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消化器内科 第30号(Vol.4 No.5,2022) |
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2022年5月27日発売
A4変型判/96頁
定価4,400円(本体4,000円+税10%)
ISBNコード:978-4-287-92030-5
全ページカラー印刷
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企画編集/木下芳一
(兵庫県立はりま姫路総合医療センター 院長)
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世界の多くの地域で,衛生環境の改善に伴ってアレルギー疾患が増加している.アレルギー疾患では,本来体を守るべき免疫機構が環境内に存在するそれほど害のない物質に過剰に反応して,体に対して不利益な炎症反応を引き起こす.その結果,さまざまな症状が出現するとともに臓器機能が傷害され,生命予後にかかわる場合も少なくない.本来,消化管にアレルギーは起こりにくく,経口摂取された物質に対しては免疫トレランスが誘導されると認識されていた.実際,3 大アレルギー疾患といえば気管支喘息,アレルギー性鼻炎,アトピー性皮膚炎をさしており,消化管疾患は含まれていなかった.ただ,近年これらの気道系のアレルギー疾患に続いて,食物アレルギー,アレルギー性の消化管疾患が増加していることが注目されている.
食物に対するアレルギー性疾患では,IgE 依存性の一般的な食物アレルギーに加えて,IgE 依存度が低く慢性的な経過を取りやすい消化管のアレルギー疾患として,好酸球性消化管疾患が注目されている.これには,好酸球性消化管疾患の1 つである好酸球性食道炎患者が世界中で急増していることが関係していると考えられる.好酸球性食道炎は,欧米では有病率が人口10 万人当たり50 人に達している.日本においても好酸球性消化管疾患,特に好酸球性食道炎が増加しており,好酸球性消化管疾患と包括して厚生労働省が難病に指定している.
厚生労働省の指定難病に関するホームページには,好酸球性消化管疾患の概略と診断,治療の基本が記載されており,さらに厚生労働省の研究班が中心となって診療ガイドラインも作成された.また,関連学会の教育講演会でも好酸球性消化管疾患についての解説が行われる機会が増えてきている.
このような中で,今回,『消化器内科』の特集として好酸球性消化管疾患を取り上げさせていただいた.まず石原俊治先生には消化管の免疫機構の解説をしていただいた.消化管の免疫の特徴を他の臓器の免疫機構と比較して解説いただき理解していただきやすい内容となっていると考えている.次いで松本健治先生にはアレルギーの基礎的な解説をしていただいている.アレルギー疾患が増加している理由に関しても理解していただけると思う.千貫祐子先生には好酸球性消化管疾患の近縁疾患ともいえるIgE 依存性の食物アレルギーに関して解説をいただいた.野村伊知郎先生,大塚宜一先生,山田佳之先生にはそれぞれ好酸球性消化管疾患の概念と分類,新生児・乳幼児のガイドラインと幼児・成人のガイドラインの解説をいただいた.さらに,好酸球性食道炎に関しては,藤原靖弘先生,岩切勝彦先生,石村典久先生に疫学,病態,診断,治療,予後に関して分担して解説していただき,好酸球性胃腸炎に関しては今枝博之先生,松本主之先生と私,木下で分担して解説をさせていただいた.
本特集を通読していただければ,現在の好酸球性消化管疾患に関する研究と診療の現状がかなり詳しく理解していただける構成となっている.アレルギー疾患を有する患者が消化器系症状を訴え,内視鏡検査を実施したときに,病理組織検査で消化管粘膜に好酸球が多数浸潤しているとする報告を受け取った場合には,本特集を参考としていただければ診療を行っていくうえで大きな助けとなると確信している.本特集を手にした先生方を,外来で,病棟で,たくさん見かけることを楽しみにしている.
木下芳一
兵庫県立はりま姫路総合医療センター 院長
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1. 消化管免疫の基礎知識/岸本健一,岡 明彦,石原俊治
2. アレルギーの基礎知識/松本健治
3. 食物アレルギーの基礎知識/千貫祐子
4. 好酸球性消化管疾患の概念と分類/永嶋早織,野村伊知郎
5. 新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症診療ガイドライン/大塚宜一
6. 幼児・成人好酸球性消化管疾患診療ガイドライン/山田佳之
7. 好酸球性食道炎の疫学・病態・発症機序/田中史生,金森厚志,沢田明也,藤原靖弘
8. 好酸球性食道炎の診断と鑑別診断/川見典之,岩切勝彦
9. 好酸球性食道炎の治療と予後/石村典久
10. 好酸球性胃腸炎の疫学・病態・発症機序/今枝博之,小林威仁,都築義和,大庫秀樹,中元秀友
11. 好酸球性胃腸炎の診断と鑑別疾患/木下芳一,佐貫 毅,八幡晋輔,大内佐智子
12. 好酸球性胃腸炎の治療と予後/松本主之,鳥谷洋右,梁井俊一
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