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WOC Nursing 14年5月号
A4変型判
価格:本体2,000円+税
ISBNコード:978-4-287-73008-9
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特集足の褥瘡を識る〜ケアの対応を見極める〜
企画編集/寺師浩人
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 私は,踵外側部に生じた「創傷」を単に「褥瘡」と短絡的に結びつける危険性を日頃から感じています。踵部は仰臥位で仙骨部の次に圧を受けやすい部位ですが,たとえ寝たきりの患者であっても褥瘡ではないこともあります。褥瘡を契機に重症下肢虚血(critical limb ischemia;CLI)に陥る患者も多くみられます。また褥瘡であったとしても,その病態学や診断学が講じられた後に「褥瘡」と診断され看護・治療・介護に進まなければ医療ではありません。
 一方,日本における糖尿病患者の総数は1千万人の大台に乗り,透析患者も30万人を超え,ともに増え続けています。これらの患者の多くは末梢動脈性疾患(peripheral arterial disease;PAD)を合併していることから,CLIへ進展し踵部に創傷を持つ患者も多くみます。超高齢化社会に突入し,日本の人口は減少しているにもかかわらず,糖尿病,透析,動脈硬化性病変を持つ患者は増加の一途です。
 いま皆さんがみている患者の「褥瘡」が本当に「褥瘡」かという観点に立脚することが重要ですので,前半部には解剖を含め上述した病変に主眼を置いた内容を組みました。
 さらに,後半部では歩行する人に生じる創傷を取り上げました。日本では糖尿病患者の半数が末梢神経障害を合併していますので,約500万人の患者の足に創傷を生じる可能性があります。このような患者は,歩行しなければ創傷の発生はありませんので,私は「歩く褥瘡」と呼称しています。歩行することにより悪化するため,通常の褥瘡同様に,除圧の意識を治療学的観点のみならず予防的観点からも持つ必要があります。
 同様な機序により「歩く褥瘡」を発生する疾患に二分脊椎症があります。糖尿病と異なり動きの早い若い患者が多いのが特徴です。知覚鈍麻ではなく先天的な知覚麻痺ですから,教育的指導も重要です。いずれにしても適切なフットウェアの作成は欠かせません。
 最後に,近年問題となっているDVT予防のための弾性ストッキングによる医療機器関連圧迫創を取り上げました。ときに足趾の切断に至る可能性のある医原性褥瘡の予防対策を紹介します。
寺師浩人(てらし ひろと)
神戸大学医学部附属病院 形成外科 教授
特集
1章 足の褥瘡ケアに必要な下肢の局所解剖 上村哲司
2章 足部の創傷に必要な動脈の血流アセスメント 白記達也・飯田 修
3章 踵部褥瘡の局所徐圧方法 丹波光子
4章 踵部褥瘡の局所治療(手術療法を含む) 大浦紀彦ほか
5章 腓骨部褥瘡の局所徐圧方法 松岡美木
6章 糖尿病性足病変の診断のための神経学的アセスメント 安田 斎
7章 糖尿病性足病変による足部変形について 菊池 守
8章 糖尿病性足病変による足底胼胝下潰瘍のケア 藤井美樹ほか
9章 二分脊椎症患者に生じる足の褥瘡について 辻 依子
10章 除圧のためのフットウェア製作 大平吉夫
11章 DVT予防のための弾性ストッキングによる圧迫創対策 松本衣代ほか
訂正文
『WOC Nursing』2014年5月号において,以下の箇所に誤りがありましたので,
お詫びして訂正いたします。

11章 DVT予防のための弾性ストッキングによる圧迫創対策
p76 図2
 誤:左側写真「後脛骨動脈触知」,中央写真「足背動脈触知」
 正:左側写真「足背動脈触知」,中央写真「後脛骨動脈触知」
(誤)

(正)

皆様にご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。