HOME雑誌臨床循環器 > 臨床循環器14年第3号
CIRCULATION 9月号
臨床循環器CIRCULATION 14年第3号 SOLD OUT

14年5月26日発売
A4変型判112頁
価格:本体¥2,500+税
ISBNコード:978-4-287-83029-1
全ページカラー印刷

特集最新の急性心不全治療−急性期から慢性期への移行を踏まえて−

企画編集/安村良男
画像をクリックするとサンプルをご覧いただけます
目次[PDF 特集[PDF 特集[PDF 特集[PDF
 これまで,急性心不全治療薬の有効性を検証するためのいくつかの大規模試験が施行されてきたが,従来の治療法に比べて予後を改善するとされる新しい薬剤は,今のところない.そのため,急性心不全の治療は経験的な事実を寄せ集めて施行されているのが現状である.急性心不全の病態は,組織低灌流を伴う場合と伴わない場合があるが,うっ血は共通する病態である.うっ血が急性心不全の主たる病態であることは疑う余地がない.うっ血は水分貯留と体内での再分布に分けられるが,これらの病態の理解は急性心不全の治療に不可欠である.うっ血の解除の手段もいくつかあり,限られた症例を除けばうっ血解除そのものに難渋することはそれほど多くはない.
 急性心不全の短期および長期目標を何に設定すべきかについての解答は今のところ見あたらず,今後解決すべき問題として残っている.たとえば,退院時におけるうっ血の有無に着目すると,その有無は必ずしも予後に関係しない.このことは,うっ血の解除は退院のための治療目標ではあるが,心不全が再増悪しうっ血が再出現するのは,基礎となる心疾患の自然経過そのものに他ならないことを示している.したがって,再入院を繰り返すステージCの心不全(慢性心不全の急性増悪)は,過去に急性心不全を経験したが,今は安定しているステージCの心不全(新規発症急性心不全に多い)とは異なる病態と考えたほうがよい.再入院を繰り返す急性心不全は,代償から非代償への閾値が低いと考えられる.この心不全では基礎心疾患のみならず,併存疾患への対応,社会生活の管理も重要になってくる.また,その治療目標は再入院回数を減少させるだけでなく,再入院したとしても軽い急性心不全で終わらせることも治療目標になるかもしれない.
 近年,水利尿薬であるトルバプタンが日本の心不全治療に使用可能となった.EVEREST試験の結果によると,トルバプタンは長期予後の改善をもたらすには至っていないが,ループ利尿薬抵抗症例など,症例によっては固有の効果が発揮されるものと期待されている.また,急性心不全の急性期のアルドステロン拮抗薬の使用や,心筋代謝改善薬であるn-3多価不飽和脂肪酸など有望な薬剤の開発が進んでいる.今後も増加が予想される高齢者急性心不全においては,併存疾患の多さや,その固有の病態,何を治療のターゲットにするかなど,残された課題は多い.
 以上のような観点から,8部の構成として,それぞれの項目について第一線の先生やオピニオンリーダーの先生にご解説いただき,急性心不全を包括的にとらえてみたい.
安村良男
大阪医療センター 循環器内科 科長
Ⅰ. 急性心不全の初期評価のためのアルゴリズム〜6軸モデルによる初期評価〜/青山直善
Ⅱ. 血圧および循環血液量の制御システムとその制御機構の障害
 1. 神経制御〜交感神経と迷走神経制御〜/岸 拓弥
 2. 体液性因子〜RAS,AVP,NPなど〜/斎藤能彦 他
Ⅲ. systemic venous congestion
 1. うっ血腎/伊藤貞嘉
 2. うっ血肝〜心肝連関〜/坂田泰史 他
Ⅳ. 内科的治療
 1. 利尿薬/増山 理 他
 2. 血管拡張薬・強心薬の使い方/橋村一彦
 3. トルバプタンの可能性/佐藤直樹
 4. 初期治療薬としてのアルドステロン拮抗薬の可能性/北風政史 他
Ⅴ. 急性期の陽圧呼吸療法/百村伸一 他
Ⅵ. 虚血性心疾患を合併した急性心不全の治療/岩倉克臣
Ⅶ. 急性期の不整脈,心拍数のレートコントロール/池田隆徳
Ⅷ. 再入院の病態とその予防・対策
 1. 入退院を繰り返す心不全/猪又孝元
 2. 高齢者心不全/佐藤幸人 他