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CIRCULATION 3月号
月刊循環器CIRCULATION 3月号

12年2月6日発売
A4変型判144頁
価格:本体¥2500+税
ISBNコード:978-4-287-83007-9
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特集ASOの診断と治療

企画編集/岡島年也
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目次 特集 特集 特集
 近年,日本人の食生活をはじめとする生活習慣の多くが欧米化してきたことと,人口構成の高齢化(2009年公表の簡易生命表によると,男性の平均寿命 79.59年,女性の平均寿命 86.44年)により,動脈硬化関連疾患とされる脳卒中や急性心筋梗塞などが増加の一途をたどっている.厚生労働省が公表した2010年の死因別死亡数の割合からみると,悪性新生物 29.5%,心疾患 15.8%,脳血管疾患10.3%と,心臓・脳血管疾患の死亡数の割合は悪性新生物とほぼ同等と考えられており,悪性新生物と同様,心臓・脳血管疾患の発症をいかに抑えるかが心臓・血管内科医の今後の最大の使命である.
 本特集のテーマである閉塞性動脈硬化症(arteriosclerosis obliterans;ASO)もこれらの動脈硬化関連疾患のひとつである.本疾患は動脈硬化性変化のために下肢動脈が内腔の狭窄あるいは閉塞をきたす結果,間歇性跛行を主とした下肢症状を自覚する疾患である.大多数の患者が間歇性跛行の状態で経過し,生活の質も軽度から中等度程度しか低下しないため軽視される傾向にあるが,まれに重症虚血肢といわれる潰瘍や壊疽病変を呈する状態ではじめて診断され,不本意にも下肢切断に至ることもあるため的確な診療が求められる.また,本疾患は心臓・脳血管疾患を合併する可能性が高く(心臓疾患 約50%,脳血管疾患 約20%),主な死因が心臓・脳血管疾患であることからも,本疾患の早期診断は他の血管疾患の早期診断にもつながり,生命予後改善に寄与するものと期待される.このような理由から,近時,ASOはpolyvascular disease とも称されるようになり,本疾患と診断した際には,他の血管疾患の精査も同時に行うよう推奨されている.
 ASOの診療体制は,ASOを専門とする内科医,外科医,放射線科医だけではなく,高血圧症,糖尿病,脂質異常症,腎臓病や禁煙指導を専門とする内科医も,ASOの予防から慢性期管理において重要な役割を担っている.また,腰部脊柱管狭窄症など整形外科疾患との鑑別にしばしば難渋することもあり,整形外科医との診療連携も重要である.
 フットケアをはじめ足病変の予防や治療は,糖尿病専門医をはじめとして皮膚科医や形成外科医が中心的役割を担っている.とくに,全身管理をはじめ血行再建術,創部処置や切断術を要する重症虚血肢の治療に際しては,ほぼ全ての医療従事者が各々の専門性を活かして横断的診療が行われている.
 このように,ASO の診療は予防をはじめ初期診療から治療および慢性期管理にかけて各科の専門医を筆頭に看護師,技師など多くの医療従事者が協力して診療にあたっていることから,本特集では,ASO の概要をはじめ診断手順から治療法選択に至るまで,各専門の先生方に,現状および今後の課題や展望を含めてわかりやすく解説していた
だいた.
 最後に,読者の先生方が本特集をきっかけに少しでもASO に興味を持っていただけることを切に願い,そして,わずかでも今後の診療にお役立ていただければ幸いである.
企画編集:岡島年也
国立循環器病研究センター 心臓血管内科部門・血管科
1.ASOの原因と予後 ‐Polyvascular diseaseといわれる所以‐/熊倉久夫
2.下肢症状の診察から治療方針のたて方/久松恵理子
3.整形外科的観点からの跛行/鳥畠康充
4.初期診断で行うABI,歩行負荷試験の有用性/知念大悟
5.無侵襲画像検査法である血管エコー検査の利点と欠点/吉牟田剛
6.CT,MRIの利点と欠点/田中良一 他
7.ASOにおける薬物療法の意義/安 隆則
8.血流のみならず,足を診る ‐フットケア‐/河野茂夫
9.運動療法の有用性と限界/桑原政成
10.カテーテル治療は、外科的治療を凌駕したか/福田哲也
11.外科的血行再建術の位置づけ/市来正隆
12.血管新生療法の現状と期待/細田洋司
13.LDLアフェレシスの適応の是非 ‐日本と世界の違い‐/斯波真理子
14.下肢・足趾切断術/寺師浩人 他
15.ASOに求められるEvidence based medicine(EBM)/上嶋健治 他