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月刊糖尿病 10年5月号
月刊糖尿病6月号 SOLD OUT

2010年5月20日発売
A4変型判/128頁
価格:本体2,500円+税
ISBNコード:978-4-287-82013-1
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特集インクレチンの臨床:2型糖尿病の新しい治療 2型糖尿病におけるインクレチン関連薬の可能性
編集企画/稲垣暢也
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目次 対談 特集 特集
 わが国では2009年末に最初のDPP-4阻害薬シタグリプチンの発売が承認された.そして,今年4月には2番目のDPP-4阻害薬ビルダグリプチンが発売された.さらに今年は,新たなGLP-1受容体作動薬リラグルチドや,3番目のDPP-4阻害薬アログリプチンも登場する予定であり,まさに今年はインクレチン元年となりそうである.インクレチン関連薬は,これまでの糖尿病薬とまったく異なる作用機序を有する新しい薬剤であり,わが国において10年以上ぶりの新しい薬剤の登場である.
 インクレチン関連薬の特徴として,第一に,単独で低血糖を起こしにくいインスリン分泌促進薬であること,第二に,グルカゴン分泌を抑制するという,これまでにない新しい作用を有すること,第三に,原理的にこれまでのあらゆる糖尿病治療薬との組み合わせが可能であること,第四に,体重を減少させる,あるいは増加させないこと,そして最後に,膵島保護作用を有する可能性があること,があげられる.このような特徴から,インクレチン関連薬は多くの利点を併せ持つ,2型糖尿病治療薬として大いに期待されている.
 とはいえ,インクレチンは夢の薬ではない.糖尿病の治療の基本はあくまでも食事・運動療法であり,基本を守らずにインクレチン関連薬を投与しても血糖値が下がるわけではない.
 また,インクレチン関連薬はまったく新しい作用機序を有する薬剤であるため,思わぬことが起こる可能性もある.実際,シタグリプチンの発売後,SU薬にDPP-4阻害薬を併用した場合に,治験の段階ではみられなかったような重症低血糖が,高齢者を中心に認められて問題となっている.このような症状は,とくに高齢者や軽度腎機能低下者で高用量のSU薬を服用している糖尿病患者に多くみられ,こうした患者にDPP-4阻害薬を併用する場合には,SU薬を減量するなどの慎重な対応が求められている.しかしこれは,腎機能が潜在的に低下している高齢者に極量のSU薬を投与しているという問題が,DPP-4阻害薬との併用によって顕在化したものだと思われる.現実には,SU薬による重症低血糖は全国で現在でも少なからず発生しており,この機会にSU薬の投与法についても改めて見直す必要もあろう.
 本特集では,インクレチンの分泌,膵島への作用,膵外作用といった基礎的内容から,2型糖尿病における病態とインクレチンの役割や有効性,そしてインクレチン関連薬を用いた2型糖尿病の治療戦略と臨床データに至るまで,各分野の第一人者の先生方に執筆をお願いした.ご多忙にもかかわらずご執筆いただいた諸先生に感謝申し上げるとともに,インクレチンの基礎から臨床までを網羅した本特集が,読者のインクレチンに関する理解を深め,糖尿病診療に役立つものと確信する.
稲垣暢也
(京都大学大学院 医学研究科 糖尿病・栄養内科学 教授)
[特集]インクレチンの臨床 -2型糖尿病の新しい治療-
特集にあたって(稲垣暢也)
1. インクレチンの膵島作用:膵β細胞(清野 進 他)
2. インクレチンの膵島作用:膵α細胞(石原寿光 他)
3. インクレチンの膵外作用:GLP-1(柏木厚典 他)
4. インクレチンの膵外作用:GIP(山田祐一郎)
5. 2型糖尿病におけるインクレチン作用(稲垣暢也 他)
6. インクレチン分泌の機序(羽田勝計 他)
7. インクレチンの膵β細胞保護作用(加来浩平 他)
8. 日本人糖尿病におけるインクレチン治療の有効性(清野 裕 他)
9. DPP-4阻害薬による2型糖尿病の治療戦略(門脇 孝 他)
10. DPP-4阻害薬の臨床データをどう理解するか(河盛隆造)
11. GLP-1誘導体による2型糖尿病の治療戦略(難波光義 他)
12. GLP-1誘導体の臨床データ(岩本安彦)

[特別対談]日本人2型糖尿病治療におけるDPP-4阻害薬に対する期待
 門脇 孝×稲垣暢也
[連載]糖尿病に合併する感染症 企画:永淵正法
〈第12回〉緑膿菌(Pseudmonas aeruginosa)(舘田一博)