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WOC Nursing 21年1月号 |
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A4変型判 2021年1月発行
定価2,640円(本体2,400円+税10%) ISBNコード:978-4-287-73086-7
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特集●WOCケアに活かす 皮膚真菌症の基礎知識
企画編集/望月 隆(金沢医科大学 皮膚科学講座 教授) |
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普段あまり意識することはないと思いますが,私たちの身の周り,皮膚,そして私たちの体内は微生物に溢れています。微生物のなかでは大型とはいえ,カビ(真菌)も基本単位はたかだか10ミクロンの細胞です。これは,ヒトの裸眼の検出限界である0.2 mmの20分の1にすぎません。そのため,そのままでは私たちの眼に触れることはなく,大量に増殖したものがキノコ,風呂場の黒い汚れ,あるいは餅やパンの上のカビなどとしてようやく認識されることになります。こうした真菌は地球上で150万種類以上存在するとされていますが,ほとんどの真菌はヒトと関わりなく,あるいは害を及ぼさずに存在していますし,中にはパン酵母やコウジカビなど有益なものも含まれています。しかし,ごく少数の真菌,おそらく100種程度が皮膚に感染して病原性を示すと考えられています。
今回のテーマである皮膚真菌症は,生命に直接の影響があることは少ないのですが,患者のケアを行ううえで,また皮膚の健康を考えるうえで避けることができない大きな疾患群です。実際,皮膚科の外来新患患者の約1割が白癬などの皮膚真菌症であったこと,また推定で2500万人の足白癬患者が存在することが知られています。さらに超高齢社会の進行に伴い,皮膚真菌症の有病率の上昇が懸念されています。皮膚科医は日常こうした皮膚真菌症に向き合っているのですが,常にうまくコントロールできるわけではなく,診断,治療に手こずる例をしばしば経験します。この原因としては,皮膚症状が多彩で,皮膚真菌症に類似する多くの疾患が存在すること,逆に「まさか真菌がいるとは」と驚かされるような症状の皮膚真菌症が存在することが挙げられます。たとえば白癬菌が角質に感染すると湿疹反応が引き起こされますが,見た目だけでは白癬かかぶれ(接触皮膚炎)か,鑑別が困難な例もまれではありません。また真菌検査が行われず誤診されたまま治療され,難治とされていた例を診ることもあります。気軽に真菌検査にアプローチできないことも診断の困難さの一因になっているように思います。また治療に手こずる例では,発症の誘因に対するアプローチが必要であることも少なくありません。IAD(失禁関連皮膚炎)では皮膚の最外層の角質の浸軟,劣化が起こり,微生物に対する感染防御能力が低下して,そこに皮膚真菌症が発症してきます。こうした状態のままで抗真菌薬を使用しても適切なスキンケアが行われないかぎり,再燃・再発は避けられませんし,治療薬による接触皮膚炎が生じる可能性も高まります。この分野は皮膚科医もチーム医療の大切さを認識しているところです。
この特集では,皮膚真菌症の専門家に皮膚真菌症診療の実態をなるべくわかりやすく解説していただき,あわせて実践のうえでの工夫も紹介いただくようにお願いしました。この特集が皮膚の健康に興味をお持ちの皆さまのよりよいケアの実践,そしてチーム医療の推進に役立つことを心から願っています。
望月 隆
金沢医科大学 皮膚科学講座 教授
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〔総説〕
1. 真菌とは,そして皮膚真菌症とは/北見由季
2. 真菌検査法の基本/藤広満智子,小川妙呼
3. 皮膚科領域の抗真菌薬/佐藤友隆
〔各論〕
1. おむつ周辺の皮膚カンジダ症/田邉 洋
2. 知っておきたい体幹にみられる皮膚真菌症/竹田公信
3. 高齢者の頭部,顔面,体部白癬/角谷廣幸
4. 高齢者の足・爪白癬/渡邉晴二
5. フットケアと爪真菌症/高山かおる
6. 抗真菌剤含有ソープとスキンケア/髙橋秀典
7. 在宅患者で留意すべき皮膚真菌症/丸山隆児
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