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月刊レジデント14年1月号
レジデント1月号
15年12月10日発売
AB判128頁
価格:本体¥2,000+税
ISBNコード:978-4-287-81094-1
全ページカラー印刷
特集“かぜ”くらい診られますよ って本当ですか?
企画編集/岸田直樹
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 “かぜ”は救急外来や内科外来で最もよく出会う疾患だが,その病名が良くも悪くも適当に使われていることがある.なぜそのようなことが起こっているか? にはいくつか理由がある.1つ目は,かぜかどうかは臨床判断であって,医療機関を受診してもかぜを引き起こしているウイルスのほとんどは同定することができない.よって,本当にかぜかどうかについて医師は100%確信を持ってはいえていないというのが事実である.2つ目に,かぜの大きな特徴に多症状がでるというものがある.その性で,どんな症状でもかぜによる一症状の可能性があるようにみえるし,風邪を定義してきちんと分類する努力をしていないとなんでもかぜにみえてくる.このような背景からかぜは医師にとっても患者にとってもなんともいえない曖昧な疾患となる.するとちょっとよくわからないときに「かぜですね」というと良くも悪くも患者が納得してくれるものだから,よく分からない場合はかぜといっておけばうまくまとまると思っている医師も少なからずいる印象である.私も最初はそう思っていた.こうなってしまうと重篤な疾患がまぎれても気がつかなくなってしまう.
 また,かぜ診療では治療から予防まで明確にエビデンスのあるものはきわめて限られる.とくにかぜ薬を『かぜを引き起こすウイルスに共通の抗ウイルス薬』と定義した場合には,そのような薬は存在しないし,もし作ることができたらノーベル賞ともいわれるが,そんなことも一般の方は知らない.かぜウイルスに万能な抗ウイルス薬はないが,対処療法の薬があるだろうと思われる方もいるかとは思うが,かぜの症状に明確に効果のある薬は実はいまのところほとんどないし,なによりそれらをより早期に飲んだからといって,こじらせないということもないのであるが,こういったことも医師でも知識があいまいである.つい「はやめに飲みましょう」と特効薬として効くかのように処方するため,一般の方もそれらを期待して飲んでいる.そして診察時に「本当にかぜなのか?」という雰囲気になると医師も患者も心配になり,つい抗菌薬を「よくなったらやめていいですよ」などといい処方するが,そのような途中で自己判断で止めてもよい抗菌薬処方というのは原則存在しない.
 このように,かぜは最もよくある疾患にもかかわらず,適切なマネジメントがされず,適切な情報が患者にも伝わっていない.ぜひこのような現状を打破するひとりに皆さんもなってほしい.というのもこのようなかぜ診療ではいくつもの弊害がある.①かぜという病名で実は…という誤診をみかける,②かぜという病名なのに抗菌薬の使用をみかける,③かぜの症状に薬をたくさん出してしまう,④かぜの予防にさまざまな非効果的手法が行われている(ビタミンの乱用,空間除菌など),などである.
 患者にかぜに対する対処法を医師として提供できるようになってほしい.その結果国民ひとりひとりがセルフケアも1 つの選択肢として考えられるようになることは,救急外来のコンビニ受診など日本の医療問題の解決に向けた大きな進歩の1つになると思う.研修医の皆さんもその普及に協力してほしい.
岸田直樹
(総合診療医・感染症医/ 感染症コンサルタント/ 一般社団法人
Sapporo Medical Academy〔SMA〕代表理事)
特集“かぜ”くらい診られますよ って本当ですか?
1. かぜとは? 典型的風邪型(咳≒鼻≒喉)/岸田直樹
2. はな症状が強い場合(鼻>咳,喉)/永田理希
3. のど症状が強い場合(喉>咳,鼻)/川島篤志 他
4. せき症状が強い場合(咳>鼻,喉)/佐藤泰吾 他
5. やや遷延する咳(3 週間以上続く咳)/亀井三博
6. 小児のかぜ診療の特徴とピットフォール/荘司貴代
7. 妊婦・授乳婦のかぜ診療の特徴とピットフォール/柴田綾子
8. 高齢者のかぜ診療の特徴とピットフォール/藤田崇宏
9. かぜとインフルエンザ(抗インフルエンザ薬のエビデンスと使い方)/具 芳明 他
10. かぜに使う西洋薬の種類とそのエビデンス/上田剛士 他
11. かぜに使う漢方薬の種類と使い方/小池 宙
12. かぜの予防に関するエビデンス/藤谷好弘



連載
◆患者さんとの接し方
 ・第89話 よい臨床医とは? 白衣式で贈られたことば………星野達夫
ピンチの研修医………編集/岡田 定
 ・第16回 意識障害への対応………矢崎 秀
◆みるみるわかる心血管のはなし
 ・第10回 動脈硬化はどこでわかる?
  →脈波検査,頸動脈エコー,動脈造影などの紹介と慢性期の治療………田宮栄治・村川裕二
◆慶應循環器内科カンファレンス………監修/福田恵一
 ・第50回 ヘパリンブリッジを通して循環器内科のコンサルを真剣に考えてみる………香坂 俊
◆Toxicovigilance−毒を診る−……監修/水谷太郎
 ・第30回 石油製品………阿部智一