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月刊糖尿病 13年5月号
月刊糖尿病2015年8月号 SOLD OUT

2015年7月21日発売
A4変型判/96頁
価格:本体2,700円+税
ISBNコード:978-4-287-82074-2
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特集●糖尿病・CKD合併高血圧の降圧目標と第一選択薬〜古くて新しい問題をどう考えるか〜

企画編集/木村健二郎(JCHO 東京高輪病院 院長)
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 CKD(慢性腎臓病)は2002年に米国から提唱された概念で,①GFR<60 ml/min/1.73 m2または(かつ)②尿蛋白(アルブミン)陽性が3ヵ月以上持続する病態,ということでのみ定義されている.したがって,CKDは慢性に経過する全ての腎臓病を包括する概念である.CKDは末期腎不全のみならず脳卒中や心筋梗塞といった心血管疾患の高危険群であることが分かっているため,早期に発見して対策をたてなければならない.その頻度は,全国で13 %,1330万人と言われている.しかし,神奈川県慢性腎臓病対策協議会の調査では,かかりつけ医に何らかの慢性疾患で通院中の非糖尿病患者の実に43 %がCKDであった.しかも,腎臓病と認識されている患者は3 %弱であった.CKDは思った以上にありふれた病態であるが,その多くは見逃されているという実態を示す数字である.
 CKDには慢性糸球体腎炎などの狭義の腎臓疾患や腎毒性物質への暴露による腎障害が含まれるが,加齢,高血圧,糖尿病,メタボリックシンドローム,肥満,脂質異常などの「加齢や生活習慣病」を背景としたCKDが増加していることが指摘されている.CKDにおける危険因子のうち,高血圧と糖尿病は特に重要である.両者とも血管障害の重大な危険因子であり,腎臓は血管の塊といっても良いほど血管に富む臓器だからである.
 本特集は「糖尿病・CKD合併高血圧の降圧目標と第一選択薬〜古くて新しい問題をどう考えるか〜」というテーマで企画した.高血圧はCKDの原因となりまた既存のCKDを悪化させる.CKDは高血圧の原因となりまた既存の高血圧を悪化させる.したがって,CKDと高血圧の間には悪循環が形成される.CKDと高血圧が併存すると両者は急速に悪化して,坂を転げ落ちるように末期腎不全に向かい,その過程で心血管疾患を発症してくる.また,これに糖尿病が合併するとさらに予後が悪化する.したがって,CKDにおける高血圧は厳格に管理しなければならない,と言われてきた.しかし,どのような薬剤を使用して,どこまで血圧を下げたら良いのか,血圧値の下限はあるか,などここ何十年と議論されてきた.Ca拮抗薬が降圧薬として使えるようになるまでは,腎障害があれば,あまり血圧は下げない方が良い,と言われていた.しかし,ACE阻害薬やARBなどRA系阻害薬が使えるようになると,これらの薬剤は輸出細動脈を選択的に拡張して糸球体内圧を下げるので,腎保護的に働くということが主張され,血圧も130/80 mmHg未満を目指すべきということが言われるようになった.中にはRA系阻害薬は降圧薬というより腎疾患薬であるから,血圧ではなく尿蛋白を指標に使用し大量に使うべきであるという議論までなされた.同時に,Ca拮抗薬は輸入細動脈を拡張するので,腎保護の観点からは使用しない方が良いとの主張もあった.さらに,ACE阻害薬とARBの併用はどうか,第二選択薬はCa拮抗薬か利尿薬か,などの議論もされた.その間,多くのエビデンスが集積されてきたので,それらを網羅的に精査して「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013」(日本腎臓学会編)が出版された.このガイドラインでは従来の治療方針をエビデンスに基づいて見直した.本特集では,そのあたりの事情とCKDにおける降圧療法のあり方を各分野のエキスパートの先生方に解説して頂いた.読者の皆様の日常診療に役立つものと期待している.
木村健二郎
(JCHO 東京高輪病院 院長)
1.CKDの定義と病態/永井 恵・山縣邦弘
2.CKDにおける高血圧のインパクト/平田恭信
3.糖尿病非合併CKDの高血圧
 3-1.降圧目標/田村功一・金口 翔・白 善雅・岩本彩雄
 3-2.第一選択薬/中川直樹・長谷部直幸
 3-3.推奨される併用療法/福田道雄・伊藤裕之・大手信之
 3-4.高齢者における留意点/岡田浩一
4.糖尿病合併CKDの高血圧
 4-1.降圧目標/今井圓裕
 4-2.第一選択薬/金﨑啓造・古家大祐
 4-3.推奨される併用療法/柏原直樹・庵谷千恵子・桑原篤憲
5.小児糖尿病・CKDにおける高血圧治療/三上直朗・武田良淳・石倉健司