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WOC Nursing 21年3月号
A4変型判
2021年3月発行
定価2,640円(本体2,400円+税10%)
ISBNコード:978-4-287-73088-1
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特集褥瘡・スキン-テア患者における栄養サポート
企画編集/真壁 昇(関西電力病院 疾患栄養治療センター 栄養管理室 室長,美作大学 客員准教授)
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 わが国は世界で最も高齢化が進み,種々の治療と並行した褥瘡・スキン-テアの予防と管理が注目されています。褥瘡では,とくに重度褥瘡患者が激減し,体圧分散管理とともに栄養管理の重要性が示されてきました。そもそも,なぜ栄養管理が創傷治癒の1つの柱となるのでしょうか? ?身体は,種々の急性疾患に伴い侵襲が生じ,炎症性サイトカインが放出されます。これらは新型コロナウイルス感染症でも同様であり,C反応性たんぱく(CRP)などの炎症マーカーが増加し,一方で血清アルブミン(Alb)が減少します。CRPとAlbはどちらも肝臓で産生され,両者は相反した動きをします。そのため,Albは急性期の栄養指標としては参考値程度であり,本来は除脂肪体重(lean body mass;LBM)が適切な指標です。たとえば,末梢輸液のみで,栄養を摂らない状態が続くと栄養障害が生じます。生体内では,肝臓と筋肉のグリコーゲンによって生命維持が図られますが1日程度で枯渇するため,その後はLBMが消費されます。侵襲度が増加するほど栄養消費量が増えるため,LBMの減少が進行し栄養障害が増悪します。このLBMの減少に伴い,筋量や血清たんぱく質をはじめとした内臓たんぱく質,免疫能の障害および臓器障害が生じることが知られ,LBMが健常時と比して30〜40%以上喪失すると,窒素死(nitrogen death)と呼ばれる不可逆的な生命の危機が生じます。また,LBMの減少率が高くなるほど,経口摂取由来のたんぱく質は創傷治癒に利用されにくくなります。このようにLBMの維持・改善によって,創傷治癒が進展する環境を醸成することから,栄養管理が重要となります。
 近年,褥瘡治癒を促進する特定の栄養素が報告されています。これまで,たんぱく質と亜鉛,アスコルビン酸のシステマティックレビューでは,その有用性が示されない報告がありました。しかし,条件の異なるメタアナリシスが行われた結果であり,実臨床では種々の栄養素のランダム化比較試験(randomized controlled trial;RCT)が参考になります。まもなく「褥瘡予防・管理ガイドライン(第5版)」の発表が予定されていますが,現行の第4版では新たにL-カルノシン,コラーゲン加水分解物などが追加され,日本人の褥瘡患者を対象としたRCTの結果が示されました。そこで本特集では,本RCTを実際に研究された先生方にご執筆をお願いし,皮膚看護領域の専門家であるWOCナースのためにわかりやすくカスタマイズいただきました。
 一方,褥瘡の予防・管理とともにスキン-テアへの関心が増しています。スキン-テアは,紫斑や強い痛みを伴うことが多いことから虐待とも間違われることがあり,またQOLを低下させることから,その対策が急務となっています。これらを背景とし,平成30(2018)年度の診療報酬改定において,褥瘡のアセスメントの危険因子に新たにスキン-テアの項目が追加されました。しかるに,日本においては栄養とスキン-テアの関連に着目した報告は少なく,一方で諸外国においても褥瘡ガイドラインに準じた対応が散見されるなど,学際的に進行中の領域です。本特集では現時点での既報を盛り込むとともに,WOCナースの視点で栄養を探求し,今後の研究にもつながる構成を配慮しました。日常の臨床現場,そして研究のなかで,本分野の専門家であるWOCナースにご活用いただくためのバイブルとなることを祈念いたします。

真壁 昇
関西電力病院 疾患栄養治療センター 栄養管理室 室長,美作大学 客員准教授
1. すぐにわかる! 創傷と栄養のい・ろ・は/水野英彰,朱通弓子,横島将光
2. ガイドラインから栄養を探求する/岡田有司
3. たんぱく質の必要量と摂り方の実際/濵田康弘
4. 特定の栄養素:L-カルノシンによる褥瘡の治癒促進効果/榮 兼作,柳澤裕之
5. スキン-テア領域における栄養研究の最新知見と研究のススメ/飯坂真司
6. ICU患者の栄養管理に係わる褥瘡・スキン-テア対策の最前線/諸見里 勝
7. 回復期リハビリテーション病棟における褥瘡・スキン-テア対策と栄養ケア/藤原謙吾,一瀬絵梨,西岡心大
8. 在宅での創傷患者における栄養サポート最前線/塩野﨑淳子