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136号
レジデント第136号

AB判112頁
定価2,500円(本体2,273円+税10%)
ISBNコード:978-4-287-81136-8
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特集研修医が知っておくべき災害医療の知識

企画編集/本間正人
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 「天災は忘れた頃来る」は物理学者,随筆家の寺田寅彦が残した名言といわれている.阪神・淡路大震災,東日本 大震災,熊本地震,木曽御嶽山噴火をはじめとする地震, 津波,火山噴火などに加え,近年の温暖化の影響を受け豪 雨災害,浸水・土砂災害も頻発している.天災が忘れる前 に来る状況である.くわえて,我が国では福島原発事故や 地下鉄サリン事件のCBRNE 災害も経験している.国際会議やオリンピックなどのイベントが行われ,また本原稿を 執筆している今,ロシアとウクライナが戦闘状況にあり, 北朝鮮の大陸間弾道ミサイル発射や核実験が危惧されているさなかに韓国では新しい大統領が就任し,バイデン大統領が来日する.「日本の国土全体が一つのつり橋の上にかかっているようなもので,しかも,そのつり橋の鋼索があすにも断たれるかもしれないというかなりな可能性を前に 控えている」(寺田寅彦)状況は現在でも変わらない.
 災害対応は連鎖を引っ張るようなもので,最も弱い鎖が 切れ,その切れた鎖を強くするとつぎの鎖が切れる.さらにその鎖を強くするとまた別の鎖が切れる.阪神・淡路大震災では,初期医療体制の欠如で鎖はすぐに切れた.多く の基幹病院が被災し,災害拠点病院が整備された.中越地震では医療チームの参集が十分でなく,DMATや広域医療搬送が整備された.東日本大震災では避難所での対応が遅 れ,中長期における医療提供が課題となった.多くの医療 機関が機能を失い,BCPの整備が喫緊の課題とされた.熊本地震では車中泊をする被災者も多く,いわゆるエコノミー 症候群による死亡が多発し避難所での環境整備や医療介入が課題となった.福島原発事故や最近の災害では災害と放 射線災害や新型コロナ感染症と複合災害対応が求められた.
 9.11同時多発テロのあと世界医師会は「災害対策と医療の対応に関するモンテビデオ宣言」を採択し専門分野にか かわらず「標準能力」を推進することが強調された.米国医師会は,心肺蘇生と災害対応の知識能力はすべての医師 が持つべき能力とし,専門領域にかかわらず災害医療につ いて一定の研修を受ける必要性を強調しADLS(Advanced Disaster Life Support),BDLS(Basic Disaster Life Support),CDLS(Core Disaster Life Support)の3つのプログラムを用意した.
 『医師臨床研修指導ガイドライン─2020年度版─』において,研修医の到達目標として「社会における医療の実践 災害や感染症パンデミックなどの非日常的な医療需要が起 こりうることを理解する/備える/対応する」が記載されている.
 本特集では,災害対応の第一線で取り組んでいる方々を筆者として,最近の知見やレジデントが知るべき最低限の 知識・技術の観点から執筆を依頼した.さらに,各個人の 関心度に応じて生涯研修ができるように災害研修会の情報を執筆いただいた.1 人でも多くの医師が,我が国の災害に対する蓋然性を理解し,災害対応に対する興味を示し, 多くの命が救われることを祈願する.


本間正人
(鳥取大学 医学部 救急災害医学分野 教授/ 同附属病院 高度救命救急センター長)

特集研修医が知っておくべき災害医療の知識
1.総論─レジデントに求められる災害医療の知識─/大友康裕
2.災害医療の基礎知識─MIMMSから─/森村尚登
3.DMAT隊員になるためには/小井土雄一
4.CBRNE災害/阿南英明
5.災害時のトリアージと診療─理論と実践─/森野一真
6.ロジスティクス・EMISを理解しよう//富永 綾,眞瀬智彦
7.自衛隊との連携,広域医療搬送と艦船の医療/小森健史
8.がれきの下の医療─その理論と実践─/井上潤一
9.健康危機管理で求められる能力とは─日本の災害医療の変遷から紐解く─/近藤久禎,赤星昂己
10.病院災害計画と訓練─BCPを極めよう─/堀内義仁
11.被ばく医療─レジデントが知るべき最低限の知識─/長谷川有史