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BEAUTY 18年創刊号
消化器内科 第17号(Vol.3 No.4,2021)

2021年3月25日発売
A4変型判/96頁
定価4,400円(本体4,000円+税10%)
ISBNコード:978-4-287-92017-6

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特集●IBDの診断と治療

企画編集/渡邉 守
(東京医科歯科大学 学術顧問・副学長(特命担当)/高等研究院 特別栄誉教授)
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 潰瘍性大腸炎やクローン病に代表される炎症性腸疾患(IBD)は,日本における患者数増加が著しく,現在では潰瘍性大腸炎22万人,クローン病7万人と,炎症性腸疾患全体で30万人を超える患者数と推定されている.したがって,IBDはこれを専門としない消化器医も診療する機会が増え,すべての消化器医が診断,治療についてよく理解しなくてはならない疾患となっている.
 IBDにおいては,TNF-α阻害薬治療の登場により,治療目標に大きな変化が起こった.これまでの治療目標であった「短期間の臨床症状の改善」は過去のものとなり,「粘膜治癒」,すなわち内視鏡などでの寛解が,慢性疾患の経過を変えられるという考え方が出て,治療目標は劇的に変わった.その結果,次々に登場するIBDに対する新薬の治療目標も「粘膜治癒」に大きくシフトした.
 この時代にあって,たとえば,ますます選択肢が増えた内科治療,特に生物学的製剤に代表される新規薬物治療,新規IBD薬物治療を理解する上で必要な病態の理解,診断基準などの診断の基礎,疾患活動性評価のためのバイオマーカー,小腸内視鏡検査など新規画像診断の理解など,知っておくべきことは多くなっている.さらに,IBDでは,一度薬物治療が開始された場合でも,適切な時期に適切なモダリティを用いて疾患活動性を評価し,その結果によっては,現在の治療の最適化や他剤への切替を行う必要がある.また,治療については,高齢患者や小児例では特別な注意点があり,妊娠例についても妊娠転帰への影響を考え,場合によってはより積極的な治療が必要となってくる.さらに,長期経過例が増えることにより,今後ますます問題となると思われるがんサーベイランスについても知識が必要である.
 IBDほど,病気を起こす仕組みがわかってきて,ごく一部の治りにくい患者に対しても,新規治療法が次々に開発されている疾患は少ない.患者に対しては,難病といって落ち込むことなく,逆に調子が良いからといって油断して薬を飲まなくなることなく,正確な情報に基づく正しい病気と治療への理解により,まったく普通の生活を送っていただきたいと願っている.そのためには,この病気を専門とする臨床の医師,新しい治療を開発している研究の医師には,新しい時代を作ってほしいと期待している.
 本特集は,日本のIBDのトップランナーの先生に執筆をお願いした.その内容を理解することで,現在および将来のIBD診断や治療を理解できるようになり,特に難治例については,適切なタイミングで専門施設へ紹介されるようになることを期待したい.すべてのIBD患者において適切な診断,疾患活動性評価,および積極的で適切な治療選択が行われ,予後が改善されることに本特集が寄与することを期待したい.その上で,次世代の臨床医には,日本における細やかな臨床,卓越した内視鏡技術,「クリニカル・サイエンス(臨床医が主導する基礎研究)」を融合させ,日本から世界をリードする研究を発展させていってほしいと切望する.
 

渡邉 守
東京医科歯科大学 学術顧問・副学長(特命担当)/高等研究院 特別栄誉教授


1. 炎症性腸疾患の病態/仲瀬裕志
2. 潰瘍性大腸炎の診断基準と鑑別診断/三好 潤,松浦 稔,久松理一
3. クローン病の診断基準と鑑別疾患/平井郁仁
4. クローン病における小腸画像診断/渡辺憲治
5. 炎症性腸疾患の活動性モニタリング/飯島英樹
6. 潰瘍性大腸炎の内科治療の原則/猿田雅之
7. クローン病の内科治療原則/松岡克善
8. 炎症性腸疾患の既存治療 -5-アミノサリチル酸製剤(5-ASA製剤),ステロイド製剤,チオプリン製剤-
田中敏宏,長沼 誠
9. 炎症性腸疾患の新規薬物治療 -生物学的製剤およびJAK阻害薬-/清水寛路,長堀正和
10. 炎症性腸疾患の外科治療とがんサーベイランス/堀尾勇規,池内浩基,内野 基
11. 炎症性腸疾患患者における妊娠・出産/渡辺知佳子
12. 小児・高齢者における炎症性腸疾患治療
穂苅量太,東山正明,成松和幸,秋田義博,染村 祥,高本俊介