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月刊糖尿病 120号
消化器内科 第27号(Vol.4 No.2,2022)

2022年2月25日発売
A4変型判/96頁
定価4,400円(本体4,000円+税10%)
ISBNコード:978-4-287-92027-5

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特集●非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)-臨床の現状と課題-

企画編集/岡上 武
(大阪府済生会吹田病院 名誉院長/消化器内科)
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 優れた治療薬の開発でウイルス肝炎患者は激減し,最近の肝臓の主役は肥満・糖尿病・脂質異常症・高血圧などいわゆる生活習慣病をベースとした非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)となっている.NAFLD患者は世界に10億人と言われ,慢性肝疾患では最大で,わが国の罹患者は2,000万人前後と言われている.予後不良型NAFLDである非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は全体の20%未満と思われるが,その確定診断は肝生検がgold standardである.しかし,肝生検は侵襲的でsampling error,病理医間のinterobserver's differenceなど問題点が多く,しかも極めて多数の患者に肝生検を実施することは現実的ではない.30年程前からNAFLDのscreening,NAFL,NASHの鑑別診断,NASH線維化診断に血液生化学検査を用いた非侵襲的診断法(NITs)や画像診断法の開発が精力的に行われ,NITや画像診断の進歩にわが国の研究者が大きく貢献した.しかし,肝生検を代替できるまでには至っておらず,このことがNASH治療薬の開発の大きなハードルの1つとなっている.
 肝線維化の程度(stage)は予後を規定する重要な因子で,肝硬変に進展すると肝移植しか治療法がなく,またNASH肝がんでは腫瘍マーカーAFP陰性例が多く,ウイルス肝炎起因の肝がんの臨床とは大きく異なる.NAFLD/NASHは生活習慣病合併を含む患者背景,遺伝的素因など,個々の症例で大きな差があり,病因・病態はかなりheterogeneousで,どのようなNAFLがNASHに進展し,またどのようなNASHが予後不良なのか,十分明らかにされていない.
 従来肥満・糖尿病・高血圧などから脂肪肝が発症すると言われてきたが,最近の研究から脂肪肝が糖尿病や高血圧発症の原因となることが明らかになり,糖尿病や高血圧などは動脈硬化や認知症をきたし,またNAFLD患者では肝のみならず食道,胃,すい臓,大腸,前立腺など種々の臓器の発がん率が高いことが明らかになっており,NAFLD/NASHの臨床の重要性が増しており,有効な治療法の確立が喫緊の課題である.
 このような背景から,本企画では長年NAFLD/NASHの臨床・研究に従事し,現在も第一線で活躍している先生方に,これらの問題点につき執筆していただいた.本書を一読していただければ,NAFLD/NASHの臨床に関する種々の問題点も含め,明日の臨床・研究に役立つ最新の情報が得られるものと確信している.コロナ禍の中,貴重な論文を執筆していただいた先生方に感謝し,「特集にあたって」とする.


岡上 武
大阪府済生会吹田病院 名誉院長/消化器内科



1. NAFLD/NASHの疫学/建石良介
2. NAFLD/NASHの病理診断のポイントと問題点/原田憲一,吉村かおり
3. NAFLD/NASHの病因 -脂質代謝異常を中心に-/中牟田 誠
4. 糖尿病とNAFLD/NASH/細川友誠,小川 渉
5. 心血管疾患とNAFLD/小関正博
6. NAFLD/NASHの自然経過と予後/川中美和
7. NAFLD/NASHの画像検査/
中島 淳,米田正人,今城健人,小林 貴,本多 靖,斎藤 聡
8. NAFLD/NASHの非侵襲的診断法(NIT)/
島 俊英,片山貴之,光本保英,岡上 武
9. AIを用いたNAFLD/NASH診断/
岡上 武,島 俊英,水野雅之,光本保英,片山貴之
10. NAFLD/NASHと遺伝的背景/伊藤義人,山口寛二,瀬古裕也
11. NASH治療と今後の展望/角田圭雄,中島 淳,岡上 武
12. 日本と欧米のNAFLD/NASH診療ガイドラインの特徴/徳重克年