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月刊糖尿病 10年5月号
月刊糖尿病11月号 SOLD OUT

2010年10月20日発売
A4変型判/112頁
価格:本体2,500円+税
ISBNコード:978-4-287-82018-6
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特集糖尿病の新しい診断基準−早期診断・早期管理−
編集企画/南條輝志男
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目次 特集 特集 連載
 糖尿病治療の目標は,慢性合併症の発症・進展を阻止し,健康な人と変わらないQOLを維持し,寿命を確保することである.しかし,初期の糖尿病および慢性合併症は自覚症状を欠くことが多く,診断時に進行した合併症を有する例もまれではない.また,DCCT/EDIC研究,UKPDS研究において,発症早期からの厳格な血糖コントロールが,10数年後の細小血管症や動脈硬化症の進展,さらには死亡率まで抑制することが示され,メタボリックメモリー,レガシーエフェクトとして報告された.このような状況を受けて,早期診断・早期管理の必要性はますます高まっている.
 本年7月1日より施行された日本糖尿病学会(JDS)による新しい糖尿病診断基準は,まさに,糖尿病をより早期に診断し,より早期から管理することを目指したものである.しかしながら,旧診断基準において補助的診断に用いられてきた「HbA1c(JDS値)≧6.5 %」と,新診断基準で糖尿病型と判定される「HbA1c(JDS値)≧6.1 %」の数字のみをみて"診断基準が厳しくなった"と誤った理解をしている医療従事者もおり,若干の混乱が生じている可能性がある.本誌を熟読していただければ,誤解や疑問は氷解するはずである.
 本特集の執筆は,日本糖尿病学会の「糖尿病診断基準に関する調査検討委員会」の委員の先生方を中心にお願いした.「1.糖尿病診断基準のこれまでの歩みと国際的背景」については,実際に国際会議に出席され,日本糖尿病学会の立場を主張してこられた日本糖尿病学会理事長の門脇 孝先生に無理にお願いしてご執筆いただいた.「2.糖尿病診断基準改定のねらい」は,同委員会の委員長をつとめられた清野 裕先生からHbA1cの診断基準への導入の経緯,血糖値との同時測定による早期診断への期待など,改訂の要旨を解説していただいた.「3.糖尿病の概念」は,日本の糖尿病学の発展に中心的な貢献をされてこられた春日雅人先生より,歴史的変遷から最新の遺伝因子と環境因子の関連まで詳しくご説明いただいた.「4.糖尿病の分類」は,1型糖尿病,とくに劇症型の研究で日本をリードされておられる花房俊昭先生(宮脇正博先生,寺前純吾先生)から非常に詳細な解説を頂戴した.「5.糖尿病診断の手順」については,同委員会の副委員長である田嶼尚子先生(横田太持先生,宇都宮一典先生)より,糖尿病診断に至る過程の病態・臨床的意義を含めて詳述していただいた.「6.糖尿病診断における基準値設定の根拠」は,今回の改訂の基礎となる日本人のエビデンスのほとんどを報告されてこられた伊藤千賀子先生にご執筆いただいた.糖尿病型と判定されるHbA1c(JDS値)≧6.1 %の根拠とその臨床的意味が明快に述べられている.
 日本糖尿病学会は,今回の改訂のなかで診断基準の改訂に加えて,HbA1cの国際標準化(数年以内に現行の測定法によるHbA1c〔JDS値〕→国際的に広く使用されているHbA1c〔国際標準値〕への移行)についても見解を表明した.本特集では,「糖尿病関連検査の標準化に関する委員会」の委員長である柏木厚典先生(西尾厚典先生)から,歴史的な経過と糖尿病学会の対応を含めて「7.糖尿病診断におけるHbA1cの位置づけ」を詳細に解説していただいた.「8.糖尿病診断におけるOGTTの位置づけ」については,インスリン分泌の代表的研究者である荒木栄一先生(久木留大介先生)にわかりやすく解説していただいた.「9.妊娠糖尿病の概念と診断基準」については,今回の改訂で大きく変更された事項であり,この分野の第一人者でいらっしゃる岩本安彦先生(柳沢慶香先生)に明快にご解説いただいた.「10.新たに取り上げられた遺伝子異常による糖尿病」としては,新生児糖尿病における膵β細胞のK<ATPチャネル関連の遺伝子異常が特筆すべき点であるが,この分野の第一人者の稲垣暢也先生(長嶋一昭先生)にご執筆いただいた.「11.糖尿病の早期診断,早期管理への期待」は,腎症を始めとする合併症のエキスパートである羽田勝計先生に明快にご解説いただいた.「12.新しい診断基準の運用における留意点」は,日本糖尿病学会事務局長として今回の改訂をまとめる中心的役割を果たされた植木浩二郎先生,高本偉碩先生から,詳細で具体的な解説をいただいた.
 いずれも読み応えのある力作ぞろいであり,熟読していただき明日からの日常臨床において新しい診断基準を活用して頂きたいと思う.各執筆者の先生方には大変お忙しい中ご執筆いただき,心より御礼申し上げる.
南條輝志男
(和歌山県立医科大学 名誉教授)
[特集]糖尿病の新しい診断基準−早期診断・早期管理−
特集にあたって(南條輝志男
1.糖尿病診断基準のこれまでの歩みと国際的背景 門脇 孝
2.糖尿病診断基準改定のねらい 清野 裕
3.糖尿病の概念 春日雅人
4.糖尿病の分類 花房俊昭 他
5.糖尿病診断の手順 宇都宮一典 他
6.糖尿病診断における基準値設定の根拠 伊藤千賀子
7.糖尿病診断におけるHbA1cの位置づけ 柏木厚典 他
8.糖尿病診断におけるOGTTの位置づけ 荒木栄一 他
9.妊娠糖尿病の概念と診断基準 岩本安彦 他
10.新たに取り上げられた遺伝子異常による糖尿病 稲垣暢也 他
11.糖尿病の早期診断,早期管理への期待 羽田勝計
12.新しい診断基準の運用における留意点 植木浩二郎 他

[連載]
◆糖尿病検査シリーズ 企画:柏木厚典
(第12回)生体酸化ストレスマーカー(西川武志)
◆糖尿病専門医のための皮膚病変講座 企画:宮地良樹
(第9回)後天性反応性穿孔性膠原線維症(高橋健造)
◆糖尿病に合併する感染症 企画:永淵正法
〈第17回〉歯周病(西村英紀)