特集●褥瘡患者の多職種連携栄養管理
〜コミュニケーションをどう取ったらいいの?〜
企画編集 | :瑙部幸 |
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発行 | :2025年7月 |
判型 | :A4変型 |
頁数 | :80 |
ISBN | :978-4-287-73118-5 |
定価 | :2,640円(本体2,400円+税10%) |
特集にあたって
褥瘡の治癒において,栄養管理はきわめて重要な役割を果たします。適切な栄養状態なくして褥瘡の回復は望めず,効果的な栄養介入こそが早期治癒の鍵となります。近年では,在院日数の短縮化や医療の高度化に伴い,より効率的かつ迅速な褥瘡管理が求められるなかで,栄養ケアの重要性は一層高まっています。
しかしながら,栄養ケアは管理栄養士だけで完結するものではありません。医師,看護師,管理栄養士,薬剤師,リハビリテーション専門職など,さまざまな専門職による包括的なアプローチによってこそ,患者の状態を多面的にとらえ,最適な介入が可能となります。多職種が連携することで,より的確で持続的な評価とケアの実現が期待されるのです。
とはいえ,現場において「連携」が思うように進まないケースも少なくありません。「うまく連携できない」「情報が共有されない」「職種ごとの視点の違いから意見がまとまらない」といった声もよく耳にします。多忙な日常業務のなかでは,職種間のコミュニケーション不足や情報共有の困難さ,時間的制約など,さまざまな課題が浮き彫りになります。
今回,管理栄養士としてこの特集を企画するにあたり,褥瘡に対する栄養介入について,管理栄養士の視点からの情報発信が期待されていると感じました。それと同時に,現場では「どう連携を築くか」「どう情報を共有し合うか」といった,より実践的な悩みが多いのではないかとも感じています。
本特集では,そうした現場の声に寄り添いながら,多職種連携による栄養管理のあり方や,円滑なコミュニケーションを促進するヒントを,実践的な視点から紹介していきます。
まずは,多職種連携の意義を改めて確認し,それぞれの専門職が担う役割や視点の違いをどのように理解するかという「考え方の整理」を行います。また,連携を深めるうえで欠かせない「コミュニケーション」に焦点を当て,日常業務に取り入れやすいカンファレンスの進め方や,IT を活用した情報共有の工夫など,明日から実践できるヒントも紹介します。さらに,栄養スクリーニングから評価,プランニングに至る一連の流れにおける役割分担や合意形成のコツ,現場でしばしば直面する「職種間の壁」や「時間的制約」といった課題への対応,さらには在宅・施設といった場を超えた継続的なケアの実現方法についても,リアルな現場に即したトピックを網羅的に取り上げました。
執筆者は,いずれも現場で日々奮闘している第一線の専門職ばかりです。だからこそ,理論だけでなく,「どうすれば実際にうまくいくのか」といった,現場で本当に役立つ知恵が詰まった内容となっています。巻末では,多職種連携がうまく機能している実際の取り組み事例も紹介しています。
この特集が,多職種それぞれの強みを活かしたチーム医療の推進に寄与し,褥瘡患者にとって,よりよい栄養ケアの実現につながる一助となることを願っています。
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