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レジデント第131号
AB判96頁
定価2,500円(本体2,273円+税10%)
ISBNコード:978-4-287-81131-3
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特集その輸血,大丈夫ですか?
企画編集/長谷川雄一
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 輸血医療は,17世紀の頃の異種(ヒツジからヒト,イヌからヒト)輸血に始まり,暗黒の時代を含めると長い歴史のある治療法です.しかし,安全な治療としての輸血は,1900〜1902年のABO式血液型の発見,1915年の輸血用抗凝固剤クエン酸Naの開発,そして第一次世界大戦(1914〜1918)での使用を経て,初めて世界に広がっていきました.
 現代は輸血なくして安全な医療を提供できない,とするのが多くの医療者の認識だと思います.一方で輸血はあまりにも普通に行われ,ただ単に不足した血液を補充する治療法,と思われている方も多いと思われます.しかし,現代の輸血はたかだか100年の歴史しかない医療技術です.この間には,輸血後肝炎の抑制,HIVウイルスの検出と回避,移植片対宿主病の予防など,原因がわかりそれを抑え込むことに成功した(あるいは成功しつつある)問題もありますが,解決していない臨床疑問(clinical question:CQ)もたくさん残っています.
 しかし,私達は現時点でのベストな解答を知って,治療に向かう必要があります.輸血を開始する閾値(トリガー値)は,たくさんの臨床研究の中から導かれてきました.感覚による輸血開始も一面で正解を出すこともありますが,それだけでは医療者として患者の回復に貢献できないことも多いと思われます.本書が,皆さんのスキルアップと医師としての貢献につながることを期待しています.
 また,日本は急速な人口構成の高齢化をきたしています.輸血医療はまだ健康なヒトからの献血を拠り所としています.高齢化社会は,血液使用者の比率が有病率の高い高齢者に多くなることから,人口当たり血液使用量が増加することが予測されています.一方で,若年比率の低下と若年者の献血率の低下は顕著であり,輸血医療は不安定な需給バランスの上に存在していることも忘れてはなりません.私達は,正しい医療を行うことで献血者の善意に応える必要があります.血液製剤を無駄にすることはできません.
 ちょうどこの文書を書いている現在,新型コロナウイルスによる活動自粛要請もあり,献血者は減り血液供給は逼迫しています.医療者が適正輸血をすることで,必要な患者には適切に血液製剤が供給され,不必要な方には輸血を避ける知識を持ち,献血から輸血までの体制が維持されることを希望しています.
長谷川雄一
(茨城県立中央病院内 筑波大学 茨城県地域臨床教育センター 教授)
特集その輸血,大丈夫ですか?
1.赤血球輸血:適正使用のための基本事項/長井一浩
2.血小板輸血のメリット,デメリット/藤原慎一郎
3.新鮮凍結血漿使用のメリット,デメリット/長谷川雄一
4.クリオプレシピテートの利用/藤田 浩
5.アルブミンの使用:メリットとデメリット/安村 敏
6.小児に対する輸血の注意点/北澤淳一
7.大量出血患者への輸血戦略/宮田茂樹
8.やりっぱなしにしない輸血/加藤栄史
9.輸血を行う際の留意点/西村滋子
10.不適合輸血,どう対応するべきか/竹下明裕,山田千亜希,小幡由佳子
11.自己血輸血/横濱章彦