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CIRCULATION 11月号
月刊循環器CIRCULATION 2月号

13年1月25日発売
A4変型判128頁
価格:本体¥2500+税
ISBNコード:978-4-287-83018-5
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特集循環器医の腕の魅せどころ−進化するデバイスを使いこなす

企画編集/奥村 謙
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 日本の2011年のペースメーカ植込み数は年間約6万件で,新規植込み数は約3万8000件であった.ハイパワーデバイスと呼ばれる植込み型除細動器(ICD)と心臓再同期療法(CRT-PまたはCRT-D)植込み数は約9000件(ICD約5000件)で,新規植込み数は約6000件であった.とくに後者は年々増加しているものの欧米と比べると極端に少なく,ICD/CRT-D植込み数は人口あたり米国の約10分の1,欧州の約5分の1にすぎない.これはなにを意味するのであろうか.日本にはICD/CRT-D治療の対象患者が少ないのであろうか.患者数は変わりなくとも植込み適応が異なるか適用法が異なるのであろうか.デバイス治療を担当する医師(循環器専門医)が少ないか関心または経験のある医師が少ないのであろうか.国内でも地域差(偏在)が認められ,最新のデバイス治療の恩恵を受けていない患者も相当数認められるかもしれない.治療件数が少なければ年々進化する機能を活用するだけの経験を積むことが困難となるかもしれない.
 以前のペースメーカは心室ペーシング(シングルチャンバーデバイス)が主流であったが,近年はデュアルチャンバーデバイスを用いた生理的ペーシングが標準となり,また自己心拍を優先するプログラムが搭載されるなど,機能面での発展も著しい.循環器医は,徐脈をきたす病態に応じ,デバイスを選択するとともに機能を設定する必要がある.2012年10月に発売されたMRI対応ペースメーカの適用法も把握しておくべきだろう.最も大きな腕の魅せどころは心機能低下例に対する心臓突然死予防であり,このためにβ遮断薬を中心とする標準的薬物治療と適応例に対するICD治療が行われる.心室内伝導障害(左室非同期収縮)を伴う重症心不全例にはCRT-D治療が適応となる.心室頻拍・心室細動既往例で,心機能低下を認める場合はICD(CRT-D)の2次予防効果(突然死予防効果)は確立されている.一方,持続性心室頻拍を認めても心機能低下が高度でなければICDの有用性は低く,すべての症例が治療の適応となるわけではない.心室頻拍・心室細動の既往のない心機能低下例に対する突然死1次予防法としてのICD治療は,欧米では多く実施されているが,日本ではICDの1次予防効果は確立されておらず,したがって治療件数も多くはない.現時点では各循環器医の判断にゆだねられるが,循環器医には心機能低下,心不全,心臓突然死に関する洞察力が求められる.
 2011年に改訂された『不整脈の非薬物治療ガイドライン(JCS2011)』では,ペースメーカ,ICD,CRTの適応が日本の状況(患者背景と臨床経過など)に応じてアップデートされている.心室頻拍・心室細動既往例に関しては,議論は少ないかもしれないが,心機能が保たれている例に対するICD治療は循環器医の判断によるところが大きく,腕の魅せどころといえよう.1 次予防については,単に心機能低下例のみでなく,原因疾患に対する治療,非持続性心室頻拍や心不全の有無,電気生理検査による不整脈の基質の証明など,循環器医のなかでも不整脈専門医への依存が大きくなるであろう.CRT-Dは1次予防として用いられることが多く,循環器医はCRTの有用性のみでなく,ICDの適応とその適用法にも精通しておく必要がある.一方,CRTが無効の例(non-responder)が存在するのも事実である.今後の大きな課題である.
 以上のようにデバイス治療の発展は目覚ましく,多くの心疾患患者の症状と生命予後改善に寄与するが(光),同時にいくつかのリスクも伴う(陰).たとえばICD,CRT-Dには不適切作動の問題がある.デバイスのサイズや患者の背景(年齢など)により,デバイス感染のリスクも増加している.循環器医にはこれらへの対応も腕の魅せどころとなるであろう.
 本特集では,ガイドラインの最新版を背景とし,ペースメーカ,ICD,CRT-D,CRT-Pをどの患者(病態)に適用し,搭載されている各機能をどのように活用するか,つまり循環器医の腕の魅せどころについて,デバイス治療の経験の多い不整脈専門の先生方に解説を依頼した.現時点での心臓デバイス治療のあり方,進め方が理解されるものと期待している.
企画編集:奥村 謙
弘前大学大学院 医学研究科 循環呼吸腎臓内科学 教授
1.ガイドラインよりみたデバイス治療の適応と位置づけ/佐々木真吾 他
2.洞不全症候群に対するペースメーカ治療/石川利之
3.房室ブロックに対するペースメーカ治療/杉 薫 他
4.心機能低下例に対するICD治療/青沼和隆 他
5.ICD ストームに対する対処法/清水昭彦
6.CRT-PとCRT-D の使い分けをどうするか/小林洋一 他
7.ペースメーカからCRT へのアップグレードは有効か/阿部芳久
8.軽症心不全,軽度心室内伝導障害を有する例へのCRTは有効か/吉田幸彦
9.心房細動合併例に対するCRTは有効か/小林義典 他
10.突然死1次予防法としてのICD, CRT-D治療/松本万夫
11.デバイス感染/志賀 剛 他
12.デバイス患者の社会復帰と医療従事者の果たす役割/安部治彦 他
13.MRI対応ペースメーカ/中島 博
14.遠隔モニタリングの診断機能を用いた患者管理の実際/鈴木 均