HOME雑誌月刊糖尿病 > 月刊糖尿病10年12月号
月刊糖尿病 10年5月号
月刊糖尿病12月号 SOLD OUT

2010年11月20日発売
A4変型判/128頁
価格:本体2,500円+税
ISBNコード:978-4-287-82019-3
全ページカラー印刷

特集糖尿病第6の合併症:歯周病

編集企画/和泉雄一
画像をクリックするとサンプル(PDF)をご覧いただけます
特集 特集 特集 連載
 歯科治療が全身の精神・身体に与える影響,また,逆に全身の変化が歯科領域の症状に及ぼす影響について多くの事例が報告され,その影響の重大性に高い関心が寄せられている.
 これまで,口腔清掃不良と細菌性心内膜炎との関係,残存歯数や咬合と認知症との関係など,口腔と全身との関係は注目されていたが,いずれも確固とした根拠に基づくものではなかった.ここ数年の間,ヘルスケアにおける口腔と全身との関連性が科学的に追求されたことにより,歯周病が心臓・循環器疾患や糖尿病などの生活習慣病に密接に関係していることが明かにされつつある.
 歯周病は,歯肉,歯根膜,セメント質および歯槽骨で構成される歯周組織が口腔内細菌感染により破壊される慢性炎症性疾患であり,う蝕とともに歯科における2大疾患といわれている.とくに,グラム陰性嫌気性菌である歯周病原細菌や,その代謝産物と生体細胞との相互作用の結果,炎症反応や免疫反応を経て歯肉の炎症や歯槽骨の吸収などの臨床症状を呈して進行する.さらにその過程に環境因子が加わることで多様な病態を示し,重症化する.
 このような歯周病のリスクファクターとしては,歯周ポケット内に存在する歯周病原細菌と遺伝子により支配されている生体応答,そして喫煙やストレスならびに食生活に代表される生活習慣の3つの因子からなっている.なんらかの歯周病の症状が国民の70 %以上に認められており,成人において歯を喪失する第一の原因である.
 一方糖尿病は,糖代謝の異常によって高血糖状態が続き,合併症が懸念されている疾患である.*糖尿病と歯周病の病態は異なるが,近年,歯周病は糖尿病の第6番目の合併症として注目されている.糖尿病患者では,歯周病罹患率が増加し,とくに血糖コントロールが不良な糖尿病患者では,歯周病の発症および進行のリスクが上昇する.逆に,歯周病に罹患していると糖尿病の血糖コントロールが難しくなり,糖尿病が増悪することが明らかになっている.
 最近,2型糖尿病患者では,適切な歯周治療によって血中HbA1c値が改善することが報告され,注目を集めている.日本において,2型糖尿病患者に抗生薬の局所投与を併用した歯周治療を行ったところ,血中HbA1c値が低下することが報告された.この際にインスリン抵抗性の指標となっているHOMA-IRが改善していることから,インスリン抵抗性が改善することによって,HbA1c値が低下したと考えられる.
このように,糖尿病患者で高頻度に重症化する歯周病は,逆に,軽微で持続的な慢性炎症としてインスリン抵抗性を引き起こし,糖尿病の悪化につながっている.このような「悪の循環」を招くことから,糖尿病と歯周病はお互いに密接に関連しているものと理解する必要がある.
 歯周病は,糖尿病以外にも,肥満,早産・低体重児出産,心臓・循環器疾患とのかかわりが注目されている.これらの疾患は糖尿病にも密接に関係し,複雑な因果関係が存在する(図).
本特集では,これまでに行われた歯周病と糖尿病との関係の研究を踏まえて,多方面から詳細に解説・考察し,糖尿病と歯周病の治療には,医科・歯科連携して取り組む体制の確立が必要であることを強調したい.
和泉雄一
(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 生体硬組織再生学講座 歯周病学分野 教授)
[特集]糖尿病第6の合併症:歯周病
特集にあたって……和泉雄一
1. 歯周病とは?……野口和行 他
2. 歯周病が全身に及ぼす影響……山本松男 他
3. 歯周病と糖尿病の疫学……野口俊英 他
4. 歯周病と糖尿病の相互作用のメカニズム……西村英紀 他
5. 遺伝学的な見地からみた歯周病と糖尿病……長澤敏行 他
6. 歯周病による歯の喪失と栄養摂取……安藤雄一
7. 肥満……斎藤俊行 他
8. 妊娠……古市保志 
9. 心臓・循環器疾患……鈴木淳一
10. 感染症……西原達次 他
11. 糖尿病治療による歯周病への効果……井上修二 他
12. 歯周病治療による糖尿病への効果……片桐さやか 他
13. 糖尿病治療における注意点……宇都宮一典 

[連載]
◆糖尿病専門医のための皮膚病変講座 企画:宮地良樹
(第10回)壊死性筋膜炎・軟部組織感染症(立花隆夫)