HOME雑誌月刊糖尿病 > 月刊糖尿病09年9月号
月刊糖尿病 09年9月号
月刊糖尿病9月号 SOLD OUT

2009年8月20日発売
A4変型判/144頁
価格:本体2,400円+税
ISBNコード:978-4-287-82004-9
全ページカラー印刷

特集iPS細胞と糖尿病治療への応用
編集企画/稲垣暢也
画像をクリックするとサンプル(PDF)をご覧いただけます
目次 特集 特集 特集
 本特集では,「iPS細胞と糖尿病治療への応用」という特集を企画させていただいた.膵島を用いた細胞治療は,とくに1型などのインスリン補償が必要となる糖尿病において,インスリン注射も不要になるかもしれない夢の治療法である.
 2000年以降,膵島移植の技術が飛躍的に進歩し,わが国においても膵島移植が行われるようになった.しかし,これで問題が解決されたわけではない.まず第一にドナー不足の問題.とくに移植制度が欧米に比べて遅れているわが国においては,膵臓のドナーをみつけるのは困難である.また,移植を受けた膵島が数年も経つと次第に減少するという問題もある.ブタの膵島移植の研究も行われているが,感染や免疫拒絶反応などの問題があり,現時点では実用的ではない.
 一方,1981年にケンブリッジ大学のマーティン・エヴァンス氏らはマウスの受精卵から胚性幹(Embryonic Stem)細胞,すなわちES細胞を樹立し,その後ヒトのES細胞も樹立されるようになった.このようなES細胞はすべての細胞に分化する能力を有することから,ES細胞を用いてさまざまな細胞や臓器を作るという研究が世界中でさかんに行われるようになった.しかし,ES細胞は受精卵から樹立しなくてはならないため,とくにヒトES細胞を用いた研究には倫理上の問題がつきまとった.
 このような背景において,京都大学の山中伸弥氏らが樹立したiPS細胞を用いた細胞治療が大いに注目されている.彼らは人の皮膚細胞にたった4種類の遺伝子を導入するだけで,ES細胞と似た分化万能性(pluripotency)を有する人工多能性幹(inducible Pluripotent Stem)細胞,すなわちiPS細胞を樹立することに成功したわけである.もし,患者自身のiPS細胞から膵島を作成し,移植することができれば,倫理的な問題や免疫拒絶反応の問題など克服でき,まさに理想的な糖尿病治療になりうる可能性がある.とはいえ,iPS細胞を用いた膵島の再生研究は緒についたばかりであり,まだまだ医療の現場に応用するにはハードルも多い.
 本特集では,膵島の分化・再生メカニズムや膵島移植による細胞治療の現状に加え,iPS細胞とはどのような細胞で,今後iPS細胞を用いて膵島を作成するためにはどのようなハードルを乗り越えなくてはならないのかという点について,わが国を代表する先生方にご執筆いただいた.さらに,座談会では,理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの高橋政代氏と,膵島再生の研究で有名なハーバード大学のDouglas A. Melton教授の研究室に留学され,現在京都大学iPS細胞研究センターで研究をされている長船健二氏をお招きして,最先端を走るiPS細胞を用いた網膜細胞の再生研究とケミカルバイオロジーを用いた再生研究について語っていただいた.この特集が多くの読者のご参考となることを願う.
稲垣暢也
(京都大学大学院 医学研究科 糖尿病・栄養内科学 教授)
[特集]iPS細胞と糖尿病治療への応用
特集にあたって(稲垣暢也)
1 膵β細胞の特性と再生インスリン分泌細胞に必要な機能(清野 進 他)
2 膵発生の制御シグナル(川口義弥)
3 膵島内分泌細胞への分化と転写因子(綿田裕孝 他)
4 多能性幹細胞の未分化性制御機構と体細胞のリプログラミング(丹羽仁史 他)
5 幹細胞(iPS細胞)から膵β細胞への分化誘導(宮崎純一 他)
6 膵再生を促進する諸因子(小島 至 他)
7 バイオ人工膵臓:膵β細胞の機能発揮に適した環境(岩田博夫 他)
8 膵島移植(上本伸二 他)
9 膵β細胞の自己複製:再生β細胞の維持(高沢 伸 他)


[座談会] iPS細胞の最近の研究の進展についてー再生をめぐる最近の話題ー(稲垣暢也[司会]・高橋政代・長船健二)
[連載]糖尿病専門医のための皮膚病変講座 企画:宮地良樹
〈第3回〉 汎発性環状肉芽腫(岡本祐之)
[連載]糖尿病に合併する感染症 企画:永淵正法
〈第4回〉 糖尿病と細菌感染症(下野信行)
[連載]糖尿病検査シリーズ 企画:柏木厚典
〈第4回〉 LDL-コレステロール(柏木厚典)
[話題の糖尿病トピックス]β細胞の幹細胞が膵管上皮細胞に存在することの実証に成功(稲田明理)