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消化器内科 第32号(Vol.4 No.7,2022)

2022年7月25日発売
A4変型判/96頁
定価4,400円(本体4,000円+税10%)
ISBNコード:978-4-287-92032-9

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特集●膵癌の早期発見と治療方針

企画編集/花田敬士
(大阪医科薬科大学 第二内科 専門教授)
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 今回の特集では,膵癌の早期発見と治療方針に関する最近の動向を取り上げます.膵癌は依然として早期診断が困難であり,5年生存率は10%未満とされ,特に切除ができない膵癌の患者の予後は非常に厳しいのが現状です.一方で,日本膵臓学会の膵癌登録のデータおよび国内多施設の症例集積の報告からは,腫瘍径が1cm未満では5年生存率が80%,さらに早期の上皮内癌に相当するステージ0では95%と非常に良好な成績が報告されています.しかしながら診断件数は現在でも非常に少数であり,予後改善には集学的治療の発展とともに,切除可能な状況での早期診断例を1例でも増やすことが必要不可欠です.
 膵癌早期診断の成果をあげるためには,大半が無症状である患者への検査介入が必要になりますが,私の所属する広島県尾道市医師会では,2007年から『膵癌早期診断プロジェクト(尾道方式)』が発足し,過去13年間に『膵癌疑い』で受診された患者延べ18,507件のうち,CT,MRI(MRCP),超音波内視鏡(EUS)で精査の後,EUSガイド下穿刺吸引法(EUS-FNA)や内視鏡的逆行性膵胆道造影(ERCP)併用の膵液細胞診などを用いて610例を膵癌と確定診断しました.うち,ステージ0,?がそれぞれ5.2%であり,多くのサバイバーを得ることができています.これを受けて広島県医師会では,広島大学,県医師会,国指定のがん診療連携拠点病院を中心に,全県下で尾道方式を展開するためのワーキンググループが発足しており,2022年度中の稼動を目指して調整が進んでいます.尾道地区以外でも国内の一部の地域では,尾道方式と同様のコンセプトで中核施設と医師会が協働で,危険因子を有する患者へ非侵襲的な一次検査の介入を行い,軽微な異常所見を有する場合でも中核施設で侵襲の少ない二次検査を積極的に行うことで,早期診断例の増加,外科的切除率,生存率の改善がみられています.
 最近,各地区から多くの早期診断症例が得られたことで,今まで明らかでなかったCT,MRI,EUSなどの画像所見や病理所見上の特徴,5年以上経過しての術後残膵再発の問題などが報告されており,国内外の消化器病,消化器内視鏡,膵臓病関連の学会でも『膵癌の早期診断』をいろいろな角度から議論するセッションが多くなり,演題応募も非常に多く,座長席から若手先生方の熱い議論を拝聴する機会が増えたように思います.多くの先生方に興味をもっていただくテーマになっていることは非常に喜ばしい限りです.
 今後,臨床現場で診療に従事する検診部門,消化器内科,内視鏡科,消化器外科,臨床腫瘍科,放射線科,病理部門,内視鏡外科などの連携のみならず,基礎研究の分野から臨床に応用可能な非侵襲的バイオマーカーの開発研究,一般市民への危険因子などの啓発やスクリーニング体制の充実に関する医師会や行政の協力など,まさに国の総力をあげた取り組みが求められています.
 今回の企画では,現在膵癌早期診断および治療に注力していただいている国内のトップランナーの先生方や関係者の方に,膵癌の早期発見と治療方針の立案のために知っておきたい最新の知見について執筆をお願いしました.この号の内容が,今後の膵癌早期診断ならびに治療の発展に繋がることを心から期待しています.


花田敬士
JA尾道総合病院 副院長/内視鏡センター長



1. 早期の膵癌の疫学/高山敬子
2. 早期の膵癌に関する病理学的知見最前線/大森優子,伊藤泰斗,古川 徹
3. 膵癌の早期診断を目指したバイオマーカーの今/光永修一
4. 膵癌早期発見を目指した家族歴・ゲノム異常を考慮したサーベイランス/肱岡 範,森實千種,奥坂拓志
5. 早期診断された膵癌の臨床徴候・画像所見/池本珠莉,芹川正浩,石井康隆,壷井智史,中村真也
6. 膵癌の早期診断における超音波検査の役割/岡庭信司
7. 膵癌早期診断のために知っておくべき画像所見と画像検査の役割/井上 大,戸島史仁,小森隆弘,蒲田敏文
8. 膵癌の早期診断におけるEUS/EUS-FNAの役割/蘆田玲子,北野雅之
9. 膵癌の早期診断におけるERCPの役割/栗原啓介,花田敬士,清水晃典
10. 早期膵癌が疑われる症例に対する外科治療/奥野正隆,清水泰博,夏目誠治,細田和貴,原 和生
11. 膵癌早期診断例の術後経過観察/蔵原 弘,大塚隆生
12. 膵癌の早期診断を目指した病診連携/清水晃典,津島 健,花田敬士
13. 米国の膵癌早期発見イニシアチブ(EDI)の現況と日本の早期診断に関連する患者会の啓発活動/眞島喜幸