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月刊糖尿病 13年5月号
月刊糖尿病2014年6月号 SOLD OUT

2014年5月20日発売
A4変型判/80頁
価格:本体2,500円+税
ISBNコード:978-4-287-82060-5
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特集●糖尿病患者の口腔の健康管理

企画編集/和泉雄一
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 糖尿病患者の口腔内では,高血糖による易感染性だけでなく,唾液分泌量の減少による口腔内自浄作用の低下によって,感染や炎症が起きやすくなっている.歯周病,う蝕,粘膜疾患などが発症しやすく,また,口腔内の治療に対しては治癒の遅延や反応の低さがみられる.
 糖尿病が影響を及ぼすさまざまな口腔疾患のうち,とくに歯周病は「糖尿病の第6の合併症」として,近年,注目されるようになってきている.多くの臨床研究により,糖尿病患者で歯周病の発症率が高く,また歯周病患者の糖尿病が悪化しやすいことが知られるようになってきた.歯周病は,歯肉の炎症や歯槽骨吸収を呈するが,ほとんど自覚なく進行するため,日本人の約70 %に何らかの症状があるとされている.その原因は,歯周病原菌を含んだ口腔内バイオフィルムである.歯と軟組織の境界となる歯周ポケット内に細菌性バイオフィルムとしてプラークが蓄積することで,歯周組織の免疫系を介して炎症が生じる.この局所での炎症が全身状態と相互に影響しあうと考えられている.
 口腔内の炎症を歯周病治療で取り除くことにより,インスリン抵抗性の改善や血糖値の低下がもたらされることが,これまでに複数の介入研究において報告されている.これは,糖尿患者に対する内科的治療に加えて,歯周病などの口腔疾患の管理によって糖尿病管理が改善する可能性を示唆している.
 近年では糖尿病だけでなく,肥満やアテローム性動脈硬化と歯周病の関連性も指摘されており,いずれも口腔内の炎症のコントロールが重要な鍵となっている.肥満はインスリン抵抗性を発症した前糖尿病段階であることが多く,インスリン抵抗性は動脈硬化の明らかなリスク因子である.さらにアテローム性動脈硬化の形成などの循環器疾患は糖尿病患者に大血管障害として生じうる.その病態に根深く関与するインスリン抵抗性の発現に,歯周病が慢性炎症としてかかわっている可能性が推察されてきている1)).世界保健機構(WHO)は糖尿病,心血管疾患をがんや慢性閉塞性肺疾患などと共に,非伝染性疾患(Non Communicable Diseases;NCDs)として「21世紀の世界的な発展にとって重大な健康上の課題」と認識している.これらに歯周病が関与しているというエビデンスの蓄積は,糖尿病患者の管理において,歯周病が単に口腔内の一疾患という範疇を超えた対応が望まれることを示しているとも考えられる.
 今後,わが国では糖尿病患者が糖尿病予備軍まで入れると2000万人まで増加すると予想されており,一方の歯周病も,40歳以上の8割に進行した歯周炎の罹患が報告されている.増加が予想される糖尿病と歯周病の両者が互いに密接に関連しているという事実への理解は,迎えるべき高齢社会のQOL向上を導くために必要と考えられる.従来とは異なったアプローチで,糖尿病,メタボリックシンドローム,心血管疾患を防ぐためにも,いままでよりも有機的に医科・歯科が連携して取り組む医療制度の体制の確立が必要であろう.本企画では,その基礎となるような糖尿病治療に関連した歯科領域,口腔管理のトピックを,最新の情報をもとにわかりやすく解説する.
和泉雄一(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 歯周病学分野 教授)

参考文献 1) Nagasawa T et al., Intern Med. 2010; 49(10): 881-5.
特集●糖尿病患者の口腔の健康管理
1.糖尿病患者の口腔の特徴/水谷幸嗣,和泉雄一
2.糖尿病と炎症/南 勲,小川佳宏
3.歯周病とは/白方良典,野口和行
4.歯周病が全身におよぼす影響/小出容子,山本松男
5.歯周病と糖尿病の疫学/長澤敏行
6.歯周病と糖尿病の双方向の関連メカニズム/片桐さやか,水谷幸嗣,和泉雄一
7.歯周病治療の血糖コントロールへの効果/鈴木允文,新田 浩
8.糖尿病治療における歯周病への効果/片桐さやか,井上修二
9.糖尿病患者への口腔疾患予防/荒川真一
10.糖尿病患者への歯周病治療/永田俊彦,二宮雅美
11.糖尿病患者への口腔外科治療/古森孝英
12.歯の喪失の栄養摂取への影響/安藤雄一
13.糖尿病関連疾患と歯周病:肥満/林田秀明,古堅麗子,齋藤俊行
14.糖尿病関連疾患と歯周病:心臓循環器疾患/青山典生,鈴木淳一
15.糖尿病関連疾患と歯周病:腎臓病/美馬 晶