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月刊糖尿病 120号
消化器内科 第19号(Vol.3 No.6,2021)

2021年5月25日発売
A4変型判/96頁
定価4,400円(本体4,000円+税10%)
ISBNコード:978-4-287-92019-0

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特集●Barrett食道・Barrett腺癌の病態と臨床

企画編集/飯島克則
(秋田大学大学院医学系研究科 消化器内科・神経内科学講座 教授)
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 Barrett腺癌は,欧米では1960〜1970年代に急速に増加し,その前癌状態としてのBarrett食道とともに広く注目されてきた.Barrett食道は,胃酸,胆汁酸など食道内逆流によって繰り返し生じる食道粘膜傷害(びらん性逆流性食道炎)からの治癒過程で形成されると考えられている.
 日本では,従来,食道腺癌の発生は極めてまれであった.しかし,1990年ごろから逆流性食道炎の増加が指摘され,そして,最近の研究では,2010年ごろから日本においてもBarrett腺癌の着実な増加が始まったことが相次いで報告されている.今後,欧米でみられたように,日本においてもBarrett腺癌はさらに増加していくことが予想される.そうした状況で,今回の企画では,Barrett食道,Barrett腺癌の病態と臨床に関するトピックスを紹介する.
 Barrett食道,腺癌増加の世界的な背景として,Helicobacter pylori(ピロリ菌)感染率の低下,肥満の増加が考えられており,また,この病態には性差が存在し,圧倒的に男性優位である.そこで,本企画では,まず,Barrett食道発生機序に関する最新のトピックス,Barrett食道・腺癌の病態,および,世界的な増加の背景について概説する.
 次に,Barrett食道の診療上の問題点として,この定義が組織学的腸上皮化生の確認の必要性,Barrettの長さに関する規定,食道・胃接合部の取り決めに関して,世界的に統一されていないことがある.この現状を踏まえ,本企画ではBarrett食道診断の国際比較と日本での定義,それらの問題点,発癌率の比較について概説する.
 最後に,実際のBarrett腺癌診断,治療に関して,通常内視鏡検査によるBarrett食道からの早期Barrett腺癌拾い上げのポイント,早期癌発見後の精密検査としての拡大内視鏡検査のポイント,内視鏡的治療の現状と成績について概説する.さらに,Barrett食道に対する化学発癌予防の現況についても概説する.
 胃癌の多い日本においては,現在,胃癌の早期発見を目指して,2年に1回の胃の内視鏡検診が50歳以上の全国民を対象に行われており,それはBarrett腺癌の早期診断にも役立っている.そうした状況では,あえてBarrett腺癌の早期発見を目指したBarrett食道患者に対する定期的な内視鏡検査の必要性,その方法(検査間隔など)について論じる必要がない.しかし,今後10〜20年では,日本の胃癌は急激に減少することが予測されており,胃癌に対する内視鏡検診自体の必要性が議論されるころまでには,日本のBarrett食道に対するしっかりとした対応策を決めていく必要がある.今回の企画を通して,日本におけるBarrett食道,腺癌に対する理解,研究がさらに盛り上がることを期待したい.


飯島克則
秋田大学大学院医学系研究科 消化器内科・神経内科学講座 教授




1. わが国におけるBarrett食道・Barrett腺癌の動向/小泉重仁
2. Barrett食道の成因/高橋 壮,飯島克則
3. Barrett食道・Barrett腺癌の性差/淺沼清孝,正宗 淳
4. Barrett食道・Barrett腺癌とピロリ菌感染/阿部靖彦,佐々木 悠,八木 周,水本尚子,上野義之
5. Barrett食道・Barrett腺癌と肥満/松橋信行
6. Barrett食道診断基準の国際比較/石村典久
7. Barrett食道の内視鏡診断/天野祐二,岩城智之,勝山泰志,原田英明
8. Barrett食道の発癌リスクとサーベイランス/小池智幸,齊藤真弘,正宗 淳
9. 早期Barrett腺癌(表在型)拾い上げのポイント
藤崎順子,山﨑 明,池之山洋平,十倉淳紀,並河 健
10. Barrett食道表在腺癌の拡大内視鏡観察のポイント
郷田憲一,金森 瑛,河内 洋,石田和之,入澤篤志
11. Barrett腺癌の内視鏡的治療と治療成績/櫻井裕久,石原 立
12. Barrett食道の化学発癌予防/栗林志行,田中寛人,保坂浩子,浦岡俊夫