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月刊糖尿病 11年4月号
月刊糖尿病5月号 SOLD OUT

2011年4月22日発売
A4変型判/168頁
価格:本体2,500円+税
ISBNコード:978-4-287-82024-7
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特集食後高血糖と動脈硬化

企画編集/野出孝一
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目次 特集 特集 特集
 糖尿病診療において重要なことは合併症の防止である.虚血性心疾患,脳血管障害を含んだ大血管症が,生命予後の鍵を握っている.しかし,血糖コントロールと大血管症抑制との間には,網膜症,腎症などの細小血管症の抑制ほどにはよい相関が得られていない.近年,食後高血糖が大血管症の発症に関与しているのではないかといわれており,大血管症を予防しようとするならば,糖尿病になってから治療を始めても手遅れであり,食後高血糖がみられる段階でその糖尿病への進展を防止し,同時に大血管症を防止する治療戦略をとるべきである,という考えが生まれてきた.
 空腹時血糖値ではなく,なぜ経口グルコース負荷試験(OGTT)2 時間値や食後高血糖が,大血管症との間に強い関連を有するのかは,今のところよくわかっていない.食後の一時的な血糖上昇の繰り返しが酸化ストレスを亢進させ,これが血管内皮障害を惹起して心血管疾患の発症を促進しているという仮説がある一方,食後高血糖や OGTT2 時間値の高値は,心血管疾患を起こしやすい病態のよい指標だとする考えもある.食後高血糖 /IGT に対するさまざまな手段を用いた介入は,糖尿病への移行を抑制することに関しては有効であるが,はたして,大血管症を抑制し,心血管疾患の発症やそれによる死亡を軽減するかどうかは,いまだ判明していない.
 治療薬についていえば,α-GIアカルボースはSTOP-NIDDMにおいて,IGTから2型糖尿病への新規発症や,急性心筋梗塞の発症が有意に抑制された.しかし,高リスクのIGTを対象にしたNAVIGATIORでは,ナテグリニドは糖尿病発症や心血管イベントを抑制しなかった.最近上市されたインクレチン製剤は,低血糖の合併が少ないことからIGTや軽症糖尿病にも使いやすく,またGLP-1が心血管細胞にも受容体を介して保護作用を呈することから,動脈硬化抑制を介した心血管イベント抑制が期待されるところである.しかし,DPP-4阻害薬の大規模研究は,欧米でのTECOS研究のみで,今後のさらなる検討が待たれる.
 本特集では,食後高血糖と動脈硬化に関して,疫学・病態・診断・治療の分野で第一線の研究者の先生方に執筆いただいた.本特集が読者の明日からの糖尿病治療の一助になれば幸いである.
野出孝一
(佐賀大学 医学部 循環器・腎臓内科 教授)
[特集]食後高血糖と動脈硬化
特集にあたって ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 野出孝一
1.食後高血糖と循環器疾患 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 室原豊明
2.食後高血糖と冠動脈疾患 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 石原正治
3.食後高血糖と心不全 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 伊藤 宏
4.食後高血糖と血管内皮機能 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 島袋充生
5.食後高血糖とIMT ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 松久 宗英
6.食後高血糖と脂質異常症 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 平野 勉
7.食後高血糖に対するビグアナイドの効果 ‥‥‥‥‥‥ 北風政史
8.食後高血糖に対するα-GIの効果 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 井上晃男
9.食後高血糖に対するナテグリニドの効果 ‥‥‥‥‥‥ 宮崎俊一
10.食後高血糖に対するチアリゾン製剤の効果 ‥‥‥‥‥ 村上達明
11.インクレチン製剤の効果 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 野出孝一
12.食後高血糖に対するスタチンの効果 ‥‥‥‥‥‥‥‥ 島田和典
13.食後高血糖に対するARBの効果 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 河野宏明
14.食後高血糖に対する運動療法 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 道下竜馬
15.食後高血糖に対する食事療法 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 加藤 徹

[連載]
◆糖尿病に合併する感染症 :企画 永淵正法
(第21回)耳鼻科領域感染症 ‥‥‥‥‥‥ 玉川俊次,山中 昇