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CIRCULATION 5月号
月刊循環器CIRCULATION 5月号

12年4月5日発売
A4変型判152頁
価格:本体¥2500+税
ISBNコード:978-4-287-83009-3
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特集CKDと脳心血管疾患との密接な関連を読み解く

企画編集/猪阪善隆,楽木宏実
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目次 特集 特集 特集
 慢性腎臓病(chronic kidney disease;CKD)とは,米国のNational Kidney FoundationのKidney Disease Outcome Quality Initiatives(K/DOQI)によるガイドラインで提唱された概念である.最近,CKDが大きく取り上げられるようになったが,その理由のひとつに,CKDが心筋梗塞や脳卒中などの脳心血管疾患と関連が深いことが挙げられる.脳心血管疾患におけるCKDの病態のかかわりはきわめて多様であり,未解明の点も多い.従来は,心臓・脳・腎臓と臓器別に疾患をとらえてきたが,CKD患者の多くが耐糖能異常・メタボリックシンドローム・肥満・高血圧症など,生活習慣病と加齢を背景にしていることを考慮すると,今後は血管病として,心臓・脳・腎臓に共通する病態を基盤とした疾患として,総合的に患者管理を行う必要に迫られてきている.
 当初,CKDステージ分類は推算糸球体濾過量(estimated glomerular filtration rate;eGFR)によって,90,60,30,15 mL/分/1.73 m2を境とした5段階に分類されており,蛋白尿の程度はステージ分類には考慮されていなかった.しかしながら,多くの臨床研究のメタ解析により,アルブミン尿が増加するほど心血管病のリスクが増大すること,CKDステージ3の患者でも,eGFRが30〜44と45〜59 mL/分/1.73 m2でリスクが異なることが確認され,eGFRとアルブミン尿を軸にした新しいCKDステージ分類が発表された.とくにアルブミン尿については,10 mg/gCr程度の微量アルブミン尿以前の段階からリスクが上昇していることも報告されており,早期からの介入の必要性を示唆している.
 なぜCKD患者が心血管疾患をきたしやすいかについては,従来の古典的な危険因子に加えて,カルシウム・リン代謝異常や酸化ストレス,貧血など新しい危険因子が関与しており,これらは複雑に関係し合っている.
 本特集においては,CKDと脳心血管疾患との密接な関連を読み解くために,CKDにおける心疾患と脳卒中との関わりについて,まず疫学の面から紹介する.次に,CKDを血管病としてとらえた場合の血管障害について,内皮傷害・石灰化・老化の面から詳述する.さらに,心血管病の進展因子としての酸化ストレス・貧血・メタボリックシンドローム・アディポネクチンなど,CKDと脳心血管疾患の結びつきをひも解くためのメカニズムについて解説する.最後に,脳心腎保護を考えた治療として各種薬剤の適切な使用について,各々専門家より概説する.
 CKDと脳心血管疾患との密接な関連について,そのメカニズムと,それを踏まえたうえでの治療について,最新の情報をもとに理解・把握できるように企画した.明日からの日常臨床に応用していただければ,幸いである.
企画編集:猪阪善隆,楽木宏実
大阪大学大学院 医学系研究科 老年・腎臓内科学
I. CKDと脳心血管病
1.CKDは心血管病-なぜアルブミン尿か?-/ 伊藤貞嘉
2.CKDと心疾患/常喜信彦 他
3.CKDと脳卒中/鶴屋和彦
II. 脳心腎連関における危険因子の関与
4.血管石灰化の関与/松井 功 他
5.血管内皮傷害の関与-ADMAを中心に-/上田誠二 他
6.低酸素の関与-AGEを中心に-/宮田敏男 他
7.貧血の関与-CRA症候群-/猪阪善隆 他
8.酸化ストレスの関与/佐藤 稔
9.メタボリックシンドロームの関与-ミネラルコルチコイド受容体を中心に-/長瀬美樹 他
10.アディポネクチンの関与/大内乗有 他
III. 脳心腎保護から考えた薬物治療
11.脳心腎保護から考えた治療-RAS阻害薬-/今井圓裕
12.脳心腎保護から考えた治療-Ca拮抗薬-/木村健二郎 他
13.脳心腎保護から考えた治療-利尿薬-/木村玄次郎 他
14.脳心腎保護から考えた治療-抗アルドステロン薬-/西山 成 他
15.脳心腎保護から考えた治療-脂質代謝異常改善-/庄司哲雄 他