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月刊レジデント11年3月号
レジデント3月号 SOLD OUT

2011年2月10日発売 AB判
価格:本体2,000円+税
ISBNコード:978-4-287-81036-1
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特集急性期 代謝・栄養管理
企画編集/ 行岡哲男
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特集 特集 連載 連載
 日常診療において,患者が「お腹が空いた」と言いだせば, なんとか乗り切ったと実感するときがあるだろう.人間だれしも急性期は食欲が落ちる.ヒトが動物だったころ,傷ついたときは洞穴のなかでじっとそれが癒えるのを待ち,幸いにして治れば,またエサを取りに出かけていったことであろう. このときヒトの身体のなかでは,侵襲とそれに対するさまざまな生体反応が起きているが,重症であればあるほど,そこに栄養の介在する余地は少なかったと思われる.かつて,急 性期は原疾患の診療が優先され,代謝・栄養管理が省みられ ることが少なかったことには,そんな背景があるのかもしれない.しかし今日では,急性期の代謝・栄養管理が積極的に 試みられている.異化亢進に象徴される代謝過程の変容や,その背景にある液性因子・神経系の調整に対する理解の拡大 が,単に必要な基質の補充に留まらず,急性期の生体反応や宿主の免疫応答を修飾する企てを推し進め,栄養療法に薬理 学的な役割を担わせるようになったのである.
 2009 年にAmerican Society for Parenteral and Enteral Nutrition(ASPEN) とSociety of Critical Care Medicine (SCCM)が発表した重症患者の栄養管理ガイドライン1, 2)は, この分野における最も重要なエビデンスであろう.日本でも, 急性呼吸不全による人工呼吸患者の栄養管理ガイドラインが 報告され3),代謝・栄養管理に対する関心と期待の高さをう かがうことができる.とくに,特定のアミノ酸や魚油などの 強化された免疫栄養療法(immunonutrition)や,積極的な インスリン投与(intensive insulin therapy)による厳格な 血糖管理が,注目されるトピックスである.しかし一方で, 前者はアルギニンを多く含む免疫強化栄養が敗血症患者の死 亡率増加を招き,また後者は国際的大規模研究による追試で 低血糖の合併症が目立って,やはり治療群の死亡率増加が報 告されるなど,その評価は確実なものではなく,楽観視でき ない状況も見受けられる.
 そのように,新たな局面を迎えつつある急性期の代謝・栄 養管理は,あらゆる疾患に影響を与え,毎日の診療のなかで 意識するとしないとにかかわらず,重要な地位を占めつつあ る.各科をラウンドするレジデントは,それぞれの診療科に おける特異な診断・治療法を学びつつも,すべての患者に共 通する課題として,栄養管理の習熟が求められている.本特 集では,急性病態における代謝の変動を理解し,それを管理 する具体的な方策を知るために,各方面から専門の先生方に 執筆をお願いした.本特集が急性期の患者診療に携わるレジ デントの,頼もしい指針となることを願っている.
行岡哲男
(東京医科大学 救急医学講座 主任教授)
特集急性期 代謝・栄養管理……企画編集/行岡哲男
目 次
【I. 総論】
1. 急性期の代謝変動……鈴木宏昌
2. 栄養評価……小谷穣治 他
3. 輸液療法……阿南英明
4. 経腸栄養……河井健太郎 他
5. 免疫栄養……鍬方安行 他
6. 微量栄養素……小泉健雄
【II . 各論】
1. 重症感染症……松尾信昭 他
2. 急性肺障害……今井 寛
3. 肝不全……貞広智仁 他
4. 急性腎不全/ 急性腎障害……松本 博
5. 重症急性膵炎……真弓俊彦
6. 広範囲熱傷……池田弘人


連載
◆主要徴候別ER診療の実際
……企画・司会/三宅康史
  ・第24回 軽症頭部外傷の管理……望月由武人
◆ヤバレジ〜だれもが最初はヤバレジだった〜……監修/岡田 定
  ・第12回 虚血性心疾患入門
   〜先生,ST が上がっています!〜 
  ・ヤバレジ脱出チェックシート……水野 篤
◆患者さんとの接し方
  ・第31話 診察の意義を見直そう……星野達夫
◆基本臨床手技
  ・第22回 ドレーン・チューブ類の管理……寺島裕夫