特集●内臓病変の皮膚表現,デルマドロームを知り,活かす
企画編集 | :上出良一 |
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発行 | :2025年8月 |
判型 | :A4変型 |
頁数 | :80 |
ISBN | :978-4-287-73119-2 |
定価 | :2,640円(本体2,400円+税10%) |
特集にあたって
本号のテーマである「デルマドローム」をご存じの看護師がどれくらいいるか不明ですが,知る人ぞ知るという類の医学用語でしょう。簡単にいえば皮膚をしっかり観察することで,内臓疾患の発見につながるということですが,“内臓病変の皮膚表現”ということを表す簡潔な言葉が必要ということで,1947年にKurt Wienerがその著書のタイトルとして使ったことが始まりです。その後,欧米の論文では“内臓病変の皮膚への発現”という言い回しが使われ,デルマドロームはほとんど使われることなく,なぜか日本だけでいまだに頻回に使用される不思議な概念となっています。一種のガラパゴス状態でしょうか? その理由として,20世紀半ばに,ちょうどそれまで性病を軸に皮膚科と泌尿器科がくっついていたものが,皮膚科は内科系,泌尿器科は外科系に分離した時期にこの概念が輸入され,皮膚科のidentityとして,デルマドロームの概念が注目されるようになったのではないかと推察しています。
看護師がみつけたデルマドロームとしてつとに知られているのは,Sister Josephの結節です。St. Mary病院の主任看護婦であったMary Josephは,臍部に腫瘤をもつ患者は開腹手術で悪性腫瘍が見いだされる,ということを経験的に知り,外科医のWilliam J. Mayoがこのことを学会で報告し,看護師Josephを讃える意味で1949年にBaileyが命名しました。この結節は内臓がんの臍転移であり,がん末期の症状で,残念ながら時すでに遅く予後は1年未満と不良です。単に“へそのしこり”として放置せず,本症の可能性を考えることが大切です。
皮膚をしっかり観察することで,その奥に潜んでいる内臓疾患を,まるで占いのように当てる? のは皮膚科医としての醍醐味でもあります。本特集では,全身を臓器やシステム,あるいは症候別に,皮膚への表現にどのようなものがあるかを,経験豊かな臨床医の方々に写真,図なども豊富に入れてやさしく解説していただきました。
看護師の専門性のなかで最も皮膚を看ることが多いと思われるWOCナースの方々に,皮膚表面のアセスメントのみならず,その奥にある変化を見抜く力をつけていただくために,この特集がお役に立てば望外の喜びです。
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