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レジデント12月号
AB判112頁
価格:本体¥2,273+税10%
ISBNコード:978-4-287-81122-1
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特集救急外来で役に立つ皮膚診療の極意
企画編集/出光俊郎
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 救急の現場では,第一印象,経験,勘,すなわち視覚で判断することが少なくない.一般に救急現場における些細な皮膚の変化は原疾患の治療で軽快・消失するために注目されず,また,重症で死亡するような疾患に付随する皮膚症状も救命処置優先と見逃されて認識されない.しかし,注意してみていくと皮膚や粘膜症状には救急現場においてさえも診断や治療へのヒントが隠されていることも少なくない.たとえば,発熱,体幹の紅斑,丘疹,多臓器障害の場合,腋窩や下腹部に刺し口が発見されればそれでツツガムシ病の診断が可能となり,適切な治療を選択しうる.
 視診は思ったよりも難しい.網膜に投影されてもほとんど意識しないと見えないといったほうがいいだろう.見えない人には見えない…….見ようとしない人には見えないのである.救急患者が搬送されて「酸素!ルート確保!モニター!」とめまぐるしく初療が進むなか,皮膚をしっかり見ている暇はないと思いがちである.しかし,一瞬でも皮膚をしっかりと見る習慣がついていると多くの情報が得られる.まさにここで,臨床の眼力,実力の差が出るのである.結節性紅斑から腹痛・下血の原因が炎症性腸疾患であるとか,脳梗塞の原因が血管炎であるとか,また,意識障害の原因がペラグラに伴うWernicke 脳症であることなどが皮膚の診察からも可能になる.ふと考えると,あるいは振り返って考えるとその原因を推測できる皮膚症状にあたることも少なくない.
 また,口腔粘膜症状も見落としやすい重要な部位である.とくに歯肉出血や口腔内血腫は凝固異常や白血病など出血傾向を示唆するために緊急度が高い.出血壊死を伴う口唇びらんはStevens-Johnson 症候群の診断上重要な徴候である.重症な口腔カンジダ症があればエイズや糖尿病,ステロイド内服などによる免疫不全を考える.口腔アフタと下血があればベーチェット病や炎症性腸疾患の可能性がある.また,クローン病の腸管外病変も口腔にみられることもある.このように皮膚ばかりではなく,口腔粘膜にも診断のヒントが詰まっているので見落とさないようにしたい.
 皮膚のみかたでは,基本的に紅斑,紫斑,水疱,潰瘍を覚えておくと危険な皮膚のサインを読み取ることができる.さらに,他の医療スタッフが注目しないところにも目を配るとよい.たとえば意識障害の搬送患者で背部に真っ黒い壊死がみられ,ガス壊疽とわかることもある.したがって,意識障害のある患者では見逃しやすい背部〜臀部や下肢後面もおっくうがらずに見ておく必要がある.さらに注意深く診て考えれば,不可解な皮膚病変や家族の態度から虐待を発見できるかもしれない.
 このように臨床医としてのスキルを磨くためにも細かな皮膚の変化にも気を配る姿勢が必要である.救急では患者からの情報量が少ないために,みためで診断することになるが,思いのほか,皮膚は雄弁に語っているのである.
出光俊郎
(自治医科大学附属さいたま医療センター 皮膚科)
特集救急外来で役に立つ皮膚診療の極意
1. これだけは見逃せない危険な薬疹の徴候/平原和久
2. アトピー性皮膚炎患者の悪化で鑑別すべきこと/宮野恭平
3. 救急に来る水疱の鑑別疾患はたくさんあって難しい/宮川 史
4. 顔面の腫脹には緊急度が高い疾患がある/寺木祐一
5. 壊死性軟部組織感染症の早期診断と治療について/盛山吉弘
6. 救急で役立つ糖尿病患者の皮膚所見のみかた/中西健史
7. 救急でみる膠原病・血管炎/小寺雅也
8. 口腔所見から考える救急疾患/神部芳則・中村知寿
9. 蕁麻疹・血管性浮腫・アナフィラキシーショックまで/森脇昌哉・田中暁生
10. 自宅で動けなくなって搬送される高齢救急患者の皮膚障害のみかた/三井 広
11. 救急受診の消化器疾患を見抜く皮膚のサイン/大塚幹夫・山本俊幸
12. 抗凝固薬投与中の高齢者でみられる皮膚症状/梅本尚可

連載
◆患者さんとの接し方
 ・第117話 decide on the kindest level-患者さんには親切に……星野達夫
◆ヨルレジ……編集/森 信好
 ・第19回 夜間に出会うアレルギー……池田行彦
◆慶應循環器内科カンファレンス……監修/福田恵一
 ・第74回 大動脈基部に限局した大動脈解離再発の1例……荒井 隆秀