HOME雑誌WOC Nursing > WOC Nursing 14年2月号
WOC Nursing 14年2月号 SOLD OUT
A4変型判
価格:本体1,886円+税
ISBNコード:978-4-287-73005-8
全ページカラー印刷
特集ノーリフトで褥瘡ケア
〜腰痛予防対策はケアの質を必ず変える〜

企画編集/保田淳子
画像をクリックするとサンプルをご覧いただけます
トビラ[PDF 特集[PDF 特集[PDF 特集[PDF
 看護現場において腰痛の発生する場面として,「移乗介助」,「トイレ介助」,「ベッド上でのおむつ交換」,「入浴介助」などが必ず高い頻度で挙がります。①人が抱えられない重さを持つ,②不良姿勢の時間の長さ(5秒以上)が腰に負担をかけている,ことが腰痛の二大要因であることをご存知でしょうか。2008年に日本に帰国して以来,そのような腰痛の原因となる状況が,実は,ケアの質にも大きく影響することを,施設や病院に行くたびに実感しています。たとえば,拘縮や褥瘡の悪化,あるいは表皮剥離をみていくと,人の力による無理な移動や移乗に起因していることが多々あります。
 海外では,「No Lifting Policy(オーストラリア,イギリス)」,「Zero Lift Policy / Safe Patient Manual Handling(カナダ,アメリカ,北欧)」のように,1998年頃より看護師や介護職の腰痛予防対策を実施し,労災申請費用補助などを通じて労働環境改善が図られてきました。そして,「患者は自分自身で動くことを奨励され,リフトやシートなどの用具の使用が患者のリスクを減らすのに有益と考えられる場合は,必ずそれらを使用する」ことがケアの標準とされています。日本と諸外国との腰痛発生率の差を教育や文化の相違として片付けてしまってよいのでしょうか。
 日本においても2013年,厚生労働省が19年ぶりに腰痛予防対策指針を改訂し「人による抱上げを禁止」しました。しかし,日本で一般的な腰痛予防対策方法が労災申請の適応になることや腰痛予防対策指針違反に該当することは,ほとんど知られていません。日本の看護師や介護職が腰痛予防対策を知らないことが,腰痛発生率の高さにつながっているのではないでしょうか。日本において腰痛予防対策として1番に挙がるのは「ボディメカニクス」ですが,海外ではボディメカニクスは腰痛予防対策には無効であるという文献もあります。また,ボディメカニクスは人力による移乗介助に使うのではなく,機器を使うときに使用するものだと定義されています。日本の看護師や介護職の腰痛率の高さを諸外国と比較してみると,ボディメカニクスを腰痛予防として使う対策が有効でないことがわかります。日本の腰痛予防対策は,リスクマネジメントの視点からも,原因(重さと不良姿勢)と対策(ボディメカニクス)の整合性に乏しいようです。また,車椅子に座ることもなく寝かせきりの状態となる,廃用症候群という言葉が存在するケアの現状もあります。
 本特集では,以上のような現状を踏まえて,ノーリフト・ポリシーの実践と褥瘡管理について,現場での実践を中心に紹介します。
保田淳子(やすだ じゅんこ)
社団法人 日本ノーリフト協会 理事長
特集
1章 ノーリフト®とは 保田淳子
2章 無理なく動ける環境づくり〜ノーリフトがなぜ拘縮予防につながるのか〜 伊藤亮子
3章 ノーリフトから始めよう「全人的褥瘡看護」3つの軸 窪田 静
4章 褥瘡予防とノーリフトで使う福祉用具 栄 健一郎
5章 ノーリフト導入の実際〜生活の質を高める〜 谷川智子ほか
6章 退院支援におけるノーリフトの取り組み 鶴屋邦江ほか
7章 押さえておきたい指針や制度〜「腰痛予防対策指針」改訂〜 石田昌宏
8章 看護・介護職場での腰痛問題 垰田和史
9章 海外でのノーリフトの実践〜腰痛予防から広がった働く環境の改善〜 保田淳子