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BEAUTY 18年創刊号
消化器内科 第18号(Vol.3 No.5,2021)

2021年4月26日発売
A4変型判/96頁
定価4,400円(本体4,000円+税10%)
ISBNコード:978-4-287-92018-3

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特集●食道胃接合部癌の診断と治療

企画編集/瀬戸泰之
(東京大学医学部附属病院 病院長)
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 食道胃接合部癌,特に腺癌が世界的に増加していると推測されているが,その診断や治療については,いまだ議論が多いところである.そもそも食道胃接合部とは,解剖学的には,粘膜が扁平上皮から円柱上皮に変わるところであり,また環境も胸部(陰圧)から腹部(陽圧)と大きく変わる部位に位置しており,その意義からして興味深いところである.おそらくは,胃酸逆流を防ぐような生物学的にも重要な意味がある部位と考えている.
 日本では,西分類にもとづき食道胃接合部の上下2cm以内を食道胃接合部領域とし,その領域に中心をもつ癌腫を食道胃接合部癌と呼んでいる.しかしながら,名称が食道胃接合部癌としてまとまったのは比較的最近のことである.癌取扱い規約において,食道癌取扱い規約第2版(1972)では「食道噴門接合部癌」,胃癌取扱い規約第12版(1993)では「食道胃境界部領域癌」と呼称されていた.「食道胃接合部癌」となったのは,食道癌取扱い規約では第5版(1976),胃癌取扱い規約では第14版(2010)である.ことさら,食道癌でもなく,胃癌でもなく呼称しようとしたのは,この領域に発生した癌が独特の生物学的特性を有するのではないか,とすれば独立した疾患単位として考えるべきではないかとの議論があったからである.ちなみに,胃癌取扱い規約第13版(1999)では,種々の検討を重ねた結果,「噴門部領域の癌を特定の領域癌とする見解は否定しないものの,規約上の取扱いとしては癌の占拠部位の1つとして独立させない」ことにした,と記述されている.残念ながら,世界的に食道胃接合部に特化した疫学的数値が乏しく,その動向の詳細は不明であるが,世界が関心を抱いていることも間違いない.
 PubMedでkey word検索すると,論文数としてesophago-gastric junction(EGJ) cancerでは,4,066本,一方,gastro-esophageal junction(GEJ)Cancerでは5,138本で,意外に後者のほうが多いのである.世界的には「胃食道接合部癌」とするのが趨勢のようである.いずれにしても名称からして世界的にも統一されていないことがわかる.
 本特集では,歴史,疫学,分類,解剖から,診断,病理,治療,予防までひろく取り上げている.この領域に関する読者の方々の理解が一段と深まり,かつ日常診療の一助となれば望外の喜びである.
 

瀬戸泰之


【消化器内科18号についてのお詫びと訂正】

1. 食道胃接合部をめぐる歴史/三隅厚信,瀬戸泰之
2. 食道胃接合部癌の疫学/山下裕玄,瀬戸泰之
3. 食道胃接合部癌の分類/菅野健太郎
4. 食道胃接合部の解剖/隈本 力,中村達郎,倉橋康典,石田善敬,篠原 尚
5. 食道胃接合部の内視鏡診断基準/吉永繁高,小田一郎
6. 食道胃接合部癌の生物学的特性 -病理の立場から-/浦辺雅之,牛久哲男
7. 食道胃接合部癌に対する内視鏡治療/井上貴裕,石原 立
8. 食道胃接合部癌に対する外科治療 -食道外科の立場から-/野間和広
9. 食道胃接合部癌に対する外科治療 -胃外科の立場から-/黒川幸典,江口英利,土岐祐一郎
10. 食道胃接合部癌に対する薬物治療/中山厳馬,陳 剄松
11. 食道胃接合部癌に対する放射線治療/秋元哲夫
12. 食道胃接合部癌の予防・早期発見/栗林志行,草野元康,浦岡俊夫