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月刊糖尿病2018年5月号 |
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2018年4月20日発売 A4変型判/80頁
価格:本体2,700円+税
ISBNコード:978-4-287-82104-6
全ページカラー印刷
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企画編集/平野 勉
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糖尿病は進行性の疾患であり,膵島機能は経時的に低下する.膵島機能をできだけ長く温存させるためには生活習慣を改善する努力に加え,多くの場合薬物治療が欠かせない.近年糖尿病治療薬は多種多様化し,使用の順番も一様ではない.本特集では糖尿病における早期治療の重要性について,各種糖尿病薬の早期開始のベネフィットという観点でまとめていただくことにした.ここではベネフィットを糖尿病病態の改善と合併症予防とに大別してみることにした.
〔糖尿病病態の改善〕
膵島機能は糖尿病発症時にはすでに半減しているとの報告がある.それを予防するためには糖尿病発症前から生活習慣介入に加え糖尿病薬が有効な場合がある.メタボリックシンドロームにチアゾリジン薬やメトホルミンを投与し新規糖尿病の発症を抑制する試みがなされている.持効型インスリンを空腹時高血糖(IFG),耐糖能異常(IGT)から導入して新規糖尿病の発症を抑制する試みもなされた.しかし実臨床では糖尿病発症前に使用することはできないため,糖尿病発症早期からの使用は進行を抑制できるかの試みとなる.糖尿病が発症した後は高血糖が膵島の機能を損なう悪循環を生じる危険性がある.早期からの薬物を用いた血糖管理はこの糖毒性を回避させ,膵島機能を長期に保全する有効な手段である.2型糖尿病は発症前からインスリン抵抗性を有している場合が多く,これが膵島を疲弊させる原因となる.ピオグリタゾン,メトホルミンは直接的にインスリン感受性を改善するが,GLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬は体重減少などを介して間接的にインスリン抵抗性を低減する.インスリン分泌系薬は糖毒性を回避するには有効であるが,肥満を助長しインスリン需要の増大につながりやすい.早期からの使用については慎重な判断が必要とされる.インクレチン関連薬はタイムリーなインスリン分泌促進,グルカゴン分泌抑制により膵島に重い負担をかけず,膵島再生効果も期待されている.
〔合併症予防〕
細小血管合併症の発症は血糖依存性であるが,大血管合併症は血糖以外の危険因子である高血圧,脂質異常がその発症に強く関与する.糖尿病薬による血糖低下作用は細小血管合併症の抑制にはきわめて有効であるが,大血管合併症への抑制は限局的であった.しかしながらUKPDS研究において,早期の糖尿病薬を用いた治療介入はそれを行わなかった対照と比較してその後の大血管合併症の発症を抑制した.遺産効果と言い表されている.
糖尿病発症早期からの血管壁への高血糖の暴露はグルコースメモリーとしてとどまることが考えられており,早期の糖尿病薬介入が重要であることの根拠になる.血糖とは独立してインスリン抵抗性/高インスリン血症は動脈硬化の危険因子である.これを改善するメトホルミン,ピオグリタゾンは心血管疾患(CVD)を抑制することが知られている.最近ではSGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬がCVDを著明に抑制することが発表された.これらの研究成果は血糖低下作用では説明できないものばかりであり糖尿病薬に多面的効果があることを示唆している.早期の薬剤開始でこの多面的効果がどのくらいCVD発症に影響を及ぼすか興味のもたれるところである.
本特集は糖尿病薬早期開始のベネフィットを薬剤別に集めたユニークな試みである.基礎研究の成績や臨床のエビデンスから早期治療の重要性を理解できる一助となれば幸いである.
平野 勉
(昭和大学 医学部 内科学講座 糖尿病・代謝・内分泌内科 教授)
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1.機を逸さないインスリン注射療法開始のベネフィット/河盛隆造
2.GLP-1受容体作動薬早期開始のベネフィット/矢部大介
3.メトホルミン早期開始のベネフィット/黒住 旭・岡田洋右
4.ピオグリタゾン早期開始のベネフィット/添田光太郎・植木浩二郎
5.DPP-4阻害薬早期開始のベネフィット/山岸昌一
6.α-グルコシダーゼ阻害薬早期開始のベネフィット/遅野井 健
7.SGLT2阻害薬早期開始のベネフィット/入江慎太郎・加来浩平
8.SU薬,グリニド薬早期開始のベネフィットとデメリット/五十嵐弘之・内野 泰・弘世貴久
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