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WOC Nursing 14年1月号 SOLD OUT
A4変型判
価格:本体1,886円+税
ISBNコード:978-4-287-73004-1
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特集ここまで治る! ラップ療法のすべて
〜ラップ療法の基本と応用から不適応事例まで〜

企画編集/岡田晋吾
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 ラップ療法は2000年に鳥谷部俊一先生が発表した方法です。従来の方法とは違い,褥瘡治療に食品用ラップを用いるという画期的な方法でしたが,ラップを用いるという方法論だけでなく併せて創傷治療に関する正しい考え方を広く普及せしめたことに大いに敬意を払われるべきでしょう。
 ラップ療法はその後多くの施設でさまざまな工夫,改良が加えられ,いまやラップを使わないラップ療法にまで進化してきました。ラップ療法が普及した理由として,①医療用ドレッシング材を用いることより安価であること,②創面に対する摩擦が少ないこと,③比較的簡単に処置できることが挙げられます。そのため当初は介護施設などを含む在宅の現場から広く普及しました。その後日本褥瘡学会学術集会などでの議論を通じて,2010年3月に日本褥瘡学会による「いわゆる『ラップ療法』に関する日本褥瘡学会理事会見解(https://www.jspu.org/jpn/info/pdf/20100303.pdf)」が出されたことによって,一定の条件のもとでラップ療法を行うことが認められました。さらに,水原章浩先生を中心とした優れた臨床研究によりラップ療法による褥瘡治療についてのエビデンスも示され,その結果日本褥瘡学会のガイドラインにも掲載されました。
 一方で医療環境の変化により専門的な治療を必要とする状況のままでの転院や退院となることも多くなってきています。さらに日本は急速な高齢化を迎え,介護施設や在宅で疾患を抱えながら生活をする高齢者が増えており,以前よりも療養環境が多様化してきています。褥瘡治療の現場も急性期病院から慢性期病院へと広がり,さらに介護施設や在宅へと広がっています。このような状況のなかで患者や家族に負担をかけずに適切な褥瘡治療を提供することが強く求められており,その意味でラップ療法は簡便,低コストであり,多くの現場が求める治療法であるといえましょう。
 ラップ療法の急速な広がりによって,褥瘡治療を行う現場のニーズに合わせた治療法を医療者側の視点だけでなく,患者はもちろん介護者の視点に立って選択していくことの重要性を改めて教えられたと感じています。ただ,現在の褥瘡治療の現場では治療法の選択がダブルスタンダードとなっている状況も散見されるようになっています。つまり急性期病院などではドレッシング材を用いた褥瘡ケアを行い,その後の治療を引き継ぐ在宅や介護施設でラップ療法を行うような状況です。個々の患者に適した治療法を,ケアに関わる医療,介護者が病院,在宅の垣根を越えてしっかりと考えることが求められており,ラップ療法はその選択肢として重要です。ただし,正しい方法で行わなければ創が悪化し,逆に患者や家族に負担となることもあります。今回の特集でラップ療法のすべてを知って明日からの臨床現場で役立てていただきたいと思います。
岡田晋吾(おかだ しんご)
北美原クリニック 理事長,函館五稜郭病院 客員診療部長
特集
1章 ラップ療法の歴史とその意義 末丸修三
2章 ラップ療法のエビデンス 武内謙輔
3章 褥瘡治療の基本的な考え方とラップ療法の意義 岡本泰岳
4章 ラップ療法の基本手技 水原章浩
5章 認定看護師の立場からみたラップ療法 松原恵み
6章 ラップ療法の合併症とその対策〜熱傷のラップ療法まで〜 水原章浩
7章 在宅でのラップ療法 小林和世
8章 介護施設におけるラップ療法〜看護師・介護職員の協働の重要性〜 大西山大
9章 ラップを用いないラップ療法 秋山和宏
10章 ラップ療法の正しい普及のために 江川安紀子

コラム
台湾への湿潤療法,ラップ療法の普及 水原章浩