
特集●その褥瘡,治すべきか。
─エンドオブライフ期に看護師が下す“決断”─
| 企画編集 | :川邉綾香 |
|---|---|
| 発行 | :2026年9月(2026年9月18日頃発売予定) |
| 判型 | :A4変型 |
| 頁数 | :80 |
| ISBN | :978-4-287-73127-7 |
| 定価 | :2,750円(本体2,500円+税10%) |
特集にあたって
私は,在宅療養の場で療養者と家族の生活を支える訪問看護師であり,日々褥瘡ケアに携わってきた1人の看護師です。だからこそ,在宅における褥瘡ケアでは,看護師が“要”となる場面が数多く存在すると感じています。なぜなら,在宅は「生活」が見える場所であり,その人の生き方や価値観が最も色濃く表れる場だからです。
在宅で生じる褥瘡は,単に創部だけを切り取って理解できるものではありません。どのような環境で暮らし,どのような姿勢や習慣で日々を過ごしているのか。どのような選択を重ね,誰と時間を共有してきたのか。さらに,介護力や経済的背景,家族との関係性といった生活の文脈のなかで生じる褥瘡は,その人の人生の積み重なりが身体に表れた結果でもあります。
だからこそ,患者のそばで生活を支えている看護師が,褥瘡の発生要因や生活背景を含めて総合的に判断し,処置の必要性や方法を選択していくことが重要であると考えています。創だけを診るのではなく,暮らし全体を見渡しながら,その時々に必要なケアを的確に,適切に,そしてタイムリーに届ける。その判断と実践を現場で担うために,私は特定行為研修を修了しました。
エンドオブライフ期においては,こうした視点がより一層求められます。全身状態の低下や予後を見据えたとき,褥瘡ケアの目標は,必ずしも「治癒」に置かれるものではありません。むしろ,安楽や尊厳,生活の質をどのように守るかが重要となります。「何をするか」だけではなく,「何をしないか」「いつ立ち止まるか」という判断が,その人の最期の時間の質を大きく左右します。
処置を減らすことや,治癒を目標としない選択は,決してケアの放棄ではありません。それは,その人にとって本当に必要なケアとは何かを問い直し,限られた時間をより穏やかに,その人らしく過ごしてもらうための積極的な判断です。
本特集では,在宅,介護施設,急性期病院など,多様な現場でエンドオブライフ期の褥瘡ケアに向き合ってきた実践者の視点を集めました。それぞれの立場や役割は異なっていても,「治す」ことだけを目的とせず,その人の最期の時間を支えようとする姿勢には共通するものがあります。
褥瘡は,失敗の証ではありません。
それは,懸命に生きてきた身体が発する,ひとつのサインです。
本特集が,エンドオブライフ期における褥瘡ケアの目的を改めて見つめ直し,読者1人ひとりが,自らのケアや判断に静かな確信をもつための一助となれば幸いです。
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