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月刊糖尿病2017年3月号 |
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2017年2月20日発売 A4変型判/112頁
価格:本体2,700円+税 ISBNコード:978-4-287-82093-3
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特集●糖尿病患者の健康寿命延伸を目指して -老化関連因子サーチュイン・AGEs・p53と寿命-
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企画編集/山縣和也
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我が国における平均寿命は着実に延伸してきたが,糖尿病患者の平均寿命は糖尿病でない人に比べ短い.さらに高齢糖尿病患者ではサルコペニアや認知症による日常生活動作(ADL)の障害が進行しやすいという報告も多く認められる.今後は,糖尿病患者の平均寿命を延ばすとともに健康寿命の延伸を図ることが重要な課題であると考えられる.
近年,加齢・老化に関する研究が進展しており,代謝と老化の間に強い関連性が存在していることが明らかになってきた.たとえば,加齢の基本的な特徴のひとつとしてミトコンドリア機能不全が挙げられる.加齢により補酵素であるNAD+含量が減少するため,ミトコンドリアの機能に重要な働きを担うSIRT1などのサーチュインの活性が低下することが,その理由の一端であると考えられている.SIRT1の過剰発現マウスは,耐糖能の改善を含む抗加齢の表現型を示す.また,脳特異的にSIRT1を過剰発現したマウスでは寿命が延長することが報告されている.NAD+前駆体であるニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)のマウスへの投与によっても,高脂肪食や加齢により誘発される耐糖能異常が改善する.このようにサーチュインは代謝と老化を結ぶ重要な分子である.一方,老化により引き起こされたDNAダメージは,がん抑制遺伝子であるp53の活性化を介することによって糖代謝異常を惹起する.さらに過食によるAGEs(Advanced Glycation End Products:終末糖化産物)の蓄積もタンパク質の恒常性に影響を及ぼし,老化や代謝異常を促進する.
糖尿病患者の健康寿命を延ばすためには,血糖,血圧,脂質のトータルなコントロールならびに合併症の早期発見,早期治療が重要であることは言うまでもない.しかし,種々の老化関連因子が糖尿病をはじめとする代謝異常症の病態に深く関係していることから,老化関連因子が今後の糖尿病治療の新たな標的として重要になってくるものと想定される.食事療法は糖尿病治療の基本であるが,適度のカロリー制限(CR)は加齢を抑制する最も確実な手段でもある.
本特集では,老化関連分子のサーチュイン(SIRT1〜7),AGEs,p53に着目し,糖尿病,メタボリックシンドローム,合併症やがんとの関連,新たな予防法や治療法の開発に向けた現状・将来展望などについて,専門家の先生方にご紹介いただく.本特集が,基礎研究のみならず,抗加齢の観点から糖尿病患者の食事・運動・薬物療法について考えるうえで役立つことを期待している.
山縣和也
(熊本大学大学院 生命科学研究部 病態生化学分野 教授)
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哺乳類の老化・寿命制御に関するNAD World 2.0の概念 -SIRT1/NAMPTによって制御される組織・臓器間コミュニケーションの重要性-/今井眞一郎
中枢神経系のSIRT1による体重調節機序/佐々木 努
SIRT1による脂肪組織の炎症およびインスリン抵抗性の制御/薄井 勲・戸邉一之
SIRT1と糖尿病性腎症/脇野 修・長谷川一宏・伊藤 裕
SIRT6と代謝・老化/來生(道下)江利子
SIRT7による代謝・老化関連疾患制御/吉澤達也,山縣和也
AGEs-RAGE系と糖尿病/原島 愛・棟居聖一・山本靖彦
可溶型AGEs受容体と糖尿病合併症/片上直人
AGEs作用阻害による糖尿病血管症の治療/山岸昌一
p53によるがん代謝/橋本直子・田中知明
p53依存性老化シグナルと糖尿病,心血管疾患/勝海悟郎・清水逸平・吉田陽子・南野 徹
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