特集●肝細胞癌治療のパラダイムチェンジ
企画編集 | :工藤正俊 |
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発行 | :2023年11月 |
判型 | :A4変型 |
頁数 | :96 |
ISBN | :978-4-287-92036-7 |
定価 | :4,400円(本体4,000円+税10%) |
在庫 | :あり |
特集にあたって
今号の雑誌『消化器内科』の特集は「肝細胞癌治療のパラダイムチェンジ」とした.2009年のソラフェニブの薬事承認以来,一次治療としては現在レンバチニブ,アテゾリズマブ+ベバシズマブ,デュルバルマブ+トレメリムマブ,そしてデュルバルマブ単剤が承認されている.また二次治療としては,レゴラフェニブ,ラムシルマブ,そしてカボザンチニブの3剤が承認されており,計8レジメンが切除不能肝細胞癌に対して使用可能となっている.一次治療の第一選択は日本肝臓学会の診療ガイドラインではアテゾリズマブ+ベバシズマブとデュルバルマブ+トレメリムマブ並列で併記され,どちらも主治医の判断で選択することが推奨されている.一方,AASLDのガイドラインや欧米の肝癌のエキスパートオピニオンでは有効性,安全性の面から,アテゾリズマブ+ベバシズマブが推奨されることが多い.
本特集においては,薬物治療によって大きく変わった肝細胞癌治療の治療戦略の変貌に焦点を当てた.また,SURF trialの結果も踏まえた根治的治療のあり方についても執筆いただいた.Intermediate stageにおいては急速に変貌するTACEと分子標的薬の使い分け,LEN-TACE sequential治療あるいはTACE不応・不適の概念,といった点を中心に原稿を書いていただいた.またアテゾリズマブ+ベバシズマブを用いると腫瘍がかなり縮小するため,その後のコンバージョン切除やアブレーション,根治的TACEが可能になりcancer free,drug freeが得られるといった点も現在大きなトピックスとなっている.
基礎的な観点からは免疫療法の効果が比較的不良とされるWnt/βカテニン経路の活性化と免疫療法の効果についても詳しく解説いただいた.最後に,現在進行中の第?相試験についても網羅的に執筆いただいた.結果として,本特集によって「薬物治療の進歩により急速に変貌する肝細胞癌治療」についての知識を読者がすぐに理解できる内容となり,この領域におけるバイブルのような特集になったと確信している.多くの方にぜひ,手に取って読んでいただき,明日からの肝細胞癌診療に役立てていただきたいと思う次第である.
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