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臨床医学のためのウェーブレット解析 |
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医療法人康昌会石川医院院長 石川康宏 著 |
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A5判/440頁 価格:本体16,000円+税(CD-ROMソフト共)
ISBNコード:4-7578-0000-2 |
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診察室の片隅で,埃をかぶったまま眠っていた,心拍変動や血圧変動,心電図などの時系列データに,ウェーブレットと情報理論の光をあてることで,如何に,多くの情報が,これらの中に隠されていたかが,本書で,明らかにされる。
ウェーブレット解析は,1980年代初頭に導入され,従来のFourier変換にとってかわる方法として,注目を集めている。
一方,Javaは,1995年に誕生したオブジェクト指向プログラミング言語であり,情報ネットワーク革命の主役であるInternetを強く意識して作られ,これと歩調を併せ,発展してきた。
本書は,臨床医学を専門としている著者による極めてユニークな著書であり、他に類書を見ない内容となっている。 本書の著者は,Javaによる「ウェーブレット解析・スペクトル解析ソフトウェア MEM」というソフトウェアを開発し,本書中で公開を行っている。本書の著者による「ウェーブレット解析・スペクトル解析ソフトウェア MEM」は、既に日本の大学や研究機関のみならず,海外の大学や研究機関でも,研究・教育に幅広く活用されている。
本書の第1の目的は,難解と云われるウェーブレット解析を,初心者や門外漢に理解できように,「高校数学だけで解るウェーブレット解析」をモットーに、やさしく、解説されている。
実際に,本書のCD-ROMにある「ウェーブレット解析・スペクトル解析ソフトウェア MEM」を使い,サンプル・データを解析して,まず,イメージを把握し,その後に,概念や定義式を解説。
本書は,ウェーブレット変換を,時系列データの解析に応用することを目的にしている読者を念頭に置いている。応用にあたっては,初心者には,個々の数式の詳細よりも,ウェーブレット変換の概念(イメージ)を理解することも,重要なことである。
初心者や門外漢は,純粋に数学的な見地からは,オーソドックスな演算過程がわからなくても,その式の行っている内容が,フィーリングとして分かってしまえば,後は必要に応じて基礎数学や統計学の本で関連した項目だけを読み直すことで理解することができると考えるからである。
本書の第2の目的は,時系列データの「ウェーブレット解析・スペクトル解析 ソフトウェア MEM」での解析の結果を,如何に解釈するのかという点に,充分な解説を加えることである。既存の商用ソフトを購入して,データを入力すれば,そこには,数字なり,画像なり,何らかの表示がなされるが,この結果を如何に解釈し,応用すべきかについては触れられていない。
本書は,時系列データとして,血圧変動,心拍変動,心電図波形などを使い,「ウェーブレット解析・スペクトル解析ソフトウェア MEM」で,連続ウェーブレット変換,離散ウェーブレット変換,ウェーブレット・パケット解析,FFT,最大エントロピー法,情報理論などを総合的に駆使し,その解析の結果の解釈について,徹底的に,解説を加えている。
本書の第3の目的は,プログラミングについて,まったくの初心者が,数値計算や理工学系の研究に,Javaでのプログラミングが可能になるように最小限で必須の知識を習得させる事である。
多くのウェーブレット解析の書籍は,高価な米国の商用ソフトであるMathematica、S-PlusやMatLabの解説であることが多く,これらのスクリプトの提示のみで,JavaやCで使用できるソースコードは,あまり見当たらないのが現状である。更に,これらを利用できるのは,恵まれた環境にあるごく一部の研究者に限られている。高価な商用ソフトを購入しても,それだけで,ウェーブレット解析を十分に研究に使いこなせる訳はない。
本書で解説するJavaによる「ウェーブレット解析・スペクトル解析ソフトウェア MEM」は,ソースコードを公開しており,ウェーブレット・パケット解析,最良基底アルゴリズムなども,実装している。「ウェーブレット解析・スペクトル解析ソフトウェア MEM」をカスタマイズして,実際の研究に十分に活用できるようになるためのJavaの実用的な知識のみが,書かれていることである。 |
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本書の内容
第1章 "はじめてのJavaとウェーブレット"
プログラミングは,まったくの初心者の為に,Javaプログラミング開発環境JDKの入手法とインストールおよびコンパイルを含む動作確認について述べている。
MEMの導入について解説
数値計算およびMEMのカスタマイズに必要最低限の知識を述べる。デザイン・パターン,オブジェクト指向等に関しては極力,観念的な話は避け,あくまで,科学者,技術者の研究に応用できる実践的な,Javaプログラミングの基本構造・文法について述べている。
JavaのMLおよびSUNのJava関連サイト,ウェーブレットの情報源,医学関連の情報データベースであるPaperChaiseの利用方法について解説。
第2章 "連続ウェーブレット変換"
まず,実際に,データをMEMの連続ウェーブレット変換で操作して,連続ウェーブレット変換を体験していただく。概念の理解への早道と考えたからである。
次いで,概念の模式を使い説明し,理論式を示し, 代表的なウェーブレットに関して,式から実装までを丁寧に解説する。相対的なスケールから,各々のウェーブレットで周波数を特定する方法についても解説する。
第3章 "離散ウェーブレット変換"
離散ウェーブレット変換の理論を,Daubechiesの直交ウェーブレット理論で展開し,その構成法について,解説し,Javaでの実装について述べている。
読者は,何を理解すれば良いか,何を理解しなくて良いのかを明確に指摘した。多重解像度解析とトゥー・スケール関係,直交性を理解していれば,十分である。また,補間画像表示アルゴリズム(interpolatory graphical display algorithm)は,本書のために,著者が新たに,実装し,公表したものであり,双直ウェーブレット変換を学ぶ際にも,役立つものと考える。MEMでの離散ウェーブレット変換の表示方法および利用方法をサンプルデータを使って解説。
第4章 "ウェーブレット パケット変換と最良基底アルゴリズム"
MEMでのウェーブレット パケット変換および情報エントロピー,Gauss-Markov,理論次元などをコストとする情報コスト関数に基づく最良基底アルゴリズムについての使用方法を,サンプルデータを使い,実際に,MEMを動かしながら解説。
第5章 "ウェーブレット・パケット解析の心電図への応用"
この章では,ウェーブレット・パケット解析と,情報量をコストとする最良基底アルゴリズムの実際の応用について,心電図の波形の解析を通じて,学ぶ。MEMでは,スクロール・バーにより,連続ウェーブレット解析,離散ウェーブレット変換,ウェーブレット・パケット解析を連動させることが可能である。連続ウェーブレット解析や多重解像度解析も併用し,生の信号では,認識が困難であったp波の存在を確認する。各々の解析の利点と欠点についても解説。
第6章 "ウェーブレット解析よりみた平均加算化心電図"
この章では,平均加算化心電図(SAECG)の解析を通じて,連続ウェーブレット変換,離散ウェーブレット変換,ウェーブレット・パケット解析および情報コスト関数のMEMでの使用法について,具体的に述べる。総合的な使用法を読み取っていただき,その結果を,如何に解釈するのかを理解していただく。また,理論次元を指標とし,分解レベルのウェーブレット係数の標準偏差の倍数を,閾値とするノイズ処理も,併せて,紹介する。
第7章 "ウェーブレット解析からみた心拍変動"
この章では,第8章で解説するFFT,最大エントロピー法,AICやMDLなどの情報基準を指標とするモデル同定や,連続ウェーブレット変換,ウェーブレット・パケット解析を,日常の臨床で,施行されている心電図のR-R間隔の測定のデータを例に挙げて,解説している。
従来,ヒストグラムとトレンドを描画し,標準偏差など,簡単な統計処理をしただけで,打ち捨てられていたデータに,ウェーブレット解析や,情報理論の光をあてることで,臨床上,重要な情報が,如何に,多く得られるか実感していただければ,幸いである。
第8章 "FFT,MEM,Cosinor"
この章では,従来の時系列解析で,行われてきた,FFT,MEM, コサイナー法,AIC,FPE, MDLなどの情報量規準を指標とするモデル同定について理解するとともに,MEMの総合的な使用方法を読者は学ぶことができる。
時系列解析に必要と思われる,高速フーリエ変換(FFT),最大エントロピー法などのスペクトル解析について,解説し,実装する。
コサイナー法に関連して,入力信号を,周期の異なる幾つかの余弦波の組み合わさったものと考え,最少二乗法で,これを求める方法を,MEMの実装と併せて解説。
実際の24時間血圧自動測定装置による血圧変動をウェーブレット・パケット解析と情報コスト関数を用いて解析する。従来,考えられてきた,余弦波と擬似乱数の和のサンプルは,現実の血圧変動をシュミレーションしていないと考えられる。
付録 "二次元ウェーブレット解析"
二次元ウェーブレット解析は,今後,画像処理の分野で,次世代の重要な方法となってくると思われので,基本的な理論を解説し,基礎となるソース・コードについて公開・解説
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