HOME雑誌WOC Nursing > WOC Nursing 14年3月号
WOC Nursing 14年3月号 SOLD OUT
A4変型判
価格:本体1,886円+税
ISBNコード:978-4-287-73006-5
全ページカラー印刷
特集どんなストーマが,よいストーマ?!
企画編集/穴澤貞夫
画像をクリックするとサンプルをご覧いただけます
トビラ[PDF 特集[PDF 特集[PDF 特集[PDF
 世界で初めてのストーマ造設術が行われてから300年が経過しましたが,外科医のさまざまな創意工夫にもかかわらずコンチネンス(禁制)のあるストーマの開発には至っていません。したがって現在ストーマを造設すれば必ず究極の排泄機能障害である完全失禁がもたらされることになります。しかし,厳格な衛生管理思想のもとで営まれている現代社会では,完全失禁状態を放置して生活を営むことは困難であり,ストーマ造設者はなんらかの手立てを講じてストーマからの排泄をコントロールする必要があります。現在この手立てとして,ストーマ装具という排泄管理用に特別に開発された装着具で対処する自然排便・排尿法による管理で不完全ながらも禁制状態を維持しています。
 しかしストーマ造設によってオストメイトにもたらされる障害は排泄機能障害だけではありません。ストーマ造設によってオストメイトには多様な障害がもたらされ,そのすべての障害の克服がストーマリハビリテーションの目的です。とはいえ,これらのすべての障害はなんらかの形でストーマにつながっているため,それぞれの障害からみてどんなストーマが障害克服に関係しているかを論じることが「どんなストーマがよいストーマか」という本特集の目的でしょう。しかし本特集ではそのようなオストメイトに生じる障害を俯瞰的に論じる編集方針はとれません。残念ながらストーマリハビリテーション学そのものがそれを論じられるほどのレベルに達していないからです。また無理にそのような編集方針をとれば,本特集があまりに総花的になって論点が定まらず,最終的に読者の明日からのストーマリハビリテーション活動に具体的な寄与ができるものに仕上がる見込みが持てないからです。したがって本特集では広範なストーマ障害のなかから最も喫緊の課題である排泄機能障害にまとを絞って企画編集を行いました。
 完全失禁を克服するため現在の標準的ストーマ排泄管理では,ストーマ装具というストーマ排泄管理用に開発された特殊な装着具をストーマ部に装着し,禁制機能を代行させます。ストーマ装具は,便・尿を①採取し,②貯留し,③廃棄する,という3つの機能を備える必要があります。このうち②貯留と③廃棄という2つの機能は近年のポリマー工学の進歩によっておおむね許容できるレベルに至っているといえます。しかし①採取機能についてはさまざまな課題を抱えています。
 便・尿を安定して装具内に採取するためには,どんな条件にあるストーマに対しても安定した装具装着と安定した装着維持がなされる装具でなければなりません。しかし現実問題として,今のストーマ装具は「装着・維持に適したストーマ」に対してしか対応できていません。そこで,ここでは装具装着・維持に適したストーマをよいストーマと呼び,装具装着・維持困難なストーマを悪いストーマとしたいと思います。よいストーマを論じるには,悪いストーマを論じることが不可欠です。一体どのような条件を備えたストーマがよいストーマなのでしょう? 反対に一体どのような条件が欠落したストーマが悪いストーマなのでしょうか?
 よいストーマによってどのような利益が,悪いストーマによってどのような不利益がオストメイトにもたらされるか,よいストーマを造設するにはどのようなことに留意して術前準備をし,手術を行い,術後管理を行わなければならないか,悪いストーマとならないためには,どのような周手術期管理を行わなければならないか。私たちが渇望するよいストーマのもとで可能となるはずのよいストーマ管理を,長期に維持するためには,一体何をしなければならないのでしょうか。
 このような論議を突き詰めていくと,よいストーマとは装具装着・維持に適したストーマであるという結論にたどり着きます。そしてよいストーマの正しいコンセプトを認識することこそが,ストーマ排泄管理,否ストーマリハビリテーションの根幹であることに気付かされます。本特集は以上のような考えで編集が行われましたことをご理解ください。
穴澤貞夫(あなざわ さだお)
高津看護専門学校 校長
特集
序章 ストーマは,単純にして複雑な人工構造物 穴澤貞夫
1章 管理困難なストーマとはどのようなストーマか 竹島久美子
2章 早期合併症とストーマ管理困難 大垣聡子・玉城洋子
3章 晩期合併症とストーマ管理困難 松浦信子
4章 ストーマ管理困難がオストメイトの日常生活や心理に及ぼす影響 梶原睦子
5章 よいストーマ造設のためのストーマ手術創デザイン 山田陽子 ほか
6章 管理に適したストーマの造設手術 板橋道朗 ほか
7章 ストーマ術直後管理 梶原睦子
8章 適正なストーマ装具はどのように選択されるのだろうか 熊谷英子
9章 漏れの判定と耐久時間 大村裕子
10章 ストーマケア評価ツールである「ストーマ管理度」 江川安紀子
11章 皮膚障害−ストーマ管理評価の指標としての意義 大村裕子
結びに ストーマケアのDynamism 青木和惠