HOME雑誌レジデント > レジデント11年12月号
月刊レジデント11年12月号
レジデント12月号 SOLD OUT
11年11月10日発売
AB判144頁
価格:本体¥2,000+税
ISBNコード:978-4-287-81045-3
全ページカラー印刷
特集腹部診療に欠かせない“救急腹部エコー検査”のポイント
企画編集/竹内和男
画像をクリックするとサンプル(PDF)をご覧いただけます
特集 特集
 腹部のエコー検査(US)は“腹部の聴診器”といわれて久しい.6年前に始まった「新臨床研修制度」でも,研修医がみずから施行して検査所見を解釈できなければならない臨床検査のひとつとして,動脈血ガス分析,心電図検査に加え,腹部のUSが挙げられている.しかし現実は厚労省の高邁な理念・方針とは裏腹に,その成果は遅々としている.それどころか残念なことに研修医のUS離れすら起こっている昨今である.とくに初期臨床研修医が多く集まる大病院では,この傾向が強いように感じている.これは個々の病院におけるUSの教育体制にも問題があるが,USはみずから探触子を握って走査をしなければならず,描出技術と診断能力が問われる検査だからだといえる.つまり,研修医やレジデントにとって検査を身につけるうえで最初のハードルが高いのである.他方,日常診療におけるCTやMRI検査には,このような面倒くささはない.オーダーすれば1両日中に放射線科医によるレポートが戻ってくる.しかし,分を争う救急の現場では,これでは役立たないことは明白である.
 USは,今や腹部の診療に欠くことのできない当たり前の検査である.腹腔鏡下胆嚢摘出術ができない外科医が,今や胆嚢の手術ができなくなってしまったように,USができない医師は,日常診療の現場でも,救急の現場にあっても,窮地に立たされることは間違いない.現在の研修先の大病院では夜間にCTやMRIが緊急で撮れるかもしれないが,初期研修を終えたあとに許されるアルバイト先の小規模の病院では,夜間CTは撮影できない.しかし,そこには必ずUS装置は備わっているはずである.
 話は変わるが,最近,ポケットに入る携帯型US装置が発売された.重さは400 gほどである.画面は3.5インチと小さいが,得られる画像は良好で,カラードプラも可能である.また,容易に起動できて,すぐに検査することが可能である.小型化,高性能化は時代の流れであり,これまで以上にUSが救急外来や在宅診療,あるいはベットサイドで欠くべからざる検査となることは間違いない.とりわけ救急の現場では,かなり有用なモダリティーとなると思われる.
 前置きが長くなってしまったが,本特集では外来診療やERにおいて,急性の腹部症状で来院した患者に対し,USを施行する際に最低限知っておかなくてはならない各種疾患・病態を取り上げ,診断のコツとポイントを解説する.急性胆嚢炎,急性膵炎,尿管結石などcommon diseaseはもとより,救急外来で意外と多く遭遇する消化管疾患にも焦点を当てた.消化管疾患の診断は,なんといっても内視鏡検査が主役である.しかし,急性虫垂炎,大腸憩室炎,イレウスなどのように,内視鏡が適応とならない消化管疾患があることも事実である.また腹痛を訴える患者に,いきなり内視鏡検査というわけにはいかない.このような際にUSは有用な情報を与えてくれる.ぜひ,消化管USに精通して診断に役立てたいものである.一方,腹部の救急では消化器領域だけでなく,他領域の疾患についてもある程度精通しておく必要がある.その意味で,腎尿路を含めた泌尿器疾患,女性では常に念頭に置かなければならない産婦人科疾患,腹部症状を呈する循環器疾患,そして小児の腹部救急疾患についても取り上げた.各種疾患については,典型的なUS像を正常像と対比したうえで,US所見の特徴とポイントを理解しやすいようにした.また,他の画像診断所見や疾患概念,あるいは治療など臨床的事項についても言及していただいた.執筆は,多忙な臨床の現場においてもみずから探触子を手に取り,USを活用しているエキスパートにお願いした.
 本特集がERや救急外来に備えられ,US診断の際にリファレンス・ブックとして役立つことを期待する.
竹内和男
(虎の門病院 副院長,消化器内科 部長)
特集腹部診療に欠かせない“救急腹部エコー検査”のポイント
………………………………………………………………………企画編集/竹内和男
目 次
1. 腹部外傷/佐藤通洋
2. 胆道疾患/岡庭信司
3. 膵臓疾患/藤本武利 他
4. 肝・脾疾患/佐々木勝己
5. 消化管疾患1:腸閉塞,腸重積症/森 秀明
6. 消化管疾患2:腹痛をきたす大腸・虫垂疾患/若杉 聡
7. 消化管疾患3:AGML,アニサキス,胃・十二指腸潰瘍,消化管穿孔/長谷川雄一 他
8. 消化管疾患4:急性腸管虚血/竹内和男 他
9. 腎・尿路疾患/石塚 修 他
10. 産婦人科疾患/市塚清健
11. 血管性疾患/鈴木真事
12. 小児の腹部救急疾患/余田 篤

連載
◆患者さんとの接し方
  ・第40話 非言語的メッセージの大切さ-大臣の舌禍辞任に学ぶ ………星野達夫
◆ヤバレジ-だれもが最初はヤバレジだった- ………監修/岡田 定
  ・第21回 全身倦怠感-もう,何にもやりたくない-
  ・ヤバレジ脱出チェックシート………小林大輝
◆慶應循環器内科カンファレンス
  ・第5回 左冠動脈主幹部を含む3枝病変の治療………監修/河村朗夫・司会者/前川裕一郎
◆主要徴候別ER診療の実際 ………企画・司会/三宅康史
  ・第32回 研修医の知っておくべき疼痛管理と鎮静 ………長谷洋和