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WOC Nursing 21年9月号
A4変型判
2021年9月発行
定価2,640円(本体2,400円+税10%)
ISBNコード:978-4-287-73094-2
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特集老人性乾皮症/ドライスキンの治療・ケア
企画編集/戸倉新樹(中東遠総合医療センター アレルギー疾患研究センター長/皮膚科・皮膚腫瘍科 診療部長,浜松医科大学 名誉教授)
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 乾燥肌あるいはドライスキンと呼ばれる皮膚状態への対処は,古くて新しい,しかもごく日常診療上の課題です。とくに,ほぼすべての高齢者に多かれ少なかれみられる老人性乾皮症は,医療の現場では十分なケアを必要とする疾患です。老人性乾皮症はかゆみを惹き起こしますが,腎不全や肝不全に伴う皮膚掻痒症や他の疾患と鑑別が必要です。時には疥癬が老人性乾皮症と誤診されていることすらあります。
 老人性乾皮症やドライスキンは皮膚表面の水分が足らなくなるために起こります。皮膚の水分は皮膚の最外層にある角層という部分に蓄えられています。角層の厚さはわずか0.02 mm足らずですが,角層には巧妙に水分を保持する3つの保湿装置があります。これらは皮脂膜,天然保湿因子,角質細胞間脂質であり,高齢者ではそれらが低下し,水分を失います。アトピー性皮膚炎の4分の1の患者ではフィラグリン遺伝子変異が認められ,表皮のフィラグリンは欠乏しています。フィラグリンは角層のバリア機能や,ひいては水分保持に関わるため,フィラグリン遺伝子変異患者では尋常性魚鱗癬というドライスキンの極型を呈します。角層バリアは機能が低下し,角層の水分保持能は低下します。老人性乾皮症と診断される患者のなかにはフィラグリン遺伝子変異をもつ患者がおり,老人性乾皮症とアトピー性皮膚炎との境は不明瞭になります。患者によってはアトピー性皮膚炎の一症状として老人性乾皮症を示しているといえるでしょう。一方では,老人性乾皮症が発汗低下を示す病態によって生じている可能性もあり,その成因は多様です。
 老人性乾皮症はかゆいために掻破し湿疹化し,皮脂欠乏性湿疹となります。さらに掻けば滲出性の湿疹となり,ぐじゅぐじゅした貨幣状湿疹になります。これが続けば湿疹性病変が全身に飛び散り,自家感作性皮膚炎になります。つまり老人性乾皮症は全身性の汎発性湿疹の元になっています。
 こうしたドライスキンから湿疹に至る老人性乾皮症から皮脂欠乏性湿疹の治療・ケアは,症状に応じてなされます。老人性乾皮症の段階では保湿剤を中心とした外用療法を行い,湿疹化した病変ではステロイド外用薬が中心になります。実際はドライスキンと湿疹は併存していることが多く,両方の治療・ケアをそれぞれの部位を考慮して行うことになります。
 現在,保湿剤は種々のものが上市されています。皮脂に相当するもの,天然保湿因子に類似するもの,角質細胞間脂質(セラミドが中心)を補填するものがあり,医薬品も医薬部外品・化粧品もあります。また製剤は,軟膏,ソフト軟膏,クリーム,ローション,スプレー,フォームとさまざまです。こうした非常に多種にわたる保湿剤をどのように選び,どのように使うかということは実践的な重要課題です。たとえば,塗布量の目安,塗布回数,塗布のタイミングを知らなければなりません。
 老人性乾皮症の患者の皮膚は鱗屑で毛羽立ち,さらに老人性の皮膚萎縮があります。毛羽立つ皮膚がスキン-テアを起こせば,皮膚の固定などその処置はさらに注意が必要になります。老人性乾皮症は二次災害を起こしやすい皮膚であり,ケアの必要性はその観点からも考慮すべきです。

戸倉新樹
中東遠総合医療センター アレルギー疾患研究センター長/皮膚科・皮膚腫瘍科 診療部長,浜松医科大学 名誉教授
1. かゆみを起こす代表的な高齢者の疾患/伊藤泰介
2. 保湿機能からみたドライスキンの病態/戸倉新樹
3. 発汗障害によるドライスキン/影山玲子
4. 老人性乾皮症とアトピー性皮膚炎の体質/戸倉新樹
5. 老人性乾皮症でかゆみが起こる訳/石氏陽三
6. 老人性乾皮症から皮脂欠乏性湿疹への進展/森本広樹
7. 老人性乾皮症の治療・ケア/森本広樹
8. 保湿剤の種類と特徴/小倉康晶
9. 保湿剤の塗布方法の実践/小倉康晶
10. 老人性乾皮症によく起こるスキン-テアの治療・ケア/大塚正樹
【お詫びと訂正】

弊誌2021年9月号特集「老人性乾皮症/ドライスキンの治療・ケア」におきまして,一部図の出典表記に誤りがありましたので,お詫び申し上げるとともに,下記の通り訂正いたします。
『WOC Nursing』2021年9月号
10章「老人性乾皮症によく起こるスキン-テアの治療・ケア」69ページ
 (誤)
図4 アームカバー,レッグウォーマーによるスキン-テア予防ケア
(写真提供)中東遠総合医療センター 皮膚・
排泄ケア認定看護師 中田博子様
 ↓
 (正)
図4 アームカバー,レッグウォーマーによるスキン-テア予防ケア
(出典)一般社団法人 日本創傷・オストミー・失禁管理学会『ベストプラクティス スキン-テア(皮膚裂傷)の予防と管理』別冊付録「弱くなった皮膚を守るためのしおり」p.6
また上記訂正に伴い,当該写真の著作権者である一般社団法人 日本創傷・オストミー・失禁管理学会様には,無断転載を謹んでお詫び申し上げます。今後二度とこのような事態が起こらぬよう編集部内でのチェック体制をより一層強化し,再発防止に努めてまいります。このたびは多大なご迷惑をおかけしましたことを重ねて深くお詫び申し上げます。(編集部)