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医療統計学の基礎 (CD-ROM付)
金沢大学医学部教授 城戸照彦・井上克己・岡本博之 著
A5判/208頁
価格:本体3,600円+税
ISBNコード:4-7578-0021-5
内容の概説  本書は、医学、保健学、薬学などを学ぶ大学生、院生や医療・保健の分野に携わる人々を対象とした統計学の入門書である。通常大学や短大において、教養的科目や専門の基礎科目として半年間で講義される統計学の内容は、度数分布等に始まりχ2検定やt検定あたりで終わるケースが多い。しかし専門科目を深く理解し、さらに卒業論文を仕上げるためにはそれだけでは不十分で、上記の内容のほかに回帰分析や実験計画法の一定の知識が求められるのが実際である。本書は、大学初年度から必要とされる初歩的知E識から、卒業論文を仕上げるまでに最低限必要と思われる内容を厳選して、初学者にもわかりやすくていねいに解説したものである。講義時間に換算するならば、半年間の統計学入門に5〜6週の特論の講義を加えた内容を想定している。講義のテキストとしても、またデータの統計処理の際の手引き書としても役立つように配慮されている。内容的な特徴は次の3点にまとめられる。

(1)本書の内容をパソコン上で実行する統計ソフトとして、特別なもの、高価なものの使用を避け、Windows上で一般的であるMicrosoft Exel に付属する「統計ツール」を用いている。また「統計ツール」に含まれない手法については、付録のCD-ROMにプログラムを用意し、あわせて本書に含まれる分析方法を完全にサポートするようにした。またこのCD-ROMには、中心極限定理やさまざまな確率分布をシミュレートするプログラム、さらに統計手法を実際身につけるうえで大切な練習問題も数多く用意されている。本を読むと同時にこのCD-ROMを活用することで自然に統計的方法が身につくように工夫されている。

(2)初学者にとり統計学の学習は、厳密な数学的論理に固執しすぎるならば学習意欲が頓挫してしまいがちであり、逆に統計的な意味を理解せずにパソコンによるデータ解析のみを追いかけても結果が理解できなかったり、間違った結論を導き出すことになってしまう。重要なことは、統計的な論理を学ぶと同時に、具体的な練習問題で実際にデータ解析を行ってみる、それを繰り返し行い統計的方法を頭に浸透させて行くことである。したがって本書の記述では難解で抽象的な数学的表現は必要最小限にとどめ、高等学校程度の数学的素養で十分に読みこなせるように心がけた。同時にフローチャートの活用や練習問題を豊富に用意することにより、統計的意味と論理の流れの理解できるように配慮されている。

(3)具体例や練習問題には実際に医療現場で得られたものや専門雑誌に投稿されたものを中心に数多く用意されている。具体的に練習問題を解くことがそのまま実験データの統計処理や卒業論文等の作成の模擬的体験となるように計画されている。


本書の構成
第1章 母集団と標本
医療統計とは本来いかなる学問かを母集団と標本の関係において簡単に説明する。またこれから用いる数学の公式とギリシャ文字の読み方の表をあげる。

1.1 母集団と標本
1.2 記述統計と推測統計
1.3 記号の説明


第2章 資料の整理
1変数資料についての、表やグラフあるいは数値による整理を紹介する。様々な平均値や標準偏差の意味を豊富な例を紹介することで明らかにしてゆく。

2.1 表とグラフによる整理:度数分布表と分布図
2.2 数値による整理:中心の尺度と散らばりの尺度
2.2.1 代表値
2.2.2 散布度
2.2.3 チェビシェフの不等式


第3章 確率と分布
統計学の数学的基礎である確率論の基本を、確率分布を中心にわかりやすく簡潔に説明する。また正規分布と他の連続型確率分布、あるいは二項分布との関連をCD-ROM内のシミュレーション・プログラムを用いて解説する。

3.1 事象の確率
3.1.1 加法定理
3.1.2 条件付確率と乗法定理
3.1.3 ベイズの定理
3.2 確率変数と確率分布
3.2.1 離散型分布と連続型分布
3.2.2 期待値と標準偏差
3.3 離散型確率分布
3.3.1 二項分布
3.3.2 Poisson分布
3.4 連続型確率分布
3.4.1 正規分布
3.4.2 2変数正規分布
3.4.3 その他の連続型分布


第4章 推定と検定の基本的考え方
まず標本分布と母集団分布の基本的関係について、中心極限定理をCD-ROMに含まれるシミュレーション・プログラムを用いることにより実感してもらう。その上で推定と検定の基本的な考え方を母平均と標本平均を用いて解説する。とくに有意水準と検出力については丁寧な解説を加えた。

4.1 標本分布
4.1.1 標本分布と母集団分布
4.1.2 不偏推定量
4.1.3 中心極限定理
4.2 区間推定
4.2.1 区間推定と信頼度
4.3 検定
4.3.1 帰無仮説と対立仮説
4.3.2 2種類の過誤
4.3.3 有意水準と検出力


第5章 検定
本書で述べる検定の前半部分にあたる。基本的な検定方法について論理の中身とその流れを、豊富な例とフローチャートを用いてわかりやすく解説する。Excelの「統計ツール」とCD-ROMのプログラムを用いて実際に検定を行う。

5.1 一つの母集団についての検定
5.1.1 母平均の検定
5.1.2 母分散の検定
5.1.3 母比率の検定
5.2 二つの母集団についての検定
5.2.1 等分散の検定
5.2.2 二つの母平均の差の検定(対応のある場合)
5.2.3 二つの母平均の差の検定(対応のない場合)
5.3 χ2検定
5.3.1 適合度の検定
5.3.2 独立性の検定


第6章 推定
母数についての区間推定の理論を簡潔に述べる。検定を学んだ後なので初学者にもたやすく理解されるであろう。本章に対応するプログラムはExcelの「統計ツール」には含まれないので、付属CD-ROMのそれを全面的に用いることになる。

6.1 母平均の推定
6.2 母分散の推定
6.3 母比率の推定


第7章 分散分析と多重比較
7,8章で検定の後半部分を解説する。実験計画法と分散分析の理論の理解は学生・院生に留まらず医療・保健に携わる人にとり最も基本的な統計的素養である。また最後の節で、分散分析後の水準効果の有意差の検定で必要となる多重比較の考え方と検定法をを紹介した。

7.1 分散分析とF検定
7.2 一元配置法
7.3 二元配置法(対応のある場合)
7.4 二元配置法(対応のない場合)
7.5 多重比較の考え方


第8章 相関と回帰
2変数資料の分析法として相関分析と回帰分析について述べる。回帰分析については単回帰と重回帰の関連についても触れ、得られた結果についての分散分析も解説した。またこれらの方法についてのプログラムもCD-ROMに用意されている。
8.1 相関分析
8.1.1 相関係数
8.1.2 母相関係数に関する検定と推定
8.2 回帰分析
8.2.1 回帰直線と最小2乗法
8.2.2 回帰分析