患者ではADL・QOLは低下し,その結果,予後も不良である.大切断2年後での自立歩行可能な患者は40%のみで,30%が死亡,対側切断が15%と報告されている.欧米では現在,PADが推定1500〜2000万人存在し,そのうちCLIは75万人(CLIの年間発症は8〜28万人)とされている.
PADに対する治療ガイドラインには,TASC(Trans Atlantic Inter-Society Consensus)がある.本ガイドラインは,2007年にTASC Ⅱとして改訂された.侵襲的治療については,病変特性からTASC A〜D型の4つに分けられており,TASC A型病変である短区域狭窄病変はカテーテル治療の適応で,TASC D型病変である長区域閉塞病変ではバイパス術が適応とされている.近年,低侵襲治療が望まれるなか,欧米では各領域におけるバイパス術は年々低下傾向であり,カテーテル治療の適応が拡大している.とくに,腸骨動脈領域は大腿膝窩動脈領域と比較して慢性期成績が良好であるため,TASC C/D型病変に対しても積極的にカテーテル治療が施行されているのが現状である.大腿膝窩動脈領域におけるカテーテル治療は初期成功率が高く,狭窄症例では95%以上であり,閉塞病変においても85%以上の高い再疎通率である.それに対して,臨床上の問題は遠隔期成績である.脛骨・腓骨動脈血管病変に対する侵襲的治療の適応は,CLI症例に合併した病変のみとされている.
PADに対するカテーテル治療の適応はバイパス術からカテーテル治療へ移行しつつあるが,バイパス術とカテーテル治療にはそれぞれ利点・欠点があり,症例によって異なるため必ずしもどちらの治療が優れているかは一概にはいえない.そのため,患者状態に合わせ段階的に,また集学的に治療術を選択することが重要である.とくに,日本の症例は糖尿病の合併症例が多く,さらに維持透析症例の比率が欧米に比べて圧倒的に高い現状を踏まえて,その治療戦略においては日本におけるエビデンスを十分に考慮する必要がある.本特集では,下肢の末梢動脈疾患における日本のオピニオンリーダーに病態から治療について解説をお願いし,とくに血行再建術に関しては適応が急激に拡大しつつある血管内治療に焦点を当てた内容とした.先生方の日常診療の一助になれば幸甚である.
南都伸介
大阪大学大学院 医学系研究科 先進心血管治療学寄附講座 教授
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1.末梢動脈疾患の病態
(1)糖尿病との関連/髙原充佳
(2)維持透析患者に合併した末梢動脈疾患の特徴/中野雅嗣
2.末梢動脈疾患に対する薬物療法/東谷迪昭
3.大動脈腸骨動脈病変に対する血管内治療/鈴木健之 他
4.大腿膝窩動脈病変に対する血管内治療/曽我芳光 他
5.膝下動脈病変に対する血管内治療/飯田 修 他
6.完全閉塞病変に対する血管内治療戦略
(1)血管内エコーの有用性/川﨑大三
(2)側副血行路を利用した両方向性アプローチ/浦澤一史 他
(3)遠位部穿刺を用いたアプローチ/安藤 弘 他
7.重症下肢虚血に対する創傷治療/大浦紀彦 他
8.末梢動脈疾患に対する外科的治療/東 信良
9.血管内治療は外科的バイパス術を本当に凌駕できるのか/相原英明
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