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月刊糖尿病 09年10月号
月刊糖尿病10月号 SOLD OUT

2009年9月24日発売
A4変型判/128頁
価格:本体2,400円+税
ISBNコード:978-4-287-82005-6
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特集糖尿病性腎症 -成因解明と寛解をめざした治療戦略-
編集企画/羽田勝計
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目次 特集 特集 特集
 糖尿病性腎症がわが国の透析療法導入原疾患の第1位となってから,すでに10年が経過した.その間も,糖尿病性腎症による透析療法導入症例数は増加しつづけ,2007年には1年間で16,018例,全導入症例の43.4 %を占めるに至った.しかし,2008年の速報では,実数は16,126例と,わずかではあるがいまだ増加しつづけているものの,全体に占める割合としては,43.2 %とやや減少に転じている.
 腎症の成因に関しては,多くの知見が集積してきている.治療薬として定着したのは,現時点では「糸球体高血圧」を是正するレニン-アンジオテンシン系阻害薬のみであるが,高血糖に基づく細胞内代謝異常に関しても,たとえば小規模ではあるがPKC阻害薬の顕性腎症に対するpilot studyが行われ,その有用性が示されている.終末糖化産物(AGEs)やその受容体の重要性も種々の遺伝子改変動物から明らかにされ,AGEs産生阻害薬やcross-link breakerなどを用いた臨床試験が欧米で行われている.動脈硬化と同様に,microinflammationやある種の転写因子の関与も明らかになってきた.そして,ゲノムワイドの検索から,腎症疾患感受性遺伝子もいくつか同定されるに至っている.さらに,新規治療標的分子の同定とそれに対する創薬も行われている.
 臨床面では,腎症の診断における「微量アルブミン尿」の重要性はすでに確立しているが,尿アルブミン値の定量検査が必ずしも年1回行われていないという問題点が存在する.また,chronic kidney disease(CKD:慢性腎臓病)の概念が提唱され,尿アルブミン値ではなくestimated GFRを用いたステージ分類が作成された.従来の糖尿病性腎症の病期分類との整合性が現在話題となっている.
 現在,最も重要な点は,腎症の臨床的remission(寛解)が生ずることが明らかとなってきたことであると考えられる.まず,単独膵移植で長期間血糖値を正常化することにより,すでに生じていた糸球体病変が改善することが示された.その後,現在の治療戦略によっても,早期腎症・顕性腎症ともに寛解が生ずることが明らかにされており,腎症の治療目標が,これまでの進行阻止から寛解をめざすことに変化してきた.
 すでに,デンマークや米国では,腎症からの透析療法導入症例数がstabilizeした,あるいは減少に転じた,とも報告されており,わが国の2008年の速報からもその傾向がうかがえる.現時点で行える「集約的治療」を確実に実施することにより,透析療法に導入される糖尿病性腎症例を減少させることは可能であると考えられる.同時に,上記成因に基づいた新たな腎症治療薬が登場すれば,糖尿病性腎症は近い将来必ず克服されると私は信じている.
 本特集では,腎症の研究および診療の専門家に,これら腎症の基礎と臨床の進歩をご解説いただいた.日常診療の参考にしていただければ,編集を担当したものとして存外の喜びである.
羽田勝計
(旭川医科大学 内科学講座 病態代謝内科学分野 教授)
[特集]糖尿病性腎症 -成因解明と寛解をめざした治療戦略-
特集にあたって(羽田勝計
1. 糖尿病性腎症の疾患感受性遺伝子はどこまで解明されたか(前田士郎)
2. 高血糖に基づく糖尿病性腎症の成因(古家大祐)
3. 終末糖化産物(AGEs)と糖尿病性腎症(山本 博)
4. 糸球体高血圧とStrain vessel hypothesis(伊藤貞嘉)
5. 糖尿病性腎症の成因としてのmicroinflammation(四方賢一)
6. 転写因子と糖尿病性腎症(牧野雄一)
7. 糖尿病性腎症の分子病理(鈴木大輔)
8. 糖尿病性腎症の診断と管理指標:アルブミン尿とeGFR(猪股茂樹)
9. 寛解(remission)をめざした早期腎症の治療戦略(荒木信一)
10. 寛解(remission)をめざした顕性腎症の治療戦略(赤井裕輝)
11. 腎不全期の治療:透析療法回避をめざして(馬場園哲也)
12. 糖尿病性腎症に対する新規治療標的分子と創薬(宮田敏男)

[巻頭口絵] 糖尿病性腎症の画像診断 -腎症早期の糸球体所見を中心に-(守屋達美)
[連載]連載 糖尿病専門医のための皮膚病変講座 企画:宮地良樹
〈第4回〉Dupuytren拘縮(是枝 哲)
[連載]糖尿病に合併する感染症 企画:永淵正法
〈第5回〉 糖尿病と肺炎球菌(藤田昌樹・安西慶三)
[連載]糖尿病検査シリーズ 企画:柏木厚典
〈第5回〉 レムナントリポ蛋白,small dense LDL(平野 勉)
[学術情報記事]ヒトインスリン製剤からインスリンアナログ製剤への切り替え(田中 逸)
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